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47、ケイス

 アレックスのお見舞いに行ってから、一週間が過ぎた。

 あおいは朝ご飯の片付けを終えてのんびりしていると、ドアの向こう側から男性の話し声がする。一人の声はアレックスだと分かったが、もう一人の声は聞いたことが無かった。


「あの、ウチにご用ですか?」

 あおいは思い切ってドアを開けた。するとドアの外にはアレックスと、もう一人の男性が立ち話をしていた。見たことの無い男性は、髪を短く刈っていて、筋骨隆々でアレックスよりも頭半分くらい大きかった。あおいは、ちょっとひるんだ。


「おはようございます、あおい」

「おはようございます、アレックス様。そちらの方は?」

 あおいは遠慮がちに、アレックスに尋ねた。


「ああ、今日は友人が是非あおいに会いたいと言うので連れてきました」

 あおいがおずおずと大きな男はニカッと笑って手を差し出した。

「はじめまして、俺はケイス・テイラーと言います」

「はじめまして。アレックス様にはよくして頂いています」


「アレックスの旧友で騎士をやってます」

「私はクレープ屋のあおいと申します。ケイス様、よろしくお願いします」

 あおいはケイスと握手した。ケイスはあおいの手が痛くならないように、力を加減をしている。


「ケイスで良いですよ」

「それでは、私のこともあおいとおよび下さい」

 アレックスは二人のやりとりを見守っている。


「あおいさん、貴方は錬金術師なんですよね?」

 ケイスが人なつこい笑顔であおいに訊ねた。

「ええ、食べ物しか作れませんが……」

 アレックスはそれを聞いて頷いている。


「それじゃ、ポーションとエリクサーを十個ずつください」

 ケイスは大きな声で言った。

「わかりました。でも今から作らないと、それだけの量は無いんです」

 あおいは申し訳ないと言う様子で頭を下げた。


「では、明日また買いに来ても良いですか?」

「はい。わかりました。よろしくお願いします」

「じゃあ、料金は前払いで」

 ケイスは財布からお金を出すと、あおいの手の上に置いた。


「アレックス様は何か必要ですか?」

「それでは、シュークリームをケイスの分と合わせて二つ下さい」

「はい!」

 あおいはケイスとアレックスにシュークリームを一つずつ渡した。


「それじゃ、また明日来ます」

「はい」

 ケイスとアレックスは楽しそうに何かしゃべりながら町の中心の方に歩いて行った。

「アレックス様の旧友か。なんだか豪快な人だったな」


 あおいは家の中に戻って、ポーションゼリーとエリクサー金平糖を作り始めた。

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