43、メアリーが来た
アレックスを送り出して、しばらくするとまた誰かがドアをノックした。
「はい? アレックス様、忘れ物ですか……?」
あおいがドアを開けると、そこには得意げなメアリーと暗い顔をしたクレイグがいた。
「やっぱり、ここに居たのね。アレックス様」
「クレイグ様? それにメアリー様……よかったらどうぞお入り下さい」
あおいは二人を家の中に招き入れた。
「まあ、ぼろ屋敷ね」
「それはどうも」
メアリーはクンクンと匂いを嗅いで、ふうん、と呟いた。
「それで、アレックス様は?」
「さっき帰られましたよ」
クレイグはふうとため息をついてメアリーに言った。
「だから申し上げたでしょう? もう少し待てば帰ってくると」
「でも、少しでも一緒に居たいの!!」
メアリーは頬を膨らませてクレイグに抗議している。
「で、どのようなご用件ですか?」
「アレックス様に変な物を食べさせないで下さい。それと婚約者は私ですからね!」
あおいは首をかしげた。
「アレックス様はおままごとっておっしゃってましたよ?」
「それは貴方のことを思いやっての発言でしょう? 私たちは愛し合ってるわ!」
メアリーは自信満々に言った。
「あ、愛し合ってる!?」
「あおい様、メアリー様の言うことを真に受けてはいけませんよ」
クレイグが頭を抱えながら言った。
「まったく。 メアリー様は言い出したら聞かないんですから」
メアリーはふん、と横を向いた。
「アレックス様に手を出さないでくださいね、泥棒猫!」
「もう!! 私にはあおいって言う名前があるんですから、変な名前で呼ばないでください!! それに、私は泥棒猫じゃありません!!」
あおいはメアリーに抗議した。
しかしメアリーはあおいの言うことを最後まで聞かず言いたいことを言い終わると、くるりと背を向けた。
「それじゃ、アレックス様も居ないみたいだし、帰りましょう。クレイグ」
「はい、気が済んだのなら良かったです。お騒がせしました、あおい様」
クレイグとメアリーは、あおいの家を後にして城に帰っていった。
「まったく、人騒がせな人ね。 メアリー様は」
あおいは腰に手を当てて、二人の後ろ姿を見送った。




