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4、行列が出来ていた

気分転換に、あおいはシフォンケーキを焼いていた。

「うん、上出来!」

焼きたてのシフォンケーキを冷ましていると、ドアの外から人の声が聞こえてきた。

「あれ? なんだろう、人が集まってるみたいだけど」


あおいは外に出てみた。

すると、二十人くらいの人があおいの家の前に並んでいた。

「なんでしょうか? なにかご用ですか?」

「クレープを売ってるんでしょ? 市場じゃすぐ売り切れて買えないんですもの」

あおいは慌てた。

「あの、ここはお店じゃないんですけど!?」

「でも、この家でクレープを焼いてるって、冒険者の館で話してる奴がいたぞ」


それを聞いて、あおいは苛立った。

「ロイドね、そんなこと言って。私の平穏な生活を脅かすなんて許せない!」

と言っても、もう出来てしまった行列はしかたない。

あおいはクレープを売ることにした。


「それでは、メニューです。お選び下さい。選び終わったら、次の方に回してください」

「やった! クレープが食べられる!!」

並んでいたお客さんが、クレープを楽しそうに選んでいる姿を見て、あおいに笑みが戻った。

「それじゃ、桑の実ジャムとチョコレート2つずつ」

「私は生クリーム3つ」

「はい、どれもひとつ50シルバーです」

あおいはクレープを焼きながら、接客をこなす。

てんてこ舞いだった。

そのとき、聞き慣れた声がした。


「手伝おうか? あおい?」

列の中央くらいから、金髪碧眼の美青年がひょいと出てきた。

「アレックス王子!?」

「王子は辞めてくれ、お忍びで出歩いてるんだ」

アレックスは声を潜めてあおいに言った。


「じゃあ、アレックス様。助けて下さるんですか?」

「ああ、僕で良ければ」

「お願いします!!」

接客はアレックスに任せることにして、あおいはクレープ焼きに専念した。


しばらく経つと、列は途切れ、お客さんは帰っていった。

「ああ、焦った。たすかりました、アレックス様」

「アレックスでいいよ、あおい」

「どうしてここにいらっしゃったんですか?」

あおいは顔を赤くしながら聞いた。

美青年耐性が低いのは、隠しようもなかった。


「また、あのクレープが食べたくてね」

「それなら、一つ焼きましょうか?」

「ありがとう。それなら桑の実のジャムのをお願いするよ」

あおいが台所に移動すると、アレックスがついてきた。


「あと、お礼と言っては何ですが、シフォンケーキを焼いたのでお味見してください」

「ありがとう、シフォンケーキって何ですか?」

「ふわふわのケーキです。ホイップクリームとかジャムとかつけて食べると美味しいですよ」

そう言って、あおいはシフォンケーキ切ってお皿に置いてデコレーションした。

そして、アレックスがそれを食べている間に、クレープを焼いた。


「美味しいね、シフォンケーキ」

「ありがとう。お店に出すのはもう少し考えてからだけどね」

「なんで?」

「一人じゃ手が回らないから」


あおいは慣れた手つきで、焼き上がったクレープに桑の実のジャムとホイップクリームを入れてくるくると巻く。

「はい、アレックス、どうぞ」

「ありがとう」

アレックスはクレープを頬張った。


「町でも噂になっているよ。町外れのクレープ屋が美味しすぎるって」

あおいはそれを聞いてため息をついた。

「困ったわ。私、しずかに生活したいだけなのに」

「それは叶わない夢だろうな」

アレックスは、指に着いたクリームを舐めながら言った。


「君は錬金術師として召喚されているし、ドラゴンを倒した実績もある」

「それは、言われるままに動いただけよ」

「そうか。それなら、錬金術について知っておいた方が良いな。図書館まで案内しよう」

アレックスはクレープを食べ終えて、立ち上がった。


「王子様の言うことには逆らえません」

あおいはアレックスの後についていった。

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