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29、お茶会

「あおい様、いらっしゃいますか?」

「はい! どちら様ですか?」

 あおいはドアを開けた。 

 兵士はカバンから手紙を取り出すと、あおいに渡した。


「ありがとうございます。アレックス様からだわ!」

「確かにお渡し致しました」

 兵はあおいに手紙を渡し終わると王宮の方へ帰って行った。


「うーん、なんだろう?」

 あおいは手紙を開けた。

 手紙には<本日の昼過ぎ、王宮までお茶を飲みに来ませんか? アレックスより>と書かれていた。


「王宮か。久しぶりだな」

 あおいは持っている服の中から、なるべく上等なワンピースを選んだ。

「昼過ぎだと、そろそろ出た方が良いかな?」

 あおいは城に向かって歩き出した。


 城に着くと、メイド長が立っていた。

「あおい様ですね。アレックス王子がお待ちです」

「はい」

 あおいはメイド長の後についていった。


「こちらでお待ちください」

「ありがとうございます」

 あおいは応接室に案内された。


「相変わらず、王宮だなぁ。飾ってある絵も、凄く綺麗」

 あおいがボンヤリとして周りを見つめていると、ドアが開いた。

「こんにちは、あおい」

「こんにちは、アレックス様」


「今日は、ちょっと面白いものを用意しましたよ」

「なんですか?」

 アレックスは執事に目配せをすると、執事が部屋を出て何やら銀の皿を持って戻ってきた。

「いつもあおいにご馳走になっているので、今日は私が作ってみました」

「え?」

 銀の皿の上には、生ハムとルッコラの挟まったパンが二つ置いてあった。

「意外と料理とは楽しいものですね」

 これを料理と言い切って良いか、あおいは疑問を持ったがアレックスが上機嫌だったので何も言わなかった。


「美味しそうですね」

「是非、食べてください」

「それじゃあ、頂きます!」

 あおいは一口、パンを食べた。


「か、辛い!!」

「ふふ。この前のお返しです。一番最初の部分だけ、辛子を多めに入れておきました」

 アレックスは意外と根に持つタイプなのかも知れないとあおいは思った。


「でもアレックス様、私がこちら側のパンを取るとどうして分かったんですか?」

「二つとも、辛子を多めに入れたので、どちらをとっても問題ありません」

 アレックスは得意げに言った。


「アレックス様? そうしたらアレックス様も辛いパンを食べるつもりだったんですか?」

「あ!?」

 アレックスは残っていたパンを広げ、辛子を少し減らしてから食べた。

「アレックス様、ずるいです!」


 その時ドアが開いて、声がした。

「この前の媚薬ブラマンジェに比べれば可愛いものでしょう?」

「く、クレイグ様……」

 あおいはパンが喉につまりそうになって慌てて紅茶を飲んだ。


「アレックス様にも仕事がありますから、町に出る回数を控えるようご忠告致しましたところ、あおい様に城に来て貰えば良いとのこと。仲の良いことで」

 クレイグの笑みはなんだか凄みがある。あおいは、気まずい思いで微笑んだ。


「さあ、アレックス様。お茶が済んだら午後の仕事に取りかかってください」

「分かりました、クレイグ」


 アレックスはやれやれと言った表情で立ち上がった。

「それではあおい。しばらくクレイグの監視下に置かれますので、町に行けることは少なくなると思います。なるべく大人しくしていて下さいね」


 そして、アレックスはクレイグに続いて部屋を後にした。

 あおいはちょっと寂しい気持ちになっていた。


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