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2、王子様がやってきた

あおいは今日もクレープを焼いていた。

すると、ドアをノックする音が聞こえた。


「はーい!」

あおいがドアを開けると、身なりの整った金髪碧眼の美青年が立っていた。

「こちらは、町で噂になっているクレープ屋で間違い有りませんか?」

「はい、そうですが」


青年は笑顔で自己紹介をしてきた。

「僕はアレックスと言います。実はクレープを食べたいのですが、なかなか市場へ行けなくて、ここまで来てしまいました」

「あら、わざわざ来てくれたの? ありがとう! わたしはあおいと言います」

あおいはアレックスを家の中に招いた。


「どうぞ、おかけになってください。ぼろ屋ですけど」

そう言って、ダイニングキッチンの椅子にアレックスを座らせた。

「クレープは何味が良いですか? 生クリーム? チョコレート? それとも両方?」

アレックスは少し恥ずかしそうに言った。

「両方でお願いします」

「はい、ちょっと待ってね」


あおいは冷蔵庫から、小麦粉や牛乳、チョコレートを出してクレープを焼き始めた。

「良い香りがしますね」

アレックスはいつの間にか、あおいのすぐ後ろに来ていた。

「もう出来ますよー!」

あおいが振り返ると、アレックスの品の良い顔がすぐ目の前にあったので、心臓が止まるかと思った。


「はい、二つで100シルバーです!」

「1ゴールドでも、構わないかな?」

アレックスは胸元から、金貨を取り出した。

「え、そんな多すぎます!!」

あおいはちょっと考えて、言った。

「それじゃ、お代は今度で良いですよ。こんな町外れまで来て下さったお礼です」


「申し訳ない」

アレックスは金貨を胸元にしまった。

その瞬間、アレックスのお腹がぐうっとなったのであおいは吹き出した。

「できたてのクレープを食べて下さい」

「いただきます」


皮が熱々で、中のクリームはとろりと冷たい。

アレックスは、夢中になってクレープを頬張った。

「美味しいですね、これは人気になるわけだ」

「ありがとうございます」


アレックスはあっという間に、二つのクレープを食べ終わってしまった。

「ごちそうさまでした」

「お粗末様でした」

あおいはアレックスの顔を見て笑った。

頬にクリームが付いている。


「あおいさん、城に務める気はありませんか?」

「え!? お城ですか!?」

「僕はこの国、キール国の王子なんです」

「王子様!?」

あおいはひっくり返りそうになるのをこらえた。

目の前で無邪気に笑っている美青年が王子様なんて思ってもみなかった。


あおいは答えた。

「お断り致します」


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