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18/51

18、開店

 翌日、あおいは作っておいたポーションゼリーやエリクサー金平糖、毒消しあんパン、攻撃力の上がるカレー焼きまんじゅうなどを持って、街の中の店に向かった。

 あおいの店は小さかったので、商品ケースにはあまり商品が並べられなかった。


「しょうがない。売れたら補充するようにしよう」

 クレープを焼く機材を動かして、冷蔵庫に作りたてのホイップクリームと持ってきた錬成物をしまった。

「よし、店を開こう!」

 あおいは店のシャッターを開けた。


「さあ、クレープはいかがですか? パワーアップする食べ物も売ってますよ!」

 しばらくすると、最初のお客さんが来た。

 アレックスだった。

「おはよう、あおい。開店おめでとう」

 アレックスは小さな花かごをあおいにプレゼントした。


「ありがとうございます、アレックス様」

「さっそくだが、薬草クレープを一つお願いしよう」

「はい、ありがとうございます!」

 あおいは店の中に入り、クレープを焼き始めた。


「おや、懐かしい物を売っているね」

「はい、作れる物を持ってきてみました」

「これはポーションゼリーですね」

 あおいとアレックスが話をしていると、新しいお客さんがやって来た。


「いらっしゃいませ! あおいのクレープ屋へようこそ!」

 あおいはアレックスとの会話を切り上げて、お客さんに挨拶をした。

「はじめまして。宮廷魔術師のクレイグ・デファーと申します」

 クレイグは銀髪をボブに切っていて、青い目をしていた。

「はじめまして。川崎あおいです」


 あおいは薬草クレープを持ってきて、アレックスに渡した。

「王子様がわざわざお越しになるお店を是非、拝見したかったのです」

「クレイグ、私の後をつけてきたのですか?」

「人聞きの悪いことをおっしゃらないでください。たまたまお見かけしたので、声を掛けようとしたけれどタイミングを逸しただけですよ」


 あおいは行列が出来てきたので、クレイグとアレックスに声を掛けた。

「あの、ご注文をおねがいします。他のお客様もいらっしゃるので」

「これは失礼致しました」

 クレイグはそう言うと、ショーケースの中を見て言った。


「エリクサー金平糖と、ホイップクリームのクレープをお願いします」

「はい。150シルバーです」

 クレイグは代金を支払った。


「あおい、頑張って」

「はい、アレックス様」

 アレックスはクレイグの様子を見ながら、店を後にした。


「おまたせしました。クレープと、エリクサー金平糖です」

 あおいはクレイグに商品を渡した。その手の冷たさに、ぞくり、とした。

「ありがとう、あおいさん。商品が気に入ったらまた来ます」

「おまちしています」

 あおいは営業用スマイルで答えると、次のお客さんの注文を聞き始めた。


 夕方前に、クレープの材料が切れた。もってきたポーションゼリーや毒消しあんパンなども、思っていたより売れて、あおいは喜んでいた。

 そのとき、声を掛けられた。

「お店まだやってる?」

「ごめんなさい、もうおしまいなんです……ってロイドさん!?」


 ロイドは申し訳なさそうに頭をかいている。

「悪いな、開店祝いに来ようと思ってたんだが、討伐依頼が入っちゃって」

「あの、残りもので申し訳ないですけど、もって帰ります?」


 あおいはそう言って、エリクサー金平糖を一袋取り出した。

「じゃあ、遠慮無くもらおうかな。今回の敵は強かったから疲れてるんだ」

 ロイドはあおいから金平糖をうけとると、笑顔でありがとうと言った。

「今日は、開店祝いだから飲みに行ったりしないのか?」


「しませんよ! アレックス様にずいぶん叱られたんですから」

「もう大人なんだから、放っておいても大丈夫……じゃないからな、あおいは」

 ロイドはそう言って、おかしそうに笑った。


「なんだか、アレックス様はあおいのお父さんみたいになってきてるな」

「そんなことありませんよ」

 あおいは赤い顔をして、頭を振った。

「じゃ、これから頑張って」

「はい、ありがとうございます」

 

 あおいは売り上げと、少し残った錬成物をもって家に帰った。

「あーあ、疲れた」

 あおいはシャワーを浴びてから、売り上げと残った商品をチェックした。

「うーん、クレープは売れるけど、錬成した商品はなかなか売れなかったな」


 あおいは夕食代わりに、薬草クレープと毒消しあんパンを食べた。

「クレイグさんって、クールな感じでちょっと今まであった人とは違うな」

 あおいはお腹がいっぱいになったので、寝ることにした。


「明日もお客さん、来ますように」

 あおいは疲れた体をベッドに沈み込ませた。 

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