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大切な存在をありがとう

 「どうも、お世話になりました」

 私は主治医の先生にそう言い、頭を深く下げた。

 「それじゃああかね。とりあえず家に帰りましょうか」

 「はい」

 あれから一か月がたっている今日は、もう四月になろうかというころ。

 一応病室で勉強し、高校の編入試験にも合格した私は晴れて高校生になるのだ。

 ……だが、気になっていることがある。それはなぜこの子の体に転生したのか。

 気にしていても仕方ないし、多分解決することはないのだろうけど、とりあえずわかっているのは、私は白藤あかねとして今を歩み進めることだ。

 そこに一台の高級車が止まった。

 「あかね、この人はうちの執事長の花岡さんよ」

 「あ、よろしくお願いします」

 「お嬢様この度は退院おめでとうございます。これからしばらくは移動もご不便なことがありますでしょうが、私めを筆頭に白藤家の執事たちでお世話いたします。とりあえずご自宅へ向かわれましょう」

 「ええ、そうね花岡さんよろしくお願いいたします」

 私は、というか私の体はずっと横になっていた状態なので、四肢が弱っている。早くても、夏ごろにならないと車いす生活からは解放されないとのことで、車に乗る時も車いす専用に作られた後部のスペースに乗らないといけない。

 車いすが無事に固定されると、あかね、つまり私の両親も車に乗り込み出発した。

 車の中では、これからのことや、家のことなどを一通り聞かせてもらい、小一時間を掛け、やっと自宅についた。

 「さて花岡さん。私たちは心苦しいですが、会社に戻らないといけませんので、後を頼みますね」

 「あかね、すまないが……」

 「大丈夫です。お二人とも、頑張ってきてくださいね」

 「ではお嬢様。自室に参りましょう」

 私は家の中に入って驚いた。ちょっと古めかしい感じのする内装に混じった真新しい手すりたち。

 「花岡さんこれって……」

 「この手すりたちのことですかな?お嬢様が目を覚ました後、お抱えの工事業者や我々執事どもで作ったものです」

 「わざわざありがとうございます」

 「お嬢様のためなら、なんてことありませんよ」

 私はふと廊下に飾ってある写真のうちの一つに目が留まる

 「ねぇ、花岡さん。この写真に写ってる子は?」

 「それは赤ん坊の時のお嬢様ですね」

 「もう一人映ってるわよね?この子は何なの?」

 「っ……」

 花岡さんは息をのみ、その表情は話してもいいかと思慮しているようだった。

 私がこの女の子が気になった理由、それは生前の私とそっくりだったからだ。いやそっくりではない。私そのものだ。

 「その子は香澄といいます。あかねお嬢様の双子の妹でした」

 「でした……?」

 「その子は昔誘拐にあった後、行方不明でありました。そしてつい先日、お嬢様の目を覚ました日の前日深夜に、亡くなったことが確認されました」

 「誘拐……?そのあとは見つかったの?」

 「はい、誘拐に気付いた我々はすぐにその行方を探し求め、見つけ出しました。ですが奪還することはかなわず……」

 「それは何で?その誘拐を行ったのは、あなたの叔母にあたる女性でした。そして出産届を偽造され親権はその女性のものとなってしまい、どのような手法を使っても……」

 「そう、ありがとう。今日はもう寝たいから、私の自室へ運んでくれる?」

 「かしこまりました」

 私は自室のベッドに横にさせてもらい、その眼を深く閉じる。

 ごめんね……

 どこからか声が聞こえてくる。目を開けるとそこには、私とうり二つの少女がいた。


 こんばんは。目の前の子はそういって私に近づく。

 「もしかして、あなたがあかね?」

 「そうだよ。ごめんね、香澄。助けられなくて」

 「ううん。大丈夫、多分お姉ちゃん、はあの日死んじゃうはずだった。だけど死んだ私を見つけてこの体に入れてくれた。そうでしょ?」

 「うん……」

 「ありがとうお姉ちゃん。これからは私があかねお姉ちゃんとして生きていくことになるけど、そばで見守っててね?」

 「ありがとう。ありがとう香澄ぃ……」

 私は、愛されていたんだな。それに気付けなかっただけで。けど、もうこの幸せを、お姉ちゃんがくれた子の命を。


 ……ちゃんと、紡いでいこう――

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