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さぁ、最後の一歩を踏み出そう

幸せって何だろう。

この世に生まれてきた意味って?

そうやって私は自問自答しながら生きてきた。

この世に私がいる意味などないんじゃないか。

そんなことはないよと声をかけてくれた人たちは数えきれないほどいる。けれど、その誰一人として私の手を握ってくれる人などいなかった。

あぁ、もう無理だ。


そう思い、私は最後の一歩を踏み出した。


「ん、ここは?」

「あかね!起きたのね!よかったあなた5年も眠ったままだったのよ……」

どういうことだろう。私は死んだはずじゃ、それにあかねって。しかも目の前にいる人は誰?

周りを見渡してみるとここは病室のようだ。腕には点滴の管がつながっている。

「あの、すみませんあなたは誰ですか?」

そう聞いたところで病室の扉が開く。

「京子。今日はもう帰ろ、う……。あかね!やっと目を覚ましたか!待ってろ医者を呼んでくる!!」

そう言って部屋を飛び出して行った男性……いったいどういうこと?


「これは記憶障害ですな。事故が起こった時までの一切の記憶が欠如していると思われます」

医者や、私が目を開けたときにいた女性によると私は12歳の卒業式から帰っている途中に事故に遭って、そこからずっと植物状態だったようだ。

「あかね。あっ、あなたの名前は白藤あかね、私は京子あなたのお母さん、そしてこっちは徹。あなたのお父さんよ。今は混乱してるかもしれないし、私たちのことはわからないでしょうけど、これから楽しい思い出を作っていけばいいわ」

「あ、ありがとうございます……」

「ふむ。とりあえずあかねさん。そしてご両親。今日はもうこんな時間なので、終わりにしましょう。明日精密検査をしてみて、その結果によって今後の方針などを決めましょう」

「わかりました。あかね、父さんたちはもう帰るが、明日また来る。先生、娘をよろしくお願いいたします」

「かしこまりました。ではあかねさん。病室に戻りましょう。君、あかねさんを病室までお連れして。いや、もう診察はないんだったな。私が連れて行こう」

私は目覚めたばかりということで、車いすに座っていて、わざわざ先生が病室まで連れて行ってくれるそうだ。

「あの……」

「ん?なんだね」

「私の両親って何をしてる方なんですか?」

「君の両親かい?白藤グループというかなり大きな会社をやっていてね、業種は……総合商社といえばわかりやすいかな。まぁいろんな業種のとりまとめだね」

「ありがとうございます」

「それじゃあかねさん。今日はゆっくり休むんだよ」

「はい」

わたしはベッドで横になる。ここ、個室だったのはそういうわけか。

でも私は香澄という名前だったはず、それにあの日。私は死んだんじゃ……

そんな考えを頭の中で巡らせていたら、いつの間にか眠ってしまっていたようだ。


『香澄、なんでそんなこともできないの!』『あんたなんかうまなければよかった!』

目の前には幼いころの香澄(わたし)の姿、その身にボロ布をまとい、母親に殴られ続けている。その眼には何も映っていなくただ空虚だった。

一瞬目の前が白み、次に映ったのはあの日の風景だ。

いやらしい顔をした、誰かも知らない男性に犯されている私の姿、男性がその行為を終わらせた後、私はその場から逃げ出し、ビル街へと駆け出していた。

《こんな世界なんて、消えてなくなってしまえ》

そう口が動き、私は立っていたところから一歩踏み出し、そのまま暗闇へと姿を消した。

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