SF系①
制作時間
3時間
・プロット30分
・執筆2時間
・推敲30分
◆サンプル概要
・日常会話サンプル(年上のお姉さんとの会話)
・容量9~10kb
◆タイトル
『いつでも会えるお姉ちゃん』
◆あらすじ
クローズドベータ版が公開された全感覚没入型(フルダ
イブ型)VRソフト『パラダイスロスト』で、主人公の
間宮ユウタはそのヒロインの一人、久坂カオリに恋をし
てしまった。
◆舞台設定
フルダイブ型VRのアミューズメントパークゾーン
◆キャラクター設定
●間宮ユウタ
・年齢 十六歳
・『パラダイスロスト』のクローズドベータ版テ
スター。亡くなった兄がパラダイスロストの開発者。人
見知りだけど、一途な性格。大好きな兄を失って心を閉
ざしていた彼だったが、カオリとの出会いで立ち直る。
●久坂カオリ
・スリーサイズ95/68/90
・外見年齢 十八歳くらい
・主人公との関係 幼なじみ(ゲーム内)
・パラダイスロストのヒロインキャラの一人。年上
のお姉さん。優しく、好きになった人に尽くすタイプ。
裕太との出会いで自我が芽生えた。それは兄が
遺した弟へのプレゼントだったが、カオリはそれを密か
に悩む。
◆本文
//bg:アミューズメントパーク
//立ち絵:カオリ
//立ち絵:ユウタ
【間宮ユウタ】
「つ、疲れた……」
#
まさかあの清楚でのんびり屋のカオリさんが、
遊園地に来ただけで、
こんなにもはしゃぐだなんて……。
#
でも、
知らなかった彼女の一面が
見られたのは素直に嬉しい。
#
それを僕だけに見せてくれたことも、嬉しい。
【間宮ユウタ】
(いやいや、なにを彼氏面しているんだ……)
#
僕は彼女にとって、年下の、弟みたいな奴ってだけ。
それに――
【久坂カオリ】
「ふふっ、じゃあちょっとそこで休憩しようか?」
#
彼女はこのゲームのただのキャラクターなんだ。
ゲストを楽しませるためのプログラミングがされている
に決まっている……。
#
でも、どうしても、
彼女をただの『プログラム』とは思えない。
だって、本当に『人間』と接しているみたいなんだ。
//イベントCG:クレープを差し出す久坂カオリ
【久坂カオリ】
「疲れた体にはクレープに限るよね。はい、
アミューズメントパークエリア期間限定発売の
『マシマシクレープ』。お姉さんのオススメだよ」
【間宮ユウタ】
「え、マシマシクレープ?
えっと、なにがマシマシなんですか?」
#
見た目では、普通のパフェと変わらないような……?
【久坂カオリ】
「わからない? んーじゃあ、こうしようかな、
当てたら『あーん』してあげる」
【間宮ユウタ】
「あ、あーん!? カオリさんが僕に
『あーん』してくれる……!」
【間宮ユウタ】
「それは、頑張らないと……。
でも…………なんだろう……
苺じゃないよな……」
#
まさか値段がマシマシ?
いや、それただのぼったくりじゃないか。
【久坂カオリ】
「うふふ、ヒントね。食べればわかります」
【間宮ユウタ】
「いや……それだと、
食べないとわからないんじゃ?」
【久坂カオリ】
「ユウタ君なら当てられるよ。さ、頑張って!」
#
カオリさんがこんなにも応援してくれている!
これは、頑張らざるを得ないな!
#
ええと、食べればわかるんだったな。
ホイップクリームの量……は見た目か。
【間宮ユウタ】
「す、すみません。もう一個ヒントをください」
【久坂カオリ】
「ヒント欲しいの?」
【間宮ユウタ】
「はい」
【久坂カオリ】
「じゃあねえ、ユウタ君――」
【間宮ユウタ】
「は、はい!」
【久坂カオリ】
「カオリお姉ちゃんの好きなところ、五つ、言って?」
【間宮ユウタ】
「は……はい??」
#
いきなり何を言い出すんだ?
【久坂カオリ】
「ユウタ君は~、カオリのこと嫌いなのかな~?」
#
こ、この顔は『ユウタ君が自分のこと嫌っているはず
がない』と確信している顔だ。
#
もちろん、嫌っているはずがない。
というか……好き、なわけで……。
#
いや、僕はなにを真面目になっているんだ。
相手はゲームのキャラクターだぞ。
#
……プログラムなんだ。
【久坂カオリ】
「ほらほら~、クレープ溶けちゃうぞぉ」
#
プログラムでもいい……。
僕は彼女に恋をしているんだ……。
【久坂カオリ】
「あれ、今、ツッコムところだよ?
クレープはクリームだから
溶けるはずないでしょーって」
【間宮ユウタ】
「好きです、全部。五つじゃ足りません」
【久坂カオリ】
「ふぇ……?」
【間宮ユウタ】
「あ、えっと……すみません。あのその……
お姉さんとして、ですよ。はは、ははは」
#
ああ、僕ってば、度胸がないな。
どうしてあと一歩が踏み込めないんだろう。
【久坂カオリ】
「あ、うん……。お姉さんとしてかそっかそうだよね。
はは、ははは……うん……」
【久坂カオリ】
「あ、ヒントだったね! えっと、ダイエット中の
女の子とか、血糖値が気になる人は食べられないかなー」
#
今、一瞬、カオリさんの顔が曇ったような。
見間違いかな……。
#
じゃなくて、今はクイズの続きだ。
ええと、さっきのヒントから察するに……。
#
ってか、ダイエット中の女の子とか、
血糖値が気になる人は
クレープ食べないと思うけど?!
#
あ、でも、血糖値か……。
【間宮ユウタ】
「もしかして、砂糖マシマシってことですか?」
【久坂カオリ】
「うん、当たり♪ じゃあ、あーん、してあげる」
【間宮ユウタ】
「あ、はい……あの、
ちょっと待ってもらっていいですか?」
【久坂カオリ】
「ん、どうしたの?」
【間宮ユウタ】
「いえ、その……」
#
カオリさんに『あーん』してもらえるなんて、
心の準備ができていない。
#
くそ、心臓がジェットコースターの出発十秒前みたいに
バクバクしている……。
#
た、ただの『あーん』じゃないか。
なのに、なんでこんなに
オドオドしなくちゃいけないんだ。
#
男になれ、間宮ユウタ!
【間宮ユウタ】
「すみません! 大丈夫! です!」
【久坂カオリ】
「ふふっ……本当にかわいいな、ユウタ君」
【間宮ユウタ】
「え?」
【久坂カオリ】
「ううん。じゃあ、あーん♪」
//イベントCG・差分1:うふふとお姉さんの顔をする
カオリ
#
ぱくっ――。
#
僕は遠慮して、端っこの見えないところを囓った。
口に含んだのはちょっとだったのに、
#
……甘い。甘すぎる。
#
でも、この舌の痺れる感じ、嫌いじゃない。
というか、脳まで痺れてる気がする……。
#
なんだか胸が苦しい。
【間宮ユウタ】
「んっ、甘い……ゲームなのにこんなに甘いんだ……」
【久坂カオリ】
「うん。甘いって感じるのも電気信号だからね。
脳にそれと似た信号を流しているんだよ」
【間宮ユウタ】
「じゃあ、恋もただの電気信号なのかな?」
【久坂カオリ】
「恋?」
【間宮ユウタ】
「あ、いえ、なんでもないですっ」
#
生身の人間に恋をする。
ゲームのキャラクターに恋をする。
#
その二つはどこが違うんだろう。
どちらもただの電気信号なら、変わりはないはず。
#
兄さんだったら、なんて言うかな……。
【久坂カオリ】
「あ、ホイップクリームが付いてるよ」
【間宮ユウタ】
「え、あ……」
【久坂カオリ】
「取ってあげる」
#
そう言って手を伸ばしてきたカオリさん。
その指は僕の唇に触れて、その端に付いていた
クリームを拭い取っていった。
#
彼女に触れられたところがピリリと疼いた。
#
カオリさんは自分の指についたクリームを舐めとる。
【久坂カオリ】
「ぺろっ。やっぱり甘いね」
#
舌を伸ばして、舐めたの……。
ちょっとエロいかも……。
【久坂カオリ】
「ん? どうしたのそんな顔して。あー、さては」
【間宮ユウタ】
「い、いや、べつにそのそういうつもりじゃ!」
【久坂カオリ】
「もう一口、食べたいんでしょ」
【間宮ユウタ】
「……へ?」
【久坂カオリ】
「あれ、違った?」
【間宮ユウタ】
「いえ、その、……はい」
【久坂カオリ】
「もう食いしん坊だなぁ。いいよ、はい、もう一口!」
#
カオリさんの舌がエロくて、とは言えずに、
僕はクレープを、さっきと同じくらい少量いただく。
#
――ぱくっ
#
クリームが舌の上でとろける。
やっぱり甘い。
【久坂カオリ】
「どう、疲れは取れたかな?」
【間宮ユウタ】
「そうですね。クレープを食べたら、
なんだか力が湧いてきました」
【久坂カオリ】
「やっぱり甘い物って偉大だよね。もっと食べる?」
【間宮ユウタ】
「あ、いえ、もういいかな……」
【久坂カオリ】
「そう? お姉ちゃんに遠慮してるのかな?」
【間宮ユウタ】
「そうじゃないですけど。あの……今、
いっぱい食べちゃうと、
この後に差し支えるかなぁ、なんて」
【久坂カオリ】
「うん? そうだね。
じゃあ、これはお姉ちゃんが
食べちゃおうかなぁ」
【久坂カオリ】
「……って、本当は食べたいだけなんだけどね。
食い意地が張ってるのは、私の方だ」
【久坂カオリ】
「こんなお姉ちゃん嫌だよね?」
【間宮ユウタ】
「ううん。カオリさんがおいしそうに食べてるところ、
僕、好き……というか」
#
うまく言葉が出てこない。
かっこいい言葉がすらすらと出てくればいいのに。
#
僕はやっぱり、カオリさんとは不釣り合いだ。
【間宮ユウタ】
「カオリさん……と、外の世界で出会いたかった」
【久坂カオリ】
「ん?」
【間宮ユウタ】
「こんなことを言っても、たぶんどうにもならないこと
だっていうのはわかっているんだ」
【間宮ユウタ】
「いくらディープラーニング型の、チューリングテスト
にも合格したAIを積んでいたとしても、
カオリさんは人間じゃ……ない」
#
だから、いくら恋をしたとしても無駄だって。
その先にはなんにもないんだって。
#
そもそもこれは幻影……。
カオリさんは実在しないんだから。
【間宮ユウタ】
「でも、僕は、カオリさんに救われた。
だから、カオリさんと一緒の時を過ごしたかった……」
//イベントCG・差分2:少し表情が強ばるカオリ
#
返事が返ってこない。
そりゃそうだ。
#
自律しているAIだとしても、
僕の言葉が理解できるはずがないんだ。
#
だって、これは『恋』の告白なんだから……。
【久坂カオリ】
「……楽しいだけじゃだめなのかな?」
【間宮ユウタ】
「え?」
【久坂カオリ】
「わたしね、ユウタ君といると、
ふわふわ……ってなるんだ」
【久坂カオリ】
「クレープを一人で食べても美味しいって感じないの。
それは、たぶん私にプログラムされていないから」
【久坂カオリ】
「ふわふわってなるとね、楽しいの。楽しいって思う。
同時にね、ズキズキって感じもする」
【間宮ユウタ】
「ズキズキ?」
【久坂カオリ】
「ユウタ君は、〝帰っちゃう〟から」
【間宮ユウタ】
「寂しいの?」
【久坂カオリ】
「寂しい……? ああ、そっか、
このズキズキって寂しいってことだったんだね」
【久坂カオリ】
「ねえ、ユウタ君。一つわがまま言っていいかな?」
【間宮ユウタ】
「なに?」
【久坂カオリ】
「お姉ちゃんと……私とずっと一緒にいて」
【間宮ユウタ】
「え?」
#
思わず二度見してしまった。
まさかAIがそんなことを……。
#
カオリさんは、
答えがわかっているという風に微笑みながら、
僕の答えを待っている。
#
僕は、どう答えればいい……。
【久坂カオリ】
「ふふっ、ユウタ君、やっぱりかわいい」
【間宮ユウタ】
「カオリさん、僕は!」
【久坂カオリ】
「冗談よ」
【間宮ユウタ】
「カオリさん……」
【久坂カオリ】
「冗談だってば。もう……。そんな顔しないの」
#
そんな顔するなって言われても、無理だ。
だって、あの言葉は「冗談」ではなかったから。
#
少なくとも、僕にはそう聞こえなかった。
【久坂カオリ】
「ほら、もう一口、食べなさい。きっと大丈夫だから」
【間宮ユウタ】
「……いただきます」
【久坂カオリ】
「いい子。ユウタ君は本当に……」
【久坂カオリ】
「おいしいでしょ?」
【間宮ユウタ】
「――甘くて、甘すぎるくらいで、
一生忘れられない味です」
【久坂カオリ】
「だって、マシマシだもの。
でも、ちょっと甘過ぎるかもね」
#
冗談っぽく言って笑っているカオリさんが、
僕にはとても悲しんでいるように見えた。
#
どうしたらいいんだろう。
どうしたら、カオリさんを幸せに出来るんだろう。
#
僕がもし兄さんだったら……。
天才と呼ばれたあの人だったら、もしかしたら答えを
見つけられたんだろうか。
【間宮ユウタ】
「カオリさん――」
//SE:ピンポン(アナウンスが始まる音)
【アナウンス】
「ベータ版プレイ中のテスターの皆様にお伝えします。
現在時刻十八時になりました」
【アナウンス】
「皆様の健康へ配慮いたしまして、
いったんプレイアウトしてください」
【アナウンス】
「本日のご協力、誠にありがとうございました。
繰り返します――」
【久坂カオリ】
「ほら、ユウタ君。帰りの時間だって」
【間宮ユウタ】
「…………。俺、明日も来ますから!」
【久坂カオリ】
「うん。明日もクレープ食べようね」
【間宮ユウタ】
「はい! じゃあ、また明日!」
【久坂カオリ】
「バイバイ、ユウタ君」
//イベントCG終了
//bg:アミューズメントパークエリア
//立ち絵:久坂カオリ
【久坂カオリ】
「さようなら……ユウタ君……」
エンド