4月14日
「ああ、あんたなんか生まなければよかった!」
うん、生まれなきゃよかった。
生きていくのってツラいだけだもの。
「なんで4月14日だったのよ! 予定日はもっと先だったのに。4.14――始終死にたい――なんて、見透かしたみたいに!!」
少女は背中に残る痣を押さえるようにランドセルを背負い、「行ってきます」と小さな声で呟いて家を出る。
「ああ、あなたが生まれてくれて、本当によかった!」
うん、生まれてよかった。
生きるってとてもステキなことだもの。
「なぜ4月14日だったかしら? 予定日はもっと先だったのに。4.14――始終幸せ――なんて、神様が見透かしたみたいね」
少女は背中に残る温もりを逃がさないようにランドセルを背負い、「行ってきます」と元気声で家を出る。
おかあさん、今日、嫌なことがあったのよ。
先生がね、「さあ今日は、お誕生日列車を作りましょう」って。
おかあさんはお誕生日列車、知ってる? 列車の形の紙に自分の名前と誕生日を書いて、誕生日順に壁に貼っていくの。
そしたらね、私と同じ誕生日の子がいたの。
それでね、その子が言うの。
4月14日は『始終幸せなすっごくいい日だ』って。
だから私、教えてあげたの。
4月14日は『始終死にたい、すっごく嫌な日だ』って。
おかあさん、今日、嫌なことがあったのよ。
先生がね、「さあ今日は、お誕生日列車を作りましょう」って。
おかあさんはお誕生日列車、知ってる? 列車の形の紙に自分の名前と誕生日を書いて、誕生日順に壁に貼っていくのよ。
そしたらね、私と同じ誕生日の子がいたの。
それでね、私は4月14日は『始終幸せなすっごくいい日だ』って言ったの。
そしたらその子、怒るのよ。
4月14日は『始終死にたい、すっごく嫌な日だ』って。
ねぇ、おかあさん。どうしてかしら?
誕生日はおんなじなのに、あの子はいっつも幸せそうに笑ってるの。
どうしてかしら。
4月14日は『始終死にたい、すっごく嫌な日』なのに。
……おかあさん、どうしたの?
どうして泣いているの?
ねぇ、おかあさん。どうしてかしら?
誕生日はおんなじなのに、あの子はいっつもうつむいてつまらなさそうなの。
どうしてかしら。
4月14日は『始終幸せな、すっごくいい日』なのに。
……おかあさん、どうしたの?
どうして泣いているの?
「誕生日、おめでとう」
「おめでとう!」
4月14日、先生の掛け声で一斉に教室は祝福の声に包まれた。
6年前のその日に生まれたふたりの少女へ向けて。
「ほらね、4月14日は『始終幸せな、すっごくいい日』でしょう?」
俯いていた少女の手を取るのは、幸せそうに笑うもうひとりの少女。
「うん。始終幸せではないけど、始終死にたいわけじゃないかも」
ぽつりと呟いた少女は、ほんの少しだけ笑っていた。