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4月14日

作者: 葵生りん
掲載日:2019/02/21



「ああ、あんたなんか生まなければよかった!」


 うん、生まれなきゃよかった。

 生きていくのってツラいだけだもの。


「なんで4月14日だったのよ! 予定日はもっと先だったのに。4.14――始終死にたい――なんて、見透かしたみたいに!!」


 少女は背中に残る痣を押さえるようにランドセルを背負い、「行ってきます」と小さな声で呟いて家を出る。




「ああ、あなたが生まれてくれて、本当によかった!」


 うん、生まれてよかった。

 生きるってとてもステキなことだもの。


「なぜ4月14日だったかしら? 予定日はもっと先だったのに。4.14――始終幸せ――なんて、神様が見透かしたみたいね」


 少女は背中に残る温もりを逃がさないようにランドセルを背負い、「行ってきます」と元気声で家を出る。






 おかあさん、今日、嫌なことがあったのよ。

 先生がね、「さあ今日は、お誕生日列車を作りましょう」って。

 おかあさんはお誕生日列車、知ってる? 列車の形の紙に自分の名前と誕生日を書いて、誕生日順に壁に貼っていくの。

 そしたらね、私と同じ誕生日の子がいたの。

 それでね、その子が言うの。

 4月14日は『始終幸せなすっごくいい日だ』って。

 だから私、教えてあげたの。

 4月14日は『始終死にたい、すっごく嫌な日だ』って。




 おかあさん、今日、嫌なことがあったのよ。

 先生がね、「さあ今日は、お誕生日列車を作りましょう」って。

 おかあさんはお誕生日列車、知ってる? 列車の形の紙に自分の名前と誕生日を書いて、誕生日順に壁に貼っていくのよ。

 そしたらね、私と同じ誕生日の子がいたの。

 それでね、私は4月14日は『始終幸せなすっごくいい日だ』って言ったの。

 そしたらその子、怒るのよ。

 4月14日は『始終死にたい、すっごく嫌な日だ』って。






 ねぇ、おかあさん。どうしてかしら?

 誕生日はおんなじなのに、あの子はいっつも幸せそうに笑ってるの。

 どうしてかしら。

 4月14日は『始終死にたい、すっごく嫌な日』なのに。

 ……おかあさん、どうしたの?

 どうして泣いているの?




 ねぇ、おかあさん。どうしてかしら?

 誕生日はおんなじなのに、あの子はいっつもうつむいてつまらなさそうなの。

 どうしてかしら。

 4月14日は『始終幸せな、すっごくいい日』なのに。

 ……おかあさん、どうしたの?

 どうして泣いているの?






「誕生日、おめでとう」

「おめでとう!」


 4月14日、先生の掛け声で一斉に教室は祝福の声に包まれた。

 6年前のその日に生まれたふたりの少女へ向けて。


「ほらね、4月14日は『始終幸せな、すっごくいい日』でしょう?」


 俯いていた少女の手を取るのは、幸せそうに笑うもうひとりの少女。


「うん。始終幸せではないけど、始終死にたいわけじゃないかも」


 ぽつりと呟いた少女は、ほんの少しだけ笑っていた。





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― 新着の感想 ―
[良い点] なにもわざわざ、自分の誕生日で嫌な語呂を作ること ないですよね~。そうそう、4は幸せのしですよね! ドレミの歌でも「シはしあわせよ~」って歌っていますもの。 だけど子どもは、素直に親の言…
[良い点] ちょっと悲しくて、ちょっとほっこりしました。 捉え方でこうも違うものでしょうか。 でも、幸せな子から、幸せをもらって、少しずつでも前を歩いていって欲しいと思いました。
[良い点] 拝読しました。 「4」という数字は、私にとっては、「死」というイメージがまとわりついて来て、何かモノを買うときにも、料理を作る時にもわざと一つ減らしたり逆に一つ増やしたりして4にならない…
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