第24話 急使
“ドンドン!! ドンドン!!”
早朝から慌ただしく扉を叩く音がした。
「なんだ? こんな朝早くに」
朝食の準備をしていたアルプが何事かと怪訝な顔つきで扉を開ける。
外に立っていたのは蒼白な顔をした村長だった。
「ヴィオ様はいらっしゃいますか!? 城から急使の方が参りまして……」
「急使?」
「ええ……。それが大けがをされていまして、今は我が家で休んでいただいておりますが、どうしてもすぐにヴィオ様にお伝えせねばならないことがあると仰っておりまして……」
どうやらただ事ではないらしい。
「分かりました。ヴィオ様にお伝えしますので、少々お待ちください」
アルプはそう答えて、まだ寝室で寝ているヴィオと花音達を起こしに行った。
・・・・・・・・
数十分後、ヴィオ達は村長の家で城からの急使と対面していた。
「わ、私はストリングス騎士団G隊の隊員でグレンと申します……」
と名乗った使者は包帯だらけの痛々しい姿であった。
「起き上がる必要はない。そのままベッドの上で報告してくれ」
ヴィオの姿を見て、ベッドから起き上がろうとしたグレンをヴィオが留める。
「は……。申し訳ございません。ではこのままご報告をさせていただきます」
グレンはヴィオに頭を下げると、悲壮な表情で報告を始めた。
「昨日、エフホールがモンスターの大軍による襲撃を受けました」
「なんだと?」
ヴィオが目を見開く。
「……エフホール周辺に強力なモンスターなど居ないはずでは?」
アルプも驚いた様に使者の報告に疑念を挟む。
「は、どこから現れたのか定かではありませんが、草原の方から押し寄せてきたと町の者たちは叫んでおりました」
「エフホールの現状は?」
ヴィオが質問する。
「私が隊長に命令されて、城を脱出した時には……すでに町は火の海になっておりました。住民たちは城に避難をしてきておりましたが、モンスターは夥しい数で攻め寄せてきており……」
グレンが辛そうに唇を噛むと、必死に次の言葉を口に出す。
「……城を何重にも包囲しておりました。私が脱出できたのも奇跡に近い状況で……」
「すぐに城に戻る……お前はここで傷を癒せ」
ヴィオはそう言うと振り返って言った。
「カノンはウーロとここに残って……」
「嫌! 私も行く!!」
花音の脳裏にサマンサや、衛兵たちの姿が思い浮かぶ。
「関わったのは少しだけだったけど、私も助けに行きたい! お願い、ヴィオ」
花音の必死な言葉を聞いてヴィオは溜息をつく。
「……危険だよ?」
「分かってる」
花音の決意が変わらなそうなのを見て取って、ヴィオは諦める。
「出来るだけモンスターには近づかないように。カノンが魔法を使う時は必ずアルプとウーロがカノンを守るんだ、分かったね?」
「承知いたしました。マスター」
「ウーロもママから離れないよ!」
「二人ともありがとう。絶対に危険なことはしないから安心して、ヴィオ」
こうして花音達は急遽エフホールへの帰路についたのだった。
「それにしてもどうして急にモンスターがそんなにたくさん現れたのかな?」
「分からない……」
ヴィオが厳しい顔で首を振る。
ヴィオにも分からないことがあるんだ……。花音は少し驚く。これまでヴィオに聞けばなんでもスラスラ答えてくれていたので、逆に知らないことなんてないのかと思っていた。
その時、アルプとウーロがほぼ同時に口を開いた。
「マスター、何か来ます」
「ママ……風さん。ビュービューしてる」
「え?」
花音が一瞬何のことかわからず、キョトンとする。
ヴィオが上空を睨む。
「よお。ようやく出発か? 待ちくたびれたぜ」
突然、空から声がしたかと思うと、花音たちの間に一陣の風が吹き抜けた。
気が付くと前方に若草色の髪をなびかせた青年が立っていた。青年の周りにはつむじ風のような大気の渦がいくつも浮かんでいる。
「女が二人と、男が一人、ガキが一人か……。なぁ、俺、暇してるからよー。遊んでってくれねーかな?」
青年はニヤッと笑って言った――。




