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第7話   ユータうなだれる

 ユータは宿を目指し歩いていた。明日の準備をしようにもいくらかかるか分からなかったので、最初に宿をとろうと思ったのだ。

 目指す宿は冒険者ギルドですでに聞いていた。相手は酔っ払いだったので聞き出すまでは大変だったが。

 宿は案外簡単に見つかった。この都市の店や宿はみな一目でそれとわかる看板を上げているのだ。宿はベッドが書かれた看板を上げている。


 宿の名前は『猫の尻尾亭』酔っ払いを信じるなら宿の値段は一泊銀貨3枚である。もっと安い宿もあるらしいがユータはケモミミに会いたくてこの宿を選んだ。


「「いらっしゃいませ~」」

 宿に入ると双子のネコミミ少女が出迎えてくれた。宿の一階は食事スペースになっていて二人は給仕をしているのだろう、木製のトレーを持っていた。

 赤毛で実に可愛らしい双子である。獣人はケモミミや尻尾がある以外ほとんど人間と変わらない。

(素晴らしい! 一日の疲れが消えていく……)

 宿をとりたいと伝えると受付まで連れて行ってくれた。受付には彼女らの母親らしき人がいる、もちろんネコミミである。


「泊まりたいのですが、空いてますか?」

「いらっしゃいませ、空いていますよ。1泊銀貨3枚で朝晩食事つきです。お湯は言ってくだされば銅貨5枚で御用意いたします。お風呂がよろしければここを出て右に三軒行ったところがテルマエになっていますのでそちらをご利用ください」

 聞いていた値段通りで安心するユータ。

「では一泊お願いします」

 そういって銀貨三枚を渡す。

「かしこまりました、お客様は203号室となります、ミミ! 案内してちょうだい」

「はーい、お客様! ご案内します!」

 双子の内一人の名前はミミというらしい。

「よろしくね」

 元気のいいミミについ頬が緩むユータであった。ユータの名誉のために言っておくと、彼は決してロリコンではない、ただケモミミが好きなのだ。


 部屋に案内され、ありがとうと言い部屋に入る。ベッドと机のみの簡素な部屋だが掃除が行き届いているのだろう、不潔な印象は受けなかった。部屋の鍵はかんぬきで少し頼りなく感じるがないよりはマシだろう。


 部屋に入りベッドに腰を下ろす。

一息ついたところで明日必要なものを考えはじめた。

「水筒は必要だよな、どれくらい探索するのかわからないし食料も買っておこう。あとは武器と獲物を入れる袋も欲しいな」

 アイテムボックスさえあればと思う。そこで気がつく、空間魔法使ってなかったな、と。

 最初に使った魔法があれだったので魔法について考えないようにしていたのだ。そこでユータは己の中に意識を向ける。すると使える魔法がわかるのだ。そして魔法名を唱えると魔法が使える。

意識を空間魔法に向ける。空間魔法はlevel:1なので一つしか使えない。

「オサイフ?」

 ユータは魔法名を唱える、何か嫌な予感がした。

 出てきたのはガマ口の財布である。開けると中には大銀貨10枚が入っていた。


 ユータはうなだれた。


 これに気付いていれば走り回る必要も借金をする必要もなかった。

 借金に関してはチャラになったので構わないが、借金をするという事自体、精神衛生上大変よろしくない。衣食足りて礼節を知る、人には余裕が必要であろう。

 ユータは自分の迂闊さに呆れ、女神に不満を持ったことを内心で謝罪した。


(でも正直助かった…)

 これだけあればある程度必要なものはそろうだろう。ユータはさっそく買い物に出かける。


 最初に来たのは武器屋である。スキルにあるのが鞭術と闘棍術である。闘棍術とはメイスのことであろう。鞭と比べてまだ使いやすそうなのでメイスを選ぶことにした。

 メイスは良い武器である、ただぶん殴ればいいのだ。先端に当てる練習が必要だが、剣や槍よりは扱い易い。お手入れも簡単で刃こぼれなどもない。それでいて破壊力は抜群だ。素人が使う上でこれ以上に素晴らしい武器もないだろう。

 鞭? 鞭は論外だ、フレンドリーファイヤどころか自爆しかねない。


「いらっしゃい」

 中に入るとドアベルが鳴り奥からドアーフが出てきた。

 男のドアーフなのであまり感動はしなかった。

 何がうれしくてムキムキのひげ面を見て感動しなければいけないのか。これが女性のドアーフであったなら……と思うユータだった。

「メイスが欲しいんですが」

「数打ちでいいならそこに並んでいるのから選んでくれ、手に合うのを選んだらいい。あとはオーダーメイドになる」

 ユータは数あるうちの先端が6角形のタイプで棘がないやつを選ぶ。これが一番手になじんだ。

「良いのを選ぶね、そいつは重心も偏ってなくてふりやすい。初心者は棘付きを選ぶ事が多いが、使い勝手がいいのはそういうやつだよ」

 さすが職人と言えばいいのか、ユータが素人なのはバレているようだ。

 なるほど、そういうものかとユータは頷きつつ値段を聞く。大銀貨4枚だった。他にも解体用のナイフとマシェットを買う。合わせて大銀貨2枚と銀貨5枚。ユータの残金は大銀貨4枚になった

「ありがとよ、次はオーダーメイドしてくれよな」

 適当に頷きつつ店を出る。ユータは次の買い物に向かった。


 ユータが買い物を終え宿に戻ったのは日が暮れてからだった。

 結局買ったのはメイス、マシェット、ナイフ、水を入れる革袋、携帯食料2日分、毛布、食料を入れるカバンに荷物をまとめて入れるリュックだった。

 ユータの残金は大銀貨2枚にまで減っていた。


 それらを宿に持ち帰り、食堂は混んでいたので双子のもう一人(名前はリリ)に食事を部屋まで運んでくれと伝える。リリは妹らしい。

 姉とは対照的におとなしい少女だった。

(これはこれで良し!)

 よく見てみるとあちこちでミミやリリを呼ぶものがいる。なるほど彼女らはこの宿の看板娘になっているようだ。

 心の中で彼らを〝同志ケモナー諸君〟と呼ぶことにしたユータだった。


 部屋で待っているとすぐに食事が運ばれてきた。

「食事…お持ちしました」

「ありがとう、食べ終わったら下へ持っていけばいい?」

「部屋の前に置いて、ください。回収しますので……」

 活発なミミも可愛いが、おとなしいリリも良いと思いつつ食事を平らげるユータだった。


 ネコミミや尻尾を触りたくなったユータだが、何とか自重する。


 食事を平らげ眠くなったユータだがまだ寝るわけにはいかない。空間魔法のlevel上げをする必要がある。大量の荷物をもって歩くのは嫌なのだ。

 魔法のlevelを上げるにはその系統の魔法を使い続ければいいらしい。さっそくオサイフの出し入れをするユータだった。


 何とか寝るまでに空間魔法のlevelを上げられたユータだったが、次の日苦情を言われることになる。財布を無くしてぶつぶつと呟いてるやばいやつと思われたようだ。

 ユータ自身は空間魔法のlevelが上がり、アイテムボックスを使えるようになったことに満足して就寝するのだった。


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