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第6話   冒険者ギルド

 城郭都市ケルン。ここは迷宮があった場所に町が作られ発展した場所だ。

 迷宮は無尽蔵の資源を生み出すが、同時に魔物も生み出す。最初この地に作られたものは魔物が出てこないように、迷宮を囲むように建てられた壁だった。その周りに少しづつ町が作られていったのだ。

 都市を囲むように作られた壁は外敵から都市を守るとともに魔物を外に出さないための檻でもあった。


 ようやく都市に入れたユータだがやるべきことはまだいくつも残っている。まずは身分証を手に入れなくてはならない。冒険者ギルドで作るのが一番手っ取り早いとは聞いていたが、場所がわからない。

 そこで衛兵に聞くことにした。彼らは困った一般人の味方だ。不審者を見つけたときは鬼となるが。

「すみません、冒険者ギルドの場所はどこでしょうか」

「それなら、中央の迷宮近くの内壁のそばだ。大きな建物だから行けばすぐにわかる」

「ありがとうございます」


 ギルドでは冒険者支援制度があり、ランクにより上限があるが金を借りることができる。もちろん行動制限がかかり都市から出られなくなるが、この街には迷宮があるのでそこで稼げという事なのだろう。

 金のないユータにとってありがたい制度だった。普段は装備が壊れたり、怪我をしたりして急ぎ金が必要になった冒険者が使うようだ。

 その制度を聞き、腹が減っていたユータは屋台で食い物を買ってしまっていた。

 パンと串焼きで合わせて大銅貨5枚。香辛料も使われなかなか旨いそれらをあっという間に腹に収め、ユータは冒険者ギルドに向かう。


「ここか」

 ユータは冒険者ギルドにたどり着いた。なかなかに巨大な建物である。城郭都市という構造上、土地が不足しているので建造物はどれも二階建て、三階建てではあったが冒険者ギルドは5階もあった。


「どうか絡まれませんように……」

 ユータはいくら上級職とはいえ、喧嘩もあまりしたことのない一般人だ。毎日生きるか死ぬかの戦いを繰り広げる冒険者になど絡まれたくはない。せつに願うユータだったがそれは杞憂であった。

 冒険者とはいわば派遣社員のようなモノであり、ギルドは手数料という名目で上前をはねているのだ。

 登録者を減らす真似をギルドが許すわけがない。まあそれはギルドの中では、と但し書きがつくが。


 一階は受付の他にも酒場が併設されていた、まだ昼過ぎであったが酒を飲むものがちらほらといた。俺も飲みてぇ、と思いながらユータは受付に向かう。


 受付はいくつかあったがユータは一番近いところに向かった。受付はイヌ科と思はしき、獣人の美女だ。

(すばらしい)

 ユータにとって獣人女性が見たくてこの世界に来たと言っても過言ではなかった。

 ケモミミ自体はすでに見つけてはいたが全員男だったのだ。男ではダメなのだ! 男では! 男の獣人など見れたとは言わない、見てしまったというのだ。

「すみません、登録したいのですが」

「かしこまりました、新規ですか? 再登録ですか?」

「新規です」

「新規ですね、登録料は銀貨1枚です」

「あの……、お金がないので支援制度を利用したいのですが」

 美人の受付にお金がないと言うのは少し恥ずかしかったが背に腹はかえられない。

 すべては貧乏が悪いのだ。


「かしこまりました、初期ランクFでは大銀貨1枚まで借りることができますが、いかがされますか?」

「大銀貨1枚でお願いします」

 宿を手に入れる必要があるので限度額いっぱいまで借りることにした。


「大銀貨1枚ですね、返済期限は一月、返済時に5割の利息が付きます。返済するまで依頼以外で壁外に出られなくなるのでご注意ください」

 一月で5割の金利は暴利だとは思うが他に選択肢はないのだ。ユータとしては「わかりました」と頷くしかない。


「それではこの機械に触れてください」

 受付嬢は受付の奥より機械を持ってきた、ユータは言われた通り機械に触れる。


「ユータさんですね、職業は賢者……だいぶ厳しい訓練をされてきたんですね。こちらギルドカードになります」

「ありがとうございます」

 カードには

 ユータ 20歳 人族

 職業 賢者

 ランクF 

 と書かれていた。


「基本的なことをご説明しますね、紛失してしまった場合は再発行に銀貨5枚かかりますのでご注意ください。ギルドランクはFからSまであります、依頼は一つ上のランクまで受けられます。ランクは依頼をこなしていけば上がっていきます。依頼に失敗されますと場合により、罰金や降格処分が課せられることが有りますのでご注意ください。ランクが上がると借りられる金額が増え利息が安くなるなど特典があります。Bランク以上になると町への入場料が免除となります。迷宮に入られる場合は1度実地講習を受ける必要が有ります」

 なるほどランクが上がればいろいろと特典があるようだ。迷宮の講習は普通にありがたい。


「何か質問はありますか?」

「迷宮の講習が受けたいのですがどのようにすれば良いですか?」

「はい、こちらで事前に予約してもらいます。今週の分は明日です、枠がまだ空いていますので予約できますがされますか? 銀貨一枚かかりますが」

「はいお願いします」

「かしこまりました講習料の銀貨1枚は貸付金より引いておきますね、それではこちらが貸付金の銀貨8枚です。明日8つの鐘が鳴る前にギルドに来てください」

「はい確かに、8つの鐘ですね。他に質問はありません、ありがとうございました」

 金をポケットに突っ込み受付を離れようとするユータしかし受付嬢に呼び止められる。

「あ、少しお待ちください、副ギルドマスターからお話がありますので」

「話ですか?」

 ユータは疑問を浮かべる。


「そこからは私が説明するよ、私がここの副ギルドマスターのサーシャ・プライスだ。ここで話すことでもないので上に行こう、二階には冒険者のミーティングスペースがある」

(エロフ!)

 声をかけたのは耳の長い、女性の金髪エルフだった。サラサラで艶やかな髪、白く美しい肌、目は少し細目だった。ユータが心の中でエロフと叫んでしまったのも仕方がないだろう。


「わかりました」

「協力感謝する」

 相手は副ギルマスな上に美人エルフである。ユータでなくても喜んでついていくだろう。


 二階にはいくつか部屋がありその中の一つに入るユータとサーシャ。中は机と椅子がいくつかあった。

「座ってくれ」

 促されるままに椅子に座るユータ、対面にサーシャが座る。

 机に肘をつき顔の前で指を組むサーシャをみてどこかの司令官を思い浮かべるユータ。そう感じるだけの威圧感はあった、少しだけ開かれた眼がユータを見つめる。


「さて、少し説明をしよう、呼び出された意味を知りたいだろうしね。以前に王国から来て新規に登録した上級職が問題を起こしていてね。いや冒険者が問題を起こすのは日常茶飯事だが……この前のはちょっと酷すぎたんだ。やつら迷宮で魔物を狩るのは良いがそのまま放置して素材を持ってこないんだよ。魔石を取り出しもしないんだ。殺せるだけ殺しているようだがね」

 酷い話だろう? とサーシャは続ける。


「迷宮で魔物を殺したら魔石を取り出さなければアンデット化する。とりだしてしまえばその内迷宮に取り込まれるので問題はないがね。死骸を見つけた他の冒険者が処理することもあるが、いかんせん取りこぼしが多い。少し前までアンデットが大量に発生していたんだよ。これは都市に深刻な影響を与えていてね、全冒険者に対して調査が行われたんだ。これは簡単でね、私のように審問官のジョブをもつものがアンデットを増やすために魔物を殺していたか聞くだけでいい、簡単だろう? 新規で登録した冒険者だけではなく金で雇われた冒険者もだいぶいたが……まあならず者のような奴らだったし処分する口実にはなったから良しとしよう。おかげで少し冒険者が不足しているがね」

 だんだんと威圧感が増していく。何も悪いことをしていないのに少し冷や汗をかくユータだった。手を見ると少し汗ばんでいる。


「だから君のような将来有望な冒険者は大歓迎だよ。だからこそ君にも誓ってほしいんだ、決して帝国及びこの都市に対し被害を与える目的で冒険者になった訳ではないとね。この宣誓がされない場合、私は君の冒険者登録を抹消する必要がある」

「わかりました、帝国及びこの都市に対し被害を与えるために冒険者になった訳ではありません。これでよろしいですが?」

 当たり前だが、ユータにとってこの宣誓をするくらい何も問題はない。


「ありがとう、君には何も問題ないようだ。君を疑ったことを謝罪させてもらおう。本当にすまなかった」

 頭を下げるサーシャ、先ほどまでの威圧感は瞬時に霧散していた。いきなり頭を下げられて驚いたのはユータである。


「顔を上げてください、気にしていませんから!」

「ありがとう、そういってもらえると助かるよ。時間をとらせて悪かったね。おわびと言っては何だが君の負債はチャラにさせてもらうよ、君のこれからの活躍を期待している」


 いろいろあったが借金がチャラになったのはうれしい誤算であった。

 こうしてユータは冒険者になった。


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