第4話 ユータ異世界に立つ
ステータスに関しては後で変更するかもです。
森がある。
異世界の森だ。近くには城郭に守られた街が見える。
この森には人の手が入っているのだろう。里山といった雰囲気だった。
涼やかな風が通り抜け、木々の間より落ちる木漏れ日がユータを照らす。
「ここが異世界か……植生はそこまでかわらないようだな。」
周りを観察していたユータだったが自分の変化にも気づく。
転移に伴いユータの服装も変化していた、ジーパンにシャツのみだったのが白のマントを羽織り、中の服は黒のパンツに薄い青の少しダボッとした服に変わっていた。
目立つであろう地球の服を現地の服と交換してもらえたのはありがたいが、これはこれで目立たないかと言えば決してそんなことはないと思う。純白の汚れ一つないマントなどはっきり言って目立ちまくるだろう。
「これは女神の趣味なのか?」
もう少し目立たなくして欲しいと思うユータであった。
「まあいいや、ステータスの確認をするか……」
気を取り直して女神が言ったように〝ステータス〟と念じるユータ、つい声が出てしまったのは仕方ないだろう。
音もなく現れるウインドウ、そこにはユータのステータスが表示されていた。
ユータ 20歳 男
人族 level:15
賢者 level:1
HP 12000/12000
MP 23000/23000
職業スキル
魔道六法 level:7
回復魔法 level:10
空間魔法 level:1
魔力操作 level:6
HP自動回復level:2
MP回復強化level:4
闘棍術 level:3
鞭術 level:4
身体スキル
言語理解 level:10
演算 level:5
なんだこれ? ユータの思いはこれに尽きる。身体スキルのほうはまだ良いい。問題は職業の法だ。Levelの割に強すぎないか?
しかし少し考えてほしい。そもそも賢者とは攻撃魔法 と回復魔法の両方が使える、最低でも秀才と呼ばれる者が厳しい修練を積んでからやっとなれる職業なのだ。
この世界で賢者は所謂エリートであった。天才ともてはやされながらも自らを律し、堕落せず日々努力し、少なくない時間を使いやっと立てる境地なのだ。
そう考えれば納得のいく数値ではある。
ユータもこの考えに至ったのだろう。何とか納得はしたようだ。しかし先ほどまでは抱えなかった頭を今度は抱えてしまった。
このステータスは賢者の能力(種族や種族レベルによって多少上下する)のいわば平均である。つまり上には上がいるはずなのだ。
そういった連中は本物の天才なのだ。だからこそ頭を抱えてしまう。
天才が努力してやっと立てる境地にいる彼らと比べられるのか、我々が1から10を一つずつ数えているのに彼らは1から10に飛んで数えるのだ。そんな奴らと戦う可能性もあるのか…と。
ユータは結局、人は人、自分は自分である、と折り合いをつけなるべく考えないことにしたのだった。天才など滅多にいないだろうと。
「とりあえず歩くか」
目下の目標は人里に行くことだ。
ある程度女神から情報を聞いているとはいえ、この世界の常識については全くの無知である。城郭都市に入り情報を集めなければならない。
(野宿だけは避けたい……)
この思いも強かった。この世界に来た以上はそのうち野宿になれる必要もあるとは思うがまだ初日だ。初めての野宿が、何が起こるかわからないサバイバルなど絶対にごめんこうむる。
そもそも女神から金をもらったのだ。ゆっくりと宿にでも泊まりながら情報を集めようとユータは考えていた。
しかしそこであることに気がつく。気がついてしまった。
「金貰ってねぇぞ……」
このつぶやきがすべてだ。もしかしたらと思い服を探るも何も入ってはいなかった。
「なんてこった」
まあでも確認していなかった自分が悪い。異世界のことを考え、浮かれて確認を怠った自分のミスである。
「女神様~」
女神を呼ぶが何も起こらない。神は助けてはくれないようだ。
ため息を一つ吐くが二度目の生をくれて上にチートもくれたのだ、感謝こそすれども文句などは言うまい。
「でも少し、ほんの少しだけ言わせてください。女神様あんたって神は……」
こうなったら何とかなる精神で、前に進むしかない。自力救済は人の常だ。
ユータの物事の切り替えは早い、そうと決まれば駆け足で城郭都市へ向かっていくのだった。