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第17話  ユータ領主に会う

設定を作って色々修正しているけど全然間に合わない……

17話もだいぶ変わるかも知れないです

 領主の館に向かったユータ。

 領主の館は都市の南西部、主に富裕層が住む区画にあり、来たこともなかったので迷うかと思ったがそんなことは無かった。

 領主の館はそれほどまでに目立っていたのだ。城郭都市は構造上、土地が少ないので建物は嫌でも密集している。しかし領主の館は違う、横にあるのは庭園だ。夕日に照らされる庭園と館はそこだけ切り取ればとても美しいが、都市としてみれば違和感しかない。

 迷宮という油田を有するケルンは地球の城郭都市に比べるとはるかに巨大ではあるが、土地には限りがある。ここまで贅沢な使い方をできるのは、さすがは領主と言ったところか。


「帰りたい」

 今すぐ回れ右し宿に帰りたくて仕方がないユータだったが、腕輪を受け取っているのだ。持ち逃げなどしようものならタダでは済まない。


「数時間前の自分をぶん殴りたい……」

 戦闘で少しテンションがおかしかったのか、今のユータは腕輪をさっさと引き取ってもらいたい気持ちでいっぱいだった。何というジレンマだろうか。領主に会いたくはない、されど腕輪は返さねばならない。

 最終的にユータが出した結論は、多少不敬を働いたとしても娘の恩人を殺しはしないだろう、とあきらめて会う事だった。対価のかたに腕輪を預かったのが多少で済めばいいが。

 

 決断したらあとは行動するだけだ。さっそく館を守備している衛兵の一人に声をかける。

「すみません、領主様に呼び出されました冒険者のユータです」

「ユータ様ですね、承っております。ギルドカードを拝見させていただいてもよろしいですか」

「どうぞ」

「確認いたしました。どうぞご案内いたします」

 衛兵に連れられ館の中に入る。なかでは既に執事と思われる人が既に待機していた。

「ユータ様、ようこそいらっしゃいました。当家の執事ラルフと申します。ここからは私がご案内しましょう」

 執事とか聞くと一気に貴族っぽくなるなぁ、どうでもいいことを考えつつ、案内される。

 案内されたのは応接室。そこで紅茶を出され少し待つように言われる。

「うまい」

 なかなか良い紅茶のようだ。飲みながら待つ。

「紅茶だけ飲んで帰れたらなぁ」

 無理だと分かっているがどうして考えてしまう。


「お待たせ致しました。当主様の元へご案内いたします」

 ちょうど紅茶をもみ終わるころにラルフさんが呼びに来た。当たり前だが、お貴族様がこちらに来ることは無いようだ。


 案内されたのは執務室の中にある談話スペース。すでにカイゼル髭の貴族然とした中年男が座っている。やることは腕輪を返し、対価を頂いて帰るだけ。簡単だ、子供にもできる。

 ……胃が痛くなってきた。

 

「初めまして、冒険者のユータです」

「……よく来たな。私はグスタフ・グラーフ・ラムドルフ、ケルン領主だ」

 

 やめてください、睨まないでください。なぜこの世界のお偉いさんは眼力が凄いのだろうか? 怖すぎるぞ。

 あと〝よく来たな〟が〝よく顔を出せたなクソ野郎〟に感じるのは俺だけですか?


「まあ、座ると良い」

「ありがとうございます」


 礼を言いつつ椅子に座る。ラルフさんはいつの間にかグスタフさんの後ろに立っていた。


「さて、まずは礼を言わせてくれ。娘を助けてくれて感謝する」

 言いつつ頭を下げるグスタフ伯爵。その姿は貴族というより父親といったほうがしっくりくる。

 ……思っていた貴族とは違うような感じだ。


「そこめで言われるとは、恐縮です。あと腕輪の事なのですが」

「ああ、それは返してもらいたい。もちろん礼はする。そうだな、金貨1000枚でどうだろうか」

「1000枚!」

 単純計算で日本円にして1億円である。

「足りないか?」

「いえ、十分です!」

 ここまでもらえるとは予想外だ。

「そうか、ではさっそく交換しよう。ラルフ」

「はい、お持ちいたします」

 

 すぐに運ばれてくる金貨。100枚ずつ小分けにされた袋が10個。それを腕輪と交換し、アイテムボックスに入れていく。

 つつがなく取引は終了した。あとはおいとまするだけだ。さっさと帰らせてもらおう。


「では、私はこれで……」

「まあ、待て。少し付き合え」

 ……帰らせては貰えないですよね。うん、知ってた。 

 運ばれてくる紅茶とお菓子。まだまだ帰らせてもらえなさそうだ。


「貴様、軍に来ないか?」

 ああ畜生、俺の能力は貴族にも欲されるらしい。

 嫌です。と言えたらどんなに楽だろうなぁ! 軍隊なんて休みなしだろ? 絶対に嫌だ。

 何とか断らないと! でも貴族からの誘いって断っていいの?


「私は冒険者です。ご用命とあらば、指名依頼をお出しください」

「……」

 沈黙しないで! 断っちゃ駄目なパターンだったの?


「そうか、気が変わったら来るがいい」

 セーフ! 俺のだらだら生活は何とか守られた! グスタフ伯爵が自分の我を通そうとする、高圧的な貴族ではないことに心から感謝しよう。


 軍隊入りを回避し安心しているとドアをノックする音が響く。

「お父様、少しよろしいですか?」

「構わないよ、入りなさい」

 あの声はメアリーか! やっとおっさんとの会話に終止符が打てる。


「失礼致します。ユータ様に私からも今一度お礼をと思いまして」

「そうかそうか、メアリーは偉いな」

 伯爵が笑っている……だと? 

「良くできたお嬢様ですね」

 とりあえずヨイショしておけば良いだろう。子供連れは子供を褒めれば気分が良くなるもの。コツはお孫さんですか? とは聞かずにお子さんですか? と聞くことだ。


「そうだろう、そうだろう。ハッハッハ!」

 良し、成功。


「ユータ様、私どもをお助けいただきありがとうございます」

「恐縮です」

 これ、襲われた原因が俺にあるとバレたら、どうなるんだろう。

 絶対に隠し通さないと……


「ラルフ、腕輪だ」

「かしこまりました。お嬢様、こちらを」

 ラルフさんがメアリーに腕輪を返す。顔を輝かせ、腕輪を受け取った。

「ありがとう!」

 ニコニコしながら腕輪を付けるメアリー。なにか心が痛い。こんな子供から腕輪を巻き上げていたなんて……

 

「おお、良く似合っている、メアリー」

 おっさん、さっきから顔緩みまくってんぞ。メアリーは今、伯爵の横に座りニコニコしている。その頭をなでるのは、これまたニコニコした伯爵だ。俺はいつまでこのほほえましい光景を見続けなければいけないのだろうか。

 メアリーは見ていたい。おっさんは見たくない。何と悩ましいことか。

 

 メアリーをなで笑顔の伯爵だったが突然険しい顔になる。

「すまないな、怖い思いをさせてしまった。こんな事なら避難させるのでは無かったな」

「大丈夫ですよ、お父様。怖くなんてありません。だから、頬擦りするのはやめてください。お髭がジョリジョリするのです!」

「そんな……」


 頬擦りしていた伯爵が押しのけられてショックを受けている。この世の終わりのような顔をしているが大丈夫だろうか? もし、臭いとか言われたら伯爵様どうなるんだろう。

 あれ、避難?

「避難ですか?」

「ああ、この前の誤報を受けた時、娘を避難させたのだ。それが盗賊に襲われることになってしまうなんて……無事でよかった」

 

 このおっさん、戦力が必要な時に娘に精鋭騎士つけて逃がしていたのか! どんだけ親バカなんだよ! てかそれってケルンが戦場になることを想定していますよね? 市民に対しては避難勧告が出ていないどころか、移動制限かけてなかったか? 

 考えないようにしよう。これは突っ込んじゃダメな奴だ。

 

「貴様には感謝している。貴族関係で面倒ごとに巻き込まれたら私に報告しろ。手助けをしてやろう」

「ありがとうございます」


 ――これバレたら殺されるんじゃないか……?


 貴族の後ろ盾を手に入れたユータだが、行く先がそこはかとなく不安だった。



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