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第16話  盗賊退治は面倒

 ユータはスキャンを使い盗賊と思われる反応を追いかけていた。


「細かく逃げやがって、面倒な奴らだ」

 先ほどの戦闘で打ち取ったのがおおよそ30人、20人以上は取り逃がしていた。

 その二十人もバラバラに逃げているのだ。恐らく後で落ち合う地点が決まっているのだろう。これは追手から少しでも多くの者が逃げきれるように考えられた盗賊の知恵だった。

 通常、追いかける側は二人組、四人組で追いかけるのでどうしても全員を追いかけることができずどうしても取りこぼしが出る。追手からするとこれほど嫌な逃げ方もないだろう。


 ユータはフライの魔法で空が飛べる。それでも、面倒なものは面倒なのだ。鬼が一人でしかも鬼が増えない鬼ごっこをやっているようなものだ。それもフィールド制限はない状態で。

 MPとて無限ではないのだ。スキャンで探して近づいても、空からでは木々が邪魔でうまく狙えない。そもそもスキャンは範囲を絞っても数キロが限界で盗賊を見つけるには何回も使わないと見つけられず、とても効率が良いとは言えなかった。


 3人ほど討伐したところでユータは〝これぐらいでいいだろう〟と思い始めた。そう思い始めたらもう盗賊を追いかける元気などユータには残っていない。それほどまでにこの森は広く、盗賊を探すことは面倒なのだった。


「もういい、面倒すぎる!」

 腹が減っていたという事も手ありユータは都市に戻ることにした。


 ケルンに戻ったユータは報告をするためにギルドへと向かっている。その手にはソーセージのようなものが挟まったホットドッグが握られていた。食べ歩きは行儀が悪いとは思うがとてもじゃないが我慢はできない。


(美味い!)

 パリッと焼かれ、香辛料が良く効いたソーセージが焼き立てのパンにはさまれ、上からマスタードのようなものまでかかっているのだ。不味い訳がなかった。

 以外に充実している帝国の食料事情に感謝しつつホットドッグにかぶりつく。他にもいくつか飲み食いし、ギルドにつく頃にはすっかり満足したユータだった。


 討伐の報告をするためにギルドの受付に向かう。ギルドからの依頼の場合は報告をするのはアデーレさんと決められているので彼女のもとに向かう。


「アデーレさん、盗賊討伐の報告に来ました」

「ご無事で何よりです。ここで出してもらうのもあれなので、裏に行きましょう」

 アデーレに案内されたのは、ギルドの一階奥にある部屋の一つだった。

 床に討伐証を置くように促され並べていく。

 討伐証の生首は合計32あった。あまり死体とかを気にしないユータだったがそれだけの数、生首を並べるとさすがに気分が悪くなる。

(満腹になるまで食べるんじゃなかった……)

 後悔するが後の祭りである。

 

 アデーレもこの数はあまり想像していなかったのか、少し顔が青ざめていた。

「多いですね……」

「でも盗賊自体は50人以上いましたよ。そのあたりの事も含めて一度サーシャさんに報告しておきたいのですが」

「わかりました、取り次いでおきます。報告の間に報酬を用意しますので終わりましたら受付のほうに来てください」

「わかりました」


 報告をしに行ったときサーシャはものすごく嫌な顔をしていた。


「さて、君は一体何をしたんだい? ここの領主から君に呼び出しが出てる。それについて詳しい報告をお願いするよ」

 

 ユータとしても想定より多い盗賊の数など文句の一つでも言いたかったが、まずはメアリーが盗賊に襲われていたことなどをかいつまんで報告する。


「はぁー。こんなことで領主とかかわりを持つかな。君はいろいろ巻き込まれる体質のようだ」

「不吉なことを言わないでください、少し思ってるんですから」

 本当にやめて欲しい。借金の件や執行隊の件など心当たりがあるユータだった。


「自覚があるようで何よりだよ、討伐と報告はお疲れ様。ではさっさと領主の館に行きたまえ」

「今からですか?」

 もう日が暮れ始めている。このような時間に訪問して良いのだろうか? 無礼打ちなど勘弁して欲しい。

「ギルドに戻ったらすぐ来るようにとのお達しだよ。絶対に腕輪は持って来いとのことだ。よほど大事なものなのだろう」

「了解しました。今から向かいます」

「ああ、そうしてくれ」


 サーシャのため息を聞きつつ部屋から出る、すこし扱いが雑になっているような気がするユータだが、考えても仕方がないので報酬をもらうために受付に向かうのだった。


「はい、こちらが今回の報酬になります」

 渡されたのは硬貨が入ってずっしりと重い布袋だった。

「盗賊をこんなに討伐されるとはさすがユータ様ですね。他の依頼も受けていただけたら嬉しいのですが……」

 すこし棘があるアデーレの言葉だった。しかしユータはこう思うのだ。働かず暮らしていける金があるのになぜ働かなくてはならないのか……と。

 これはある意味心理だろう。

 しかしユータは自分が借金をしていることを忘れているようだ。あとでそのことを思い出し、手持ちの金から返済に充てるために積み立てを始めるユータだった。


 とりあえず、今にも無理やり依頼を受けさせようとするアデーレから「今から領主の所に行くから」と逃げることにした。なんとかアデーレの依頼攻勢は収まるが最後に「ユータさんは面倒ごとに巻き込まれ易いようですね」と言われる。


 ユータとしても面倒ごとにはあまりかかわりたくないのだが、最初の魔法実験が尾を引いてこれからも面倒ごとに巻き込まれそうな予感があった。

「勘弁してくれよ……」

 

 心からそう思うユータだった。


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