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第14話  盗賊殲滅戦

すみません。これから週2回ぐらいの投稿になります。

完結まで頑張りますので、これからもよろしくお願いいたします。

盗賊の数を修正しました。

 ユータはケルンより北方40kmの地点に来ていた。フライの魔法を使い、おおよそ1時間空の旅である。


「どうしたものか……」

 ユータは既に盗賊を見つけていた。しかし既に戦闘中だった。

 ユータとしてはさっさと加勢して盗賊を叩き潰してしまいたいところだが盗賊と闘っている者が問題だった。小奇麗な馬車、おそらくは貴族だろう。


 盗賊と闘っているのは貴族の護衛騎士15名である。ご丁寧にも馬車を守って方陣を組んでいた。

 盗賊の数は大体30人くらいだったはず、同数程度なら騎士たちが負けることは無いだろうが倍は厳しいだろう。


「おいおい、まじかよ」


 30人以上の盗賊が森から出てきたがその勢いは止まる気配がない。そこでユータは森をスキャンしてみたのだが、盗賊の数は予想をはるかに超えていた。


「ざっと50以上はいるのか、情報と違うぞ」


 15名の護衛に対し50人以上の盗賊である。戦いなれた冒険者崩れまで中にはいるのだ。いくら騎士が精強でも勝ち目はないだろう。騎士もそう考えたのか馬車を逃がすために動き始めた。しかし既に馬車や騎士たちは包囲されてしまっている。


「全滅は時間の問題か? 」

 騎士が劣勢でも動く気がないユータだった。ユータとしてはテンプレなどとかかわるのは嫌だったので、動く気などなかった。


「それにしても貴族もバカだ。こんな時にこの道を通るとは、きっとわがままな奴だろう」

 そして盗賊も盗賊だ、貴族など襲ってどうするつもりなのだろうか? 本格的に討伐されるだろ、と思わないでもないが、何か考えがあるのだろうか?


「んー、案外粘るな」

 騎士は戦意旺盛に戦い続けてはいるが少しずつ数を減らしている。キルレシオは1・5から2と言ったところか。数で押されている割には良いほうだろう。

 騎士の数が半分程になったときにユータは気づく。


「この盗賊に貴族が襲われるのは不味いんじゃないか?」

 この盗賊はユータのせいで町から逃げ出し盗賊になった者たちである。その盗賊に貴族が襲われるとなると責任はユータに帰結するのだ。貴族が襲われればギルドもユータを庇いきれず差し出すだろう。


「不味い! 不味いぞ!」

 人間1度手に入れたものを失いたくはないのだ。最低月金貨3枚という待遇を無くしたくないために貴族を助ける決意をするユータだった。


「まずは盗賊の数を減らそう。土魔法に誘導を付与したものでいいか。誤射には気を付けないと。バレット!」

 バレットはもともとこぶし大の石のつぶてを飛ばす魔法だが、ユータのバレットは銃弾をモチーフにし、小さく速度を速くした特別仕様である。

 石の弾丸が盗賊一人の頭を貫く。即死だろう。


「なんだ!? 何が起きた」

 叫んでいる間にも次々と味方が倒れていくのだ。さぞ恐ろしかろう。

「上に魔導士がいるぞ!」

「撃ち落とせ! 弓、何やってやがる」

 何人かの盗賊が矢を射かけるがかすりもしない。そして次々に倒されていく。人間とはもともと頭上からの攻撃には弱いものだ。


「よし、単体での運用は問題なし。次は同時にどれだけ攻撃できるか試してみるか」

 ユータは淡々と魔法の練習を行う。


(もう少しで騎士を全滅させられたのに!)

 盗賊の頭の思いはそれで一杯だった。この男は元々冒険者だったが盗賊に落ちた一人だ。この男は帝国の貴族を攫い王国に逃げるつもりだったのだ。もしかすると貴族に雇ってもらえるかもしれない、と希望を持ち、帝国貴族を襲いあと少しで、というところで邪魔が入ったのだ。その男の心中はユータに対する怒りでいっぱいだった。

「くそったれが!」

 この男の最後に見た光景はユータが100を超えるバレットを作り出したところまでだった。


「作り出すだけなら100でもいける。しかし誘導の付与が問題だな。同時に発射することができないとは……演算のレベルアップを待つしかないか」

 20人以上の盗賊を殺したがユータは冷静だった。ゲームのような感覚、といえばいいのだろうか。ユータには現実感というものがなかった。


(だいぶ逃げられたようだな。まあ良い、どうせまた集まるだろうからそこを叩けばいい)


「さて、騎士さんにも挨拶しておくか」

 ユータは貴族の場所に向かい、近づき過ぎて攻撃されないようある程度離れたところから声をかける。


「ケルンの冒険者ギルドから盗賊退治に派遣されたユータです。」

「私は護衛騎士隊の隊長、レイモンドだ。助太刀感謝する。我々だけでは危なかった」

「いえいえ、当然の事をしたまでですよ、それより倒れている騎士様の確認をしましょう。私は賢者ですので回復魔法が使えます、息があるのなら助けられるかもしれません」

「本当か! お前ら、急いで確認するんだ!」

 ユータの回復魔法で幾人かの騎士は助けられたが、大半は事切れていた。生存8名、3倍以上の盗賊と闘って生き残れたのだからこれでも多いほうだろう。ユータが来なければ全滅していたのだから。

 騎士たちの死体はレイモンドの願いでユータが収納していた。


「なぜ!? もっと早く来なかったのですか!」

 騎士たちの死体を収納し終わったユータに、少女の罵声が浴びせられた。ユータが声のしたほうを向くと金髪の少女が目に涙を溜めユータを睨みつけていた。恐らくは貴族の娘だろう。ユータは瞬時に膝を折っていた。


「お嬢様! おやめください!」

 侍女と思わしき女性が少女を制止するがとめきれなかった。

「あなたが! あと少し! 早くに来ていれば! 皆は死ぬことがなかったはず!」


 ユータには耳の痛い声だった。実際早々に参戦していれば多くの騎士が助かっただろう。しかし助けなかった、盗賊が現れた原因を考えたら騎士が死んだのはユータが原因である。

「申し訳ありません」

 ユータには謝ることしかできない。回復魔法の欄には蘇生魔法も有ったので一瞬蘇生してしまおうかと考えたが、思いとどまった。


「お嬢様! そのくらいにしてください。この者はお嬢様をお助けくださったのですよ」

 レイモンドも少女をなだめる。しかし少女は止まらなかった。

「ハルトマンもエリンも助かったかも知れないのに!」

「お嬢様! それは騎士に対する侮辱ですぞ! 彼らはお嬢様を守り死んだのです。彼らの死を辱めるおつもりかですか?」

 お嬢様の物言いにレイモンドの声が荒ぶる。騎士には騎士の矜持が有るのだろう。

「でも、でも……」

「良いのです。騎士の本懐は主を守るもの。彼らは本懐を遂げたのです。彼らを思うなら、一つお褒めの声でも彼らにかけてやってください」

「……わかりました」


 レイモンンドがお嬢様をなだめているあいだ。ユータは頭の中で必死に計算していた。

(貴族の娘は助かったが……騎士は大分死んだな。これは問題有りか無しか……)

 貴族の馬車が襲われた時点で実際は大問題である。お嬢様とやらが助かっても騎士の被害は甚大だ。ユータは保身を考え、ある決断をした。


「彼らを助けることができるかもしれません」


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