表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/19

第11話  魔法の改造 かーらーのー連行!

 魔法は威力や複雑な術式を仕込めばMP消費が上がり、必要処理能力も上がる、その逆もまたしかり。

 例えば火魔法なら応用で爆裂を付与したり、火球を大きくすれば必要MPが増え演算負荷も大きくなっていく。

 ユータが魔法を自分にとって使いやすいように効率化した結果はこうなる。


 スキャンを利用しヘッドアップディスプレイ(HUDハッド)による、HP・MPの可視化。

 HUDを利用した、目線による魔法の照準補正。


 魔法を目的別に特化。

 例えば、土魔法で対人用のバレットなら、銃弾をモチーフに大きさを小さく、速度を速くして殺傷力を上げる。

 魔物用なら、使用MPは増えるが大きさを大きく、速さをより速くするなど。


 魔法攻撃の誘導化。タイプとしては、

 スキャンを併用した魔法誘導 MP消費(特大)演算負荷(特大)命中率(超高)


 魔法に追尾術式を付与エンチャントするタイプ

 魔法に疑似的スキャン搭載型 MP消費(大)演算負荷(大)命中率(高)

 対象の魔力認識型      MP消費(中)演算負荷(小)命中率(中)

 対象の姿形認識型      MP消費(小)演算負荷(中)命中率(中)

 対象の熱源認識型      MP消費(小)演算負荷(小)命中率(低)

(攻撃力は付与される魔法に依存する)


 誘導型の使用MPは魔法誘導にかかるMPがプラスされるので燃費は悪いがそれに見合う性能にはなった。


 HUDハッドにHP・MPの表示はあればこれほど便利なものはない。常にMPの残量は把握したいものだ。あまりないとは思うがMP切れには注意したい。 

 目線による照準の補正は有るのとないのでは咄嗟の対応力に大きな差が生まれるだろう。従来の直線的な魔法は即応性に優れ、誘導式よりはMP消費も少ないので併用すればかなり便利だ。

 魔法の誘導化は通常の直線的な魔法より燃費は悪いが、魔法の命中率自体は飛躍的に向上した。

 状況に応じて使い分けることもできるし、MPの使用を厭わないなら複数付与することもできる。当然魔法の威力なども調節できる。


 残念ながら、スキャンを利用し、地形情報などをHUDに常時ミニマップとして表示するのは処理能力不足で不可能であった。

 演算のlevel up待ちだ。しかし、常時使用でなければ使用は可能だし、方向を絞ればかなりの距離まで認識できるようになったのは大きな成果だろう。

 スキャンを併用した魔法攻撃は止まっている目標ならかなり遠くからでも攻撃できるが、常時スキャンを使い続けられないので動く目標に当てるのは難しい。

 これは今後の課題とする。


 補足するとこれらの魔法はこの世界の賢者や魔導士でも使うことができる。スキャンを索敵に使うなんてことは賢者の常識だ。誘導方式などは、ほとんどの人がその概念を思いつかないだけで、知ってしまえば再現する事もあるいは可能だろう。もちろんこの世界でも似た魔法を使う者もいる。一部の研究者も研究をしている、日の目を見るのはまだまだ先だが。


 やりとげた感に包まれるユータ、どんな時にも対応できるようにするのは当然だとは思うが少し、いや、いささか趣味に走ってしまったと思うユータだった。いったい何と闘うつもりなのだろうか? 土魔法に爆裂など付与エンチャントするなど……空を飛ぶドラゴンとでも戦うつもりなのだろうか? 


 満足感に包まれていたユータだったが森の惨状を見て我に返った。自由に魔法が使えることが嬉しく、調子にのって風魔法のフライを使い空を飛びながら魔法を打ちまくったのだ。森林火災は起きてはいないが、森ははげ山と化していた。なにせ賢者のMPの三分の二も使い魔法の実験をおこなったのだ。上手く使えば森を消すことだってできただろう。火災が起きていないのは水魔法で消火したに過ぎない。


「どうしよう……」

 少し後悔するがやってしまったものは仕方がない。何か問題が起きても自分だとバレなければ問題などないのだ! 

 現在速やかに行う必要があるのは、この場からの離脱と自分がやったとバレないような偽装工作と考えるユータだった。 


「とりあえず大回りに迂回して都市に戻るか」

 適当に空の旅を楽しみつつ都市に戻るユータだった。


 都市ケルンに戻ってきたユータ、その顔は青ざめている。

 都市を囲む壁の上では兵士が厳しい顔をしながら都市の周りを監視していた。都市の中では人々の顔が不安に満ちている。

 現在都市ケルンは戦時体制に移行しつつあった。


 最初は小競り合いの続いていたズッファ王国と開戦でもしたのかと思ったが、ギルドに向かう途中人々から聞こえてくる噂話を聞くにつれ、違うという事が分かった。


 曰く、都市近郊の森に未確認の魔獣が現れたらしい。

 曰く、森が吹き飛ばされたらしい。

 曰く、その魔獣がケルンに向かっているらしい。

 などであった。


(絶対俺のことだよね!)

 最初は何を言っているかいまいちピンと来なかったが、聞いていく内に自分のことだと分かりユータの顔は青ざめていった。


(逃げるか? でもどこに……?)

 内心で都市からの脱出を考えるユータだったが、気づいた時には冒険者ギルドの前にいた。ギルドの中からは怒号が響いている。とてもじゃないが入りたくなかった。

(とりあえず離れよう)

 冒険者ギルドから距離をとろうとするユータ、しかし一歩遅かったようだ。


「ユータさん! 今ギルドでは上級職の方を集めています、入ってください!」

 イヌミミの受付嬢さんに見つかった。有無を言わせない態度で中に引き込まれてしまう。


「賢者のユータさんが来られました!」


 中で陣頭指揮を執っているのは副ギルマスのサーシャさんだった。

「よく来てくれたね、賢者がいるのはとても心強い。そういえば君は都市の外に出ていただろう? 未確認の魔物について何か知らないかい?」

「いえ、何も知りません」

 つい嘘をついてしまった。だがこれはある意味仕方ないだろう。

 皆さんが警戒している者は俺のことです、なんて言えるはずがない。

 歴戦の冒険者に袋叩きにされるのは何としても避けたかった。


(そういえばサーシャさんは嘘が見分けられたんだよな?)

 しまった、と思った時には時すでに遅し。サーシャの耳がピクリと動く。嘘を聞き分けられる審問官という職は一番のチートではないか? と思うユータだった。

 しゃべっても、黙秘しても黒だとバレる。しかしユータのしたことは犯罪ではないはずだ。この国の法で魔法実験をしてはいけないとは決まっていない。ならば黒ではない、グレーなら無罪。

 都市の入り口の水晶も反応しなかったし……と自分をごまかす。


「そうかい、些細なことでもいいから気づいたことを聞かせて欲しいな、ここは少し騒がしいので上に行こうか。ギルドに集まった冒険者は全員この場で待機!」

 毅然とした態度で冒険者に指示を出す。


「じゃあ上に行こうか、今ミーティングスペースは埋まっているから私の部屋に行こう」

 有無を言わさず引っ張っていくサーシャ。美人エルフの部屋なら是非とも行きたいが、青筋を浮かべたエルフの部屋は勘弁して欲しい。


 できれば俺もこの場に残りたいのですが……ダメですかね?

 ものすっごく怖いんですが。行きたくないです。ダメ? そうですか……。


 こうしてドナドナされるユータだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ