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broken pieces  作者: 波丸
プロローグ
7/8

日常の亀裂

またまた現実逃避に走る作者です。

 今日、陽兄は早めに帰って来ると言っていた。つまり、先ほど聞いた話についてたくさん問い詰めることが出来る。


 今まで全然話してくれなかったことを、突然聞かされて、しかもそれが有名なことで。兄妹なのに、私よりも他人の方がよく知っていて。


 そんなこと、私が傷つくに決まってるじゃんか。



「花ちゃん、かーえりーましょ!」


 『K』について一通り聞いた後は、また私のことで質問攻めになった。だから、再び左に流してみたところ、バレてからかわれる、とね。


 センセー、私やっぱりもういじられキャラになってませんか。


 そんなこんなで美音たちと他愛もない話をしたあと、私は席の離れてしまった花の元へ向かった。


「テンション高い離れて」


 と、私の熱烈な行動に花は相変わらずの冷たい反応だ。抱きついただけなのに、あの目……。本当に、私をもう少し労わってよね。毎日こんなに愛を示す彼女なんて最近は珍しいんだよ。絶滅危惧種の可能性だってあるんだから。


 なんて花に反抗して抱きつく力を強くする仕草をすれば、余計に私たちの周りに吹雪のようなものが起こった気がした。


「ふぁぁい」


 ここは大人しく花様の言う通りにしよう。うん、命は大事だよ皆。時にはおふざけは命をかけるんだから。


 肩を落とす私とは別に、昔から背筋の良い花はカバンを持ち席を立つと、何かを思い出したようにこちらへ視線を向ける。


 ていうかさっきまでの会話で1回も目が合ってなかったことに気がついた。え、悲しい。


「ごめん、私用事があるから先に下で待っててくれる?」


 それは別に構わないけど……。


「用事?どこ行くの?」


「職員室よ」


 あっさりと花が答えたその場所は、初日から行くには珍しい所だった。入学前の宿題は各教科の初授業の日だし、提出する手紙なども今日配られたから、わざわざ渡すものなんて無いはずなのだが。


 理由が浮かばないので首をかしげて考えてみるけど、心当たりも全然無いわけで。でも、私の質問に花は答えようとはしなかった。私の目を見たまま、私の答えを待っているのかもしれない。むしろ、この無言は壁なのかもしれないけど。なんか、確証の無いことばかり考えてるよね。


 その確証のないことが、やっぱり確証もないのに違和感を感じさせた。


 私は「下で待っていて」という花の提案には頷かずに、きゅ、と花の腕を掴んだ。別にこれといった理由はない。ただ、何となくでの行動だった。だから、抱きついた時とは違う、すぐにでも振り解けるくらいの力で掴んだ。


 花はピクリと反応して視線を私の手に向けると、何か思ったのかそのまま私の目をじっと見つめて。


 クスリ。


 不安な私の心を侮蔑するかのように、花は綺麗に微笑んだ。


「……ついてくる?」


 確かに弱い力なのに、今も私の手が暖かさを感じて掴めているのは、やっぱり花の心が優しいからなんだろうなぁ。すぐにでも離せる手をそのままにしている事を、花は気づいていないんだろう。思わず頬が緩んでしまうけど、ここでにやけたら振り払われそうだからがんばって耐えないとね!


「勿論。私は花のストーカーだもん」


 一途だからね、私。


「警察呼ぼうかしら」


「冗談だからスマホしまおうか!?それ位好きって意味だからね!」


 代わりに言葉で気持ちを表したら、振りほどかれるどころか掴むことすら出来なりそうになった。その感じはマジですよね花さんや。だって普段なら連絡便利グッズのスマホが怖いもん。ポケットからわざとチラつく可愛いスマホが、今や凶器に見えるのですが。


 それにしても、と花は私から目を逸らして未だに男子と話している美音達を見る。


「初日なのに随分仲良くなれたみたいね」


 独り言のように小さな声だった。私も近くにいてもギリギリ聞こえたから、きっと周りがもう少しでも騒がしかったら聞こえなかっただろう。それにどう返そうかと考えようとすると、手から温もりが消えた。私の手が掴んでいた花は、あっさりと私の手をすり抜けて廊下へと歩き出したため、私は考える暇もなくほとんど空のスクールバッグを肩にかけてその後を追った。


 花ってば、相変わらず歩くのが速い!


 ここで分かってもらいたいのは、本当に花は歩くスピードが速いということだよ。決っっっっして、私よりも花の方が脚が長いとかそういう訳じゃないんだよ。


 やっと追いついたと思ったら、息が少し苦しくなった。運動が通学以外皆無の私にとってはこの数メートルすらもハードなのだ。これに関しては、きっとどの帰宅部の方々もそうだと思う。


 息を整えながら、黙って進む花を見て、先程の呟きの答えを考える。


 仲が良くなった、だっけ。


「仲良くっていうか、知り合った、かな?私的には、もう同じクラスに花がいるってだけでじゅうぶんだしねぇ」


 初日から仲良くなるなんて無理だと思う。認められたかも、と思うところはあるけど、あの3人と友達になったのかと言われると、まだたった何十分かだけの会話で決められるわけないしね。仲良くなりたいとは思ったけど。


 というか、こっちを見てほしいのですが。


 にこにこ見つめて答えたのに、花はこちらを見ずに職員室へ足を進めるだけ。あ、でも耳赤いかな。


「あ、そ」


 ……ん?おやおや?


「て、てれてる?」


「そりゃ照れるわよ!」


 反論されるかと思いきや、まさかの即答。やっとこちらを向いた花の顔は耳りよはましだけど、ほんのり桜色だ。


「……って、美希の側が……く」


 キッと睨まれたかと思うとすぐに下を向かれたため、2度目の独り言は途切れ途切れに聞こえた。肝心なところだけ聞き取れなくて、焦れったい。


「なに。なんて言ったの?」


「知らない。ほら、行くならはやく行くわよ」


「えちょ、早いってばぁ〜!」


 か、可愛い。花火ちゃん可愛いすぎて私がある意味辛いんですが。

 やばい、花火誘拐しそうだ。


「でも、なんで職員室?」


 先程思った疑問を聞いてみると、花は少し唇を動かしたかと思うと、どこか無理をしているように笑った。


「提出するものがあるの」


 ふーん。なんか出し忘れたとかかな。


 とか、純粋に思えたら楽なんだろうに。残念ながら、私は純粋でも天然でも何でもない、むしろ感がいい方の人間だ。何となく何かあったことを察してしまう自分に、少し嫌気がさす。


 だからと言って、言いたくないことの詮索は良くないので、その疑いは心の中に封じておことにした。


「あ、そうだ花はこのあと予定ある?」


「?特には」


 なら丁度いいや。


 陽兄は早く帰るって言ってたけど、どうせ陽兄の中の早くは18時頃だもん。いつも一緒に夜ご飯も食べてないんだから。


「じゃあさ、お昼食べて帰ろーよ!青葉さんのところで」


 急な話題変換に少し驚かれたけど、私はシリアスっぽい空気が嫌いだから、気にせずに何気ない話題に切り替えた。


 そんな私にこてん、と首をかしげながら賛同した花は私の顔を下からのぞき込む。それに伴って艶のある黒髪もさらり、揺れた。


 か、可愛すぎ。というか綺麗すぎ。これぞ和風美人。


 それに、花は無意識なんだろうけど、その表情で上目遣いは反則だよね!?


「いいよ。たしかに、最近寄ってないものね」


 私の心の中の声を全く気にもせず、さっきよりも軽い笑顔を浮かべて前を見ていた。その笑顔が反則級だって、親友としてもうそろそろ気づいて欲しいよ。


「ま、どうせ陽介さんが帰ってくなくて寂しんでしょ」


「ぎくっ」


 バサッ、と職員室の前に豪快に荷物を下ろしながら、花はため息をついた。なんでもお見通しとでも言うような視線をこちらに向けながら。


 そして、あからさまに声に出してしまった私。もう認めているようなものだ。


 そんな私を軽く無視して、花はある書類を片手に職員室の扉の前に立った。話に夢中で、どうやらいつの間にか目的地に着いていたようだ。入学式初日でこの部屋に近寄る人など私たち以外そうそういないのか、辺りは人気がなく、私たちの声が嫌でも響いた。


「少し長くなるかもだから、此処で待ってて」


 だから、そんな花の声はもちろん響いて。


 綺麗な高すぎない声は、何か不思議な余韻を残して扉の奥へと消えた。


「どこのお店行こーかなぁ」


 花は確か、パンが好きだって言ってたっけか。


 そんな花との温かい日を過ごしている私はしらなかった。


「おい天野、これは」


「別に、そういう報告なだけです。危害は加えないようにするんで」


 親友と言う大切な関係故の脆さも。


「おい、お前千堂だっけ」


「なに」


「そんな睨むなよ。俺はただ、頼まれたんだよアイツに」


「は、あいつって……て、ちょっと!アンタ誰よ。てか離して、っどこ行くのよ!」


「いーからいーから、ついてこいって。



 ーーーーーー我らが怜様のご指名だ」


 これからの日常を壊すような事がクラスの片隅であったことも、知らなかったんだ。


適当さがますこの話をどうやって丁寧にしようか考え中です。そして、そろそろ入学式の奴らも出させよーかなぁ、なんてね。

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