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broken pieces  作者: 波丸
プロローグ
2/8

入学式(前編)

 ここは本当に学校ですか。


 入学式の20分前に無事学校についた私と花は、その式の会場である体育館へと足を運んだ。



 もう一度言おう。ここは本当に学校かっ!?



「何うろたえてるのよ」


「だっ、だだだだって!周りみんなcolorful頭なんだよ!?」


 黒髪なんてほんの一部だけ。多いのが茶色だけど、金髪はもちろん中には赤や青や灰色やらもいる。入学式だって言うのに制服をまともに来ている人なんていない。それでも皆センスがいいから、別に悪くは無いんだけど。いや、ギャル系女子のあのメイクはどうかと思うけども。

 こんな高校生がいるなんて、世界は狭いね。私は花の黒髪が落ち着くよ。

 なんて、花の方に手をやると、ギロりという効果音が出そうなほど睨まれた。え、怖いよ。


「痛い肩掴まないで。あと、その無駄にいい英語の発音なんなのよ。その流れなら頭も『hair』って言いなさいよ」


「今更こんなヘアカラーで騒ぐこともないでしょ。この学校、ヤンチャで有名なんだから」


「花ってば冷静!」


「あんたがうるさすぎてあきれてるの」


 そんなこと言わなくても、悲しいなぁ。


 それにしても、陽兄よくこんな中で3年生になれたな。私なら無理。絶対怖いよ。


 噂に聞く限り、陽兄は学校の中だとかなり上位の位置にいるみたいだけど。


「ねぇねぇ、花さんや」



 あ、この目はウザがっている時にするやつだ。ちょっと怖い。

 花はそんな私を呆れ顔で見たあと、次に私がしがみついている花の腕に視線を落とす。

 気づいた時には、私は花の腕を縋るように握っていた。それはまぁ、自分でも申し訳ないほどに強く。もちろんわざとなどではない。今は、この荒れた学校の現状を目の当たりにして、制御できないのだ。

 それに、今の私はなにか話してないと怖くて家に帰りそうなんだよね。もう衝動的にバーンて。


 とりあえず、思っていたことを話が続くように口に出す。


「この人たち、皆1年生だよね。女の子とか、化粧濃すぎない?」


「ギャルはそんなもんよ。将来よりも今を取ってるんでしょう」


「だ、男子もガン飛ばしてるよ?」


「周りに下だと思われたらこの学校では終わりだもの」


「ふ、不安だ、なぁ」


「今更何言ってるのよ」


「……な、なんでそんな花は冷静なのさっ」


「同じことを二度言うのはめんどくさい」


「あ、え、はなぁ! 待ってよぉぉぉ」


 結論。








 花と話が続かない。


 え、私がヘタレ? めんどくさい?


 それが何か。


 え、自分で受験したんだろうって?


 ええ、そうですが。そうだけどさ!


 兄に勧められて適当に滑り止めにしただけです!あの頃は第一志望校に受かる予定だったんです!


 まさか今回、私の苦手な社会と国語の難易度だけ上がるとは思ってなかったの!


 受付で名前を言うと、ハッとした様子で見られた。


「えっと、篠村、さんですね。クラスと出席番号を確認して、舞台前の椅子に座って待機してい下さい」


 この先輩は優しそう。化粧も濃くないし、この学校の全生徒がイケイケな感じでもないみたいだな。というか、美人だなぁ。清楚系って言うのかな。目立った感じじゃないのに、あの先輩には華がある。


 なんか、初めてあった時の花の感じに似てるかも。まぁ、花は一匹狼感やばかったけどね。

 


 ここかな。


 そう思い、先程渡された紙にもう一度目を向ける。うん、あってるみたい。初日から間違えたら恥ずかしいもんね。周りにも迷惑かけるし、何しろ目立つよね。


 目立つのは、避けたいからな。







 まだ開始まで暫くあるので、席に座り適当に周りを確認する。兄いわく、この学校の教室の席は男女関係なく出席番号順だそうだ。つめり、ここで横に並んだ人が私の近くの席になることになる。出来ればかわいい女の子が良いな。話しやすくて、優しそうな……そうそう、あの受付の先輩のような人。


 ああ、うちのクラスにもあんな子いないかなぁ、なんて自慢の妄想力を働かせてみた。ついでに、確認してみようかなぁー……やめよう。大変なことに気づいたかもしれない。




 まともに自分の席座ってるの、私くらいじゃね?





 え、だって、みんな普通に話してるし。なんか初対面感ないし。あ、一部カッコつけたヤツらとかはノーカウントね。論外。


 マジかー、花のところ行きたいなぁ。


「あの人達いるかなぁ!?」


 花をみつけようとした時、後ろに座る女の子たちの声が耳に入った。昔から地獄耳なんでね。別に聞きたい訳じゃないんだよ。


 その周りの女子達からはどこが残念な声が聞こえた。


「んー。やっぱり、いないね」


「会いたかったなぁ、Kの皆様に」


「私一昨日街で怜様見かけたよ」


「うそっ!?羨ましい!」


 ゆうめいじんだなぁ、その人たち。


 まぁ?Kが何かは詳しくは知らないけど、この学校の有名人って言う枠のひとりは私の知る人だけど。ていうか兄だけど。もしかして陽兄も様付されてるのかなぁ。あの人、差別的なこと大嫌いなんだけど。そもそも、昔はただのゲームオタクだったはずなのに。


 人生ってほんと何が起こるかわかんないんだね。恐ろしい。


 兄はともかく、同じ高校生なのに様付なんかしちゃって、変なの。そのKって言う人たちは相当この学校ではお偉いさん達らしい。花ちゃんも、私がこの学校を滑りとって言った時に、


『え、本当に言ってるの?まさか、Kねら……ってはないよね。陽介さんの妹なのに美希そのへんの話だけは疎いからね』


なんて事言ってた気がする。


 せめて『先輩』とかならありだけどさ。そのKとかいう人たち変人だよね。私だったらそんなの恥ずかしすぎるもん。へ、今どき様とかやめてよw、的な。


 それにしてもまだ始まんないのかな。不良高校にしては入学式サボらずに結構時間内に来てる。かなり集まってきたし、そろそろ始まってもいいんじゃないかな。


 ふとそう思い、舞台の横についている少し古い時計を見ると、開始時刻まであと1、2分という所だろうか。


 周りがずっと騒がしいので気が付かなかった。それに、ここには新入生と先生しかいない。そう、ここには親がいない。多分だけど、不良高校だから親がそこまで子供に興味が無いとか、危ないからあまり来ることをオススメしていないとか、そういった所だろう。


 本当にここは治安が悪いらしいから。



「静かにしろ」



 時間になろうというときでも、騒がしかった体育館内に、一瞬にして沈黙が走った。そして、生徒達は一斉に舞台を見上げ、そこに立つ男を見てさらに唖然としたようだった。


 そのマイク越しの、あの舞台に立つ男の声で、ざわめきが一瞬にしてかき消されたのだ。


 それと同時に、動きすらもまともに出ていなかったことに気付き、私は反射的に教師であろう男を見ていた目を見開いく。


 誰も、話そうとしない。と言うよりかは、動けないし、話せないんだ。


 それほどの、圧力。


 何この、殺気。何この人。私がまだそれに敏感っていうのもなんか嫌だけど、そもそもおかしいでしょ。こんなの生徒に向けるようなもんじゃないし、教師が放つもんでもない。


 それに、この生徒達の目は何だ。


 怯えだけじゃない。


「……尊敬?」


 こんな明らかに異常な男に、尊敬?


 有り得ない。


「これより、第48回入学式を開式する。」


 その男は、私たち生徒の姿を一瞥し、淡々とそう告げた。


 どうやら彼のセリフはそれだけらしく、すぐに舞台を降りてしまったけど。このパターン、もしや閉式の言葉も彼かもしれない。


 えー、こんな人学校にいていいんですか、総理。捕まえてください。せめて教員免許持たせちゃいけませんよ。天才なら認めるけど。てか天才なら研究所行ってくれないかな。


「おい、あの人って『長塚さん』だよなっ?」


「びっくりしたよ。まさかほんとに教師だとは。噂だとばかり思ってた」


「この学校やばくね」


「今更なにいってんの。お前この学校入りたがってたのに」


「いや、でもあれ見るとビビるだろ」


「それ口に出すとヘタレ感出るよ。せっかく見た目誤魔化してんだから」


 なんか情報ないかな、なんて周りの小声を聞き取っていたら聞こえたそれ。お隣の男子ズの会話が、なんか私と花のように思えたのは気のせいかな。何気、優しそうな方面倒くさそうに会話流してる感じするんですけど。金パの方の気持ちわかるんですけど、私。

 傍から見たら怖いのは金パだけど、本性黒いのはもうひとりの方だな。


 人は見た目じゃないよ!みんな!


 でもそうか。あの人もやっぱり有名人か。それだと納得かな。教師だとは正直思いたくないけど。


 きっと20代であろう彼は、黒髪をきちんとセットして、ちゃんとスーツも着ていた。崩したりは決してしていない。真顔で恐怖心がかったから、あの時はただ警戒してたけど、顔も確かに整っていた。

 見た目で判断しない、なんて言ったけど。


「かっこよかった、な」


 誰にも気づかれないように、つぶやいた。





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