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R9 屋上フリーマーケット

 月に2度、屋上ではフリーマーケットが開かれる。

学校関係者であればだれでも参加でき、また売り物にも制限がないため、闇市として大変評判が良いのだ。




 「きみ、これは本当に枢機卿の下着なのか?」


 ニッチ業界に特化した卒業生が、世界各国の要人の下着を売っている。なんでもありなのがフリーマーケットの醍醐味なのだ。


 「ええ、本物ですよ。下着泥棒として国際指名手配を受けている私の名前が証明しましょう」


 「あ、あなたが伝説の!」


 「私がここで出店していることは秘密ですよ?」


 下着泥棒はウインクをすると同時に、いつの間にかかすめ盗っていた男客の下着を返した。これには思わず男客も頬を染め、どうりで開放感があると思った…、と呟いた。そしていつの間にかすべての下着を買い占めていた。





 「あの、これはいったいどんな物なのですか?」


 国語教師が販売しているのは小さな石と砂の小瓶である。


 「これは昨日宇宙会議に出席した折、連邦軍が撃ってきたレーザー光線を圧縮して炭化させたものです」


 「あぶない」


 「君はかわいいから、ひとりで夜道を歩くとき、後をつけられていると感じたらこれを投げると良い。一瞬で消滅するよ」


 「ぜったい近隣一体も消滅しますよね」


 国語教師は無言でウインクした。女客は頬を染めて小石を買った。


 「この砂は何の砂ですか?」


 「これは甲子園の砂だね」


 「平凡」


 「うん、売れなかったらグラウンドにまくよ」


 国語教師は微笑んだ。女客は頬を染めて砂の小瓶を買い占めた。






 「待ってこれって本物?」


 並べられた写真には臓器っぽいものが写っており、法外な値段が書かれている。


 「もちろんですとも!この業界は新鮮が命!あんまり新鮮じゃないのはこちらの見切り品になりますね」


 バイヤーはセール中と書かれた箱を取り出し、写真を見せた。全体的にちょっと黒ずんでいる。


 「売って大丈夫なの?」


 「おやおや、需要があるから供給するんです。それがこのフリーマーケットなんですよ」


 バイヤーはニコニコ笑っている。女生徒は微笑んでそっと離れ、国語教師から小石を買った。


 

 その日の深夜、S県の一部が消滅したが、たまたま居合わせた女生徒は「臓器を守るためには必要な犠牲だったから」と証言した。




 



「俺に肉体があればプーチンの下着が買えたのに」

「ガチさん…お金もないと買えませんよ」

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