R7 屋上面談
国語教師が人造人間に改造されてから5日経った。
謎の研究所から脱出し、自宅のアパートへ戻れば火事で焼失していた。仕方ないので高校の仮眠室に一時的に避難させてもらったところ、力が覚醒した。
閉所恐怖症ならぬ閉所型覚醒人造人間だったのだ。
「それでは三者面談をはじめます。本日は教室が諸事情のため使用できないため、屋上にて行わさせて頂きます。よろしくお願いいたします」
「やだわあ、先生、人造人間になったんですって?」
「母ちゃん、適当なこというなよ!」
「ああ、そういえばスイハンジャーでご活躍してらっしゃいますよね。僕の情報はどれくらい出回っているんでしょうか」
国語教師はこの5日間ですっかり頬はこけ、視力が10.0になり、持病の神経痛もなくなったため、なんだかちょっとイケていた。
「マッディー研究所が爆発して、被験者の先生が学校の屋上で寝起きしてるくらいかしら」
「何それ!何それ!先生本当?!」
代理教師と言えど担任が人造人間とくれば、興奮しない男子はいないのだ。
「この前仮眠室が爆発しただろ、あれは先生がやった」
「あれ校長の寝たばこが原因じゃなかったの!?」
「人造人間にかかれば、ねつ造なんてちょちょいのちょいだぞ」
ガチさんも、ただひたすら無言で国語教師を見つめるばかりだ。体中にお札が貼られているので下半身に張りつくことができず、ガン見である。
「先生はね、人造人間になってからまだ数日なのに、侵略してきた宇宙人をホテルに誘い込んでは始末したのよ」
スイハンジャー鍋担当こと蛍光イエローは、あの惚れ惚れするお手並みに長官も感心してたわあ、とうっとり瞳を閉じた。
「スゲー!あのラブホ街大爆発事件って先生なんだー!スゲー!!」
もてない男の救世主を前にして、男子は大興奮している。
「まあ僕のことはこの辺で。それで進路についてですが」
「俺おれ!俺も人造人間になってイケてる影を背負って闇に生きたい!」
「僕を参考にするより、お母さんを参考にすると良いよ。どういった経緯で主婦戦隊スイハンジャーとしてご活躍を?」
蛍光イエローは照れたように手を振った。
「私はほら、折り込み広告よお。パートで募集してたの」
「パート」
「ちゃんと扶養の範囲内での活動よお」
「103万以下の戦隊」
斬新だなあ、と国語教師は感心した。
「お母さんのように家庭に入ってから隊員になる者もいれば、僕のように無理やり人造人間にされる者もいる。だから今はたくさんの知識を身につける時期なんだよ。だから君にはマッディー大学をお勧めする。ここの大学は最高なんだ。世界最先端と言っても過言じゃない。マッディー大学でマッドな研究!マーッドマッドマッディ研究所ー」
突然歌い出した国語教師に、隅っこで漫画を読んでいた屋上係は10円玉を差し出した。
「先生、これで校長の車を傷つけておいでなさい。きっと気が静まります」
国語教師は歌いながら頷き、屋上から駐車場目がけて飛び降り、校長の車の周りをひたすらクルクル走り回っている。
「すっげー!母ちゃん見た!?屋上から飛び降りてそのまま走ってんの!」
「さすがねえ、でもあの歌はダサいわあ」
「先生、家賃は気にしないでください。校長から取り立て済みです」
「マッドマッドー」




