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R15 屋上撮影

 T高校の映画研究部といえば、盗撮で実刑を受けた元顧問ではなく、いつもアホなことばかりする部長が有名だ。最近では二言目には『ドローンは夢の機械』しか言わない。


 「屋上を舞台にした映画を撮りたいんだ」


 部長が屋上係相手に交渉している。


 「はあ。どんな内容になるかお聞きしても?」


 「よくぞ聞いてくれた!登場人物は生徒二人。二人は親友で幼馴染。いつかは官僚となり、国を支える国士となろうと誓い合った入学式の日を思い返しながら、卒業式を抜け出して屋上へやってくるんだ」


 いつの間にか、映画研究部の2人が屋上の柵に寄りかかって青空を見ている。


 「覚えているか」


 「入学式の誓いだろ」


 なんか演技がはじまった。


 「あのころは俺たちも真っすぐだったよなあ」


 「馬鹿野郎、お前はまだ真っすぐだよ」


 「へっ、真っすぐすぎて、空も突き破っちまった」


 二人のまわりをカメラが囲む。


 「なんで、こんなに離れてしまったんだろう」


 「離れてねえさ、お前が親友だと思ってくれる限り、俺たちはずっと一緒だ」


 「ひどいなあ。最後までカッコいいなんて卑怯だよ」


 生徒は学ランを脱ぎ捨て、腹に巻いた爆弾を見せた。


 「お前なにを」


 「守れない約束なら、最初からするべきじゃないんだよ!」


 靴底でマッチを擦り、導火線に火をつけようとしたその時、屋上の入り口が乱暴に開かれ、


 「ガチさんはいらっしゃるかあ!」


 牧師の息子が眉間に皺をよせ、仁王立ちしていた。


 「あの、いま撮影中なんで」


 部員がそっと留めようするのを無視し、牧師の息子はガチさんが祀られている簡易鳥居の元へ足早に歩く。

途中カメラの前を競歩で横切り、その風圧で爆弾少年のマッチは消えたが、部長は無言でそのまま続けるように指示している。


 「お前と一緒ならなんでもできた!でも…ひどいじゃないか……一人で勝手にうちゅ」


 「ガチさん、いや、ガチ大明神様!!まっことにありがとうございます!!」


 「…まないとおもっている」 


 牧師の息子はすべての声を覆い尽くす大声で、鳥居の前に跪き、土下座をした。


 「……えのためなら…」


 「貴方様のご加護のおかげでえ!わたしは!わたしの尻はー!痔から解放されましたあ!!」


 「…しか……いき…ろ」


 「何度手術をし、何度神に祈りを捧げても完治することなく私に襲いかかる切れ痔とイボ痔の二重奏に!私は、私は!尻に悪魔を宿した呪われし身として一生を生きていくしかないと諦めておりましたあ!!」


 「…………」


 「しかし貴方様がお祀りになられ、神々に尻穴を守護すると誓ってくださったそのときからあ!私の尻は祝福に満ちております!!」


 牧師の息子は号泣している。その魂の叫びに、部員たちも息をのみ、涙した。



 後日、映画研究部は牧師の息子の尻穴を追ったドキュメンタリー『奇跡のシリアナ』を撮り、医療界を激震させたのは別の話である。

 


 

「勝手ながら氏子とさせて頂きます」

「尻穴は守られるけど、股間も守られるから一生童貞になるよ?」

「ふっ、そんなこと…。痔の二重奏で勃起不全の私には何ら問題ありません。童貞は神の祝福ですよ」

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