R14 屋上昼休み2
昼休みの屋上は、弁当組が大挙して押し寄せる。
屋上係は軽くつまめるお菓子や飲み物を、屋上の隅っこで販売している。
「昨日はごめんねえ~」
「いやあ吃驚したけど、良い経験させてもらったよー」
「あの後、教室大丈夫だった?」
「動物園みたいになって最高に面白かった!」
「まじか」
「いきなり教室にイケメン6人組が閃光と共に現れて、土下座して『結婚してください』だよ?そら興奮もするよ」
「あいつら土下座したの!?」
「ずっと土下座してるから人違いに気づかなくてさあ、こっちも空気に流されて『全員まとめて面倒みてやるよ』って言っちゃって」
「なにやってんの!?」
「こんな経験一生ないかなって。でもすぐに神社の娘がビンタしてくれて我に返ったよ」
「あの子意外と常識人だもんねー」
「うん、危うく6人のヒモを養うとこだった」
「あいつら本当に顔だけだからなあ」
「それでどうすんの?誰かと結婚すんの?異世界行っちゃう系??」
「あー、ねー、しないんじゃないかなー。つーかして欲しくないっていうかー」
「なんで他人事」
「ん?あ、違うよ、私じゃないよ相手」
「え、違うの?あ、弟!?ビーエルなの!?」
「違うよ!ママだよ!」
「おばさん何してんの」
「ママ、異世界救ったじゃん?そしたらやっぱり群がってくるわけ。で、1年間の滞在って決まってるから、ママも『侍らせるものは侍らすわ』って老いも若きも侍らせ放題でさあ」
「すごくね?おばさんすごくね?」
「もーねー、娘だから多少おこぼれあるかなーって思ったら、デッドアンドデッドの日々でさあ」
「なにそれこわい」
「いやもう『いっそ私があなたであれば…』って毒飲まされたあたりで、怖くなって出奔してさー」
「こわっ!なにそれこわっ!」
「水色の髪したやついたじゃん、あいつだよ犯人」
「あいつか!なに切ない目してこの世界に来てるんだって話じゃん!」
「だよねー!身の程を弁えろっていうかー!」
「えー、じゃあ異世界の旅は結構過酷な感じだった系?」
「応接室に置いてある熊の剥製を作ったのは私です」
「そこまで」
「ええ」
「あちらでは竜殺しとして名を馳せました」
「竜殺し」
「はい」
「それでは竜殺し殿に、このから揚げを授けましょう」
「有り難き幸せ」
女生徒たちはケタケタ笑いながらおかずを交換している。
屋上係は眠そうな顔をして「ヒマだなあ」と呟いた。
「やっぱり急に異世界の人たちくると怖いから返」
「私たちの友情は一生だよ」
「おまえ」
「ズッ友だよ」




