R13 屋上奉納
神社の娘が、ガチさんを屋上に蹴り飛ばして連れてきた。
「なんかあ、やっぱりウザいんでえ、ここに置かせてね~」
軽いノリが身上の神社の娘は、簡易鳥居を屋上に置き、ジップロックに入れた柔道部員のパンツを依代にして、適当な祝詞を挙げてガチさんを奉納した。
「もしかして、幽霊から神様にグレードアップしてません?」
屋上係は面倒そうに聞いた。
「あ~どうだろうね~。それっぽい祝詞あげたけどお、どうなるかは今後の活躍次第?みたいな?」
「いやでもガチさんの恰好がスーツから袴になってますけど」
「形から入るタイプじゃね?」
悟った顔をしてこちらを見てくるガチさんを見て、屋上係と神社の娘は舌打ちした。その後、お札の収益と今後のお札についての契約を交わし合い、社の建設やお守り・お賽銭、お神籤についての話し合いがはじまった。
「うわ、ガチさん戻ってきたの」
国語教師が宇宙空間から帰還し、嫌そうにガチさんを見つめた。
「ふふ、今までの僕と同じだと思わないで下さい。T高校の屋上に坐す活明神とは我のこと成り」
雷が柔道部員のパンツを貫いた。
「調子に乗るから」
「手間かけさすなよクズが。恐みも白してごめんなさ~い、高天原に坐し坐して~」
神社の娘が適当な祝詞をあげているが、雷はさらに屋上に振り注ぐ。
「あー、やっぱり昨日お風呂入ってないからダメだわあ」
神社の娘が年頃の娘としてダメな発言をしたところ、雷に撃たれて吹っ飛んだ。
「痛いんですけど」
「なんでそれで済むのか不思議」
思わずつぶやいた国語教師はハッとしたように、自分が全裸じゃなきゃ生徒を守れるんだけどね、さすがに全裸で神社の娘を庇うとか懲戒免職だよね、となぜか早口で言い訳をしている。
「ほら、ガチさん、ここは表明すれば良いんですよ。自分が神様になったら何をしたいか」
屋上係はガチさんを唆す。
「それ間違ったら僕消滅しちゃうパターン」
「さあガチさんによるアピールタイムです!何卒ご清聴くださーい!」
雷が止み、重々しく神々しい空気が屋上を支配した。
しれっとした顔の屋上係と、スマホで猫をあつめている神社の娘と、お茶を入れ始めた国語教師を絶望的に見つめた後、ガチさんは宣言した。
「僕が神様になったら、T高校の男子生徒の股間と尻穴を守ることを誓います!」
その日、T高校の屋上に丸い虹がかかったと同時に、ガチさんの「よっしゃあああ!」という魂の叫び声が響き渡った。
「いま柔道部員がノーパンで過ごしてると思うと、僕の心は人類愛に満ちてくる」
「こんな穢れに満ちた神様が居て良いのか」




