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R11 屋上メガネ合戦

 「伊達メガネを殺そう」


 図書委員長は屋上に吹く風を真正面から受けながら、重々しく宣言した。


 「ぼくはね、伊達メガネだってメガネだと思っていた。大切な仲間だと。でももう無理だ。コンタクトを装着した後、伊達メガネをかける。このような蛮行がこれまであっただろうか。これは全メガネに対する宣戦布告である。これより我らは修羅となり、伊達メガネをかけてインテリを気取り、あえて外すファッションをし、はてにはメガネをかけてないとモテてしまって仕方ない、いやあメガネって最高の盾ですわと照れ笑いした3年4組の図書委員を地獄へ叩き落とすのだ!」


 T高校のすべてのメガネ男子が鬨の声をあげた。



 「サングラスを撲滅しましょう」


 風紀委員は屋上に吹く風を横から受けながら、粛々と宣言した。


 「医療機器であったサングラスを撲滅する、なんと罪深きことか。しかし我らはやらねばなりません。眩しくって目が痛いんだもおんと虫のようなサングラスをこれ見よがしにかけ、果ては薄暗い照明の隠れ家的バルでサングラスかけたままワインを傾ける勘違い美術教師を撲殺するのです。日差しの眩しさが耐えられない?涙で腫らした目を隠すため?笑止!ならば太陽を拝む資格なし!黄泉隠れのお手伝いをいたしましょう!」


 T高校のすべてのメガネ女子が鬨の声をあげた。


 「それならいっそコンタクトレンズを消滅させれば、メガネへの愛を取り戻すんじゃないかな」


 国語教師は右手を軽くあげ、発言する。


 「悪魔に耳を貸すな」


 「決して彼の顔を見てはいけません」


 図書委員長と風紀委員はすぐに、国語教師という悪魔を追い払おうとした。


 「彼はレーシックなる呪術の高位術、全身改造を受けた呪われし者」


 「私たちとは袂を別つ者よ」


 人造人間に改造され、視力が10.0になり、今までかけていたメガネを取り払った国語教師はなんだかイケている面立ちをしているのだ。


 「確かに、これからの僕にメガネはいらない。老眼にもならないし、ズーム機能や赤外線サーモグラフィーも搭載されている。ちょっと集中すれば透視もできるし、たぶんビームも撃てるだろう。しかしだからと言って、30年間メガネをかけ続けた過去は変わらない!だから置き土産として、せめて我が校のコンタクトレンズだけでも消滅させて欲しい!」


 そう宣言したと同時に、ネクタイを装着した。


 「きゃあああああ」


 「目がああああ」


 「熱い!あついよお!」


 校内で叫び声が聞こえるが、図書委員長と風紀委員は固まってしまった。なぜなら、メガネ同士の中にも目を押さえて悶え苦しむ者が半数以上いたのだ。


 「どうして…」


 茫然としている二人に、ネクタイを解いて全裸になった国語教師は諭した。


 「戦いに赴くということは、必ず身のうちにも敵がいることを君たちは学ばねばならない。しかし絶望はするな。それを利用し、勝つことこそ君たちの戦いなのだから」


 「先生…!」


 二人は感動し、涙したが、夕日に反射したメガネでその瞳を見ることはできなかった。

 

 



 

「盲目になった子はマッディー研究所支部でマッドなアイを手にできるよ!」

「先生!?」

「くそっやはり悪魔であったか!」

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