4ラモーナ
ここが夢だということがなんとなく分かった。
まぁ、夢なんてそんなものかもしれない。
ふわふわ何にもないところを漂っているみたいだ……。
今日のぼくはリック・クレインのままで、ティモシーという発掘屋ではない。
ふわふわ漂っているここは真っ暗だけど、暗くはなくて妙にほのかに明るい不思議な場所。
ここにはぼく一人じゃなくて、たくさんいるって気がする。
そう、はっきりしない気配だけを感じることができる。
『……おにぃちゃん、……だぁれ?』
そんなあやふやな中、はっきりした声が聞こえた。
急いで振り返ると一人の少女がそこにたたずんでいた。
茶色い髪を後ろで束ねて、かわいいワンピースを着た8歳くらいの女の子だ。
少女はおずおずと微笑んだ。
『あたしはラモーナ。それでこっちのおねぇちゃんはフィロアよ』
少女ラモーナはそう言って何もない横を指し示した。
ぼくが見えていないことに気が付くとラモーナは同情するように首を横に振った。
『おにぃちゃん、フィロアが見えないのね。フィロア、すっごい美人なんだから! 惜しかったね』
ぼくはちょっぴり悔しい気分にかられながらもラモーナに笑いかけた。
ラモーナはかわいかった。自然と小さな女の子には優しく接するべきだと思えた。
それに、夢とはいえ、セオドーラ以外の存在とぼく自身が話すのは本当に久しぶりで嬉しい。
「ぼくはリック。リックだよ。ラモーナ。えっと、それとフィロア」
ラモーナは楽しげに笑った。
『リックおにぃちゃん? うちにもリックおにぃちゃんっているよ』
「じゃあ、ややっこしいかな?」
ラモーナはにこにこ笑いながら首を横に振った。
茶色のしっぽが揺れる。
『ううん。へぇき。起きてる時のおにぃちゃんと寝ているときのおにぃちゃんで区別つくもん。それにフィロアが教えてくれるし。ねー、フィロア』
ラモーナは何もない隣に向かってかわいらしく笑って見せる。
やっぱり、ぼくにはラモーナのフィロアが見えない。
それになぜかラモーナもここが夢だと知っているらしい。
……ラモーナ?
「ねぇ、ラモーナ」
『なぁに』
不思議そうに見上げてくるラモーナ。ぼくは不意に湧きあがってきた疑問を口にしていた。
それよりなぜ気が付かなかったのか?
「ティモシーってお兄ちゃんもいるの?」
ラモーナは元気に頷いた。
『うん。いるよ。一番上のおにぃちゃんなのぉ。あたし、ティモシーおにぃちゃん、大好き!』
不意にスパークを感じた。
はじける白。
ぬけるように白く温かな腕がぼくを捕まえた……。