表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/19

3セオドーラ

 



 リックはぼんやり目を開けた。

 薄暗い部屋。慣れてしまった薬の匂い。

 そこかしこに反射するブラック・ボックスの銀のきらめき。

「セオドーラ」

 リックがそう呟くと部屋の空気がゆれた。

「起こしてしまいましたか?」

 気遣いのこもる低い声が枕もとから聞こえた。

 リックはゆっくりと体を起こし、首を横に振った。

「いることには気が付いてなかったよ。いつからいてくれていたの?」

「つい、先ほどです。お薬のお時間だと思いましたので」

 セオドーラは落としていた明かりのいくつかを灯した。

 淡い光がゆっくりと部屋に広がってゆく。

「夢を、夢をね、見ていたんだ」

 セオドーラの不思議そうな視線を受けながらリックは笑った。

 彼にこんなことを打ち明けることなんか今までしたことがないのだから不思議なのだろう。

 自分でも不思議だと思う。

 どうして今日まで打ち明けようと思わなかったのだろう? セオドーラはずっといてくれるのに。

「夢の中でぼくはティモシーという男だったよ。遺跡発掘を生業としていて、セルマってガールフレンドがいて、それで、ラモーナって言う病気の妹もいるんだ」

 ティモシーは10代後半くらい……多分、ぼくと同じくらいだろう。

 リックがそう思考しながらセオドーラを見ていると彼は少し眉をひそめて、リックを見つめていた。

「セオドーラ?」

「以前にお話したのかも知れませんね。ブラック・ボックス収集をティモシーという若者に頼んでいることを……。それでそのような夢をご覧になったのかもしれませんね」

 リックは首をかしげ、やわらかく微笑むセオドーラを見た。

 そんな話を聞いた覚えはない。

 それでも彼の言葉を否定する気になれないリックは「そうかも」と呟くと彼の手から薬を受け取った。

 口の中に広がる薬の味がリックを再び眠りの国へと誘ってゆく。

 リックが眠りにつくとセオドーラは部屋の灯りを落とした。



「おやすみなさいまし、リック様」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ