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1リック・クレイン

 




 そこは明るい部屋。

 たくさんの本棚。机。

 その隙間からわずかに見える淡い緑の壁紙が人工光で照らされる。

 部屋の大部分を占めているのは大きなベッドとそこかしこに並べられているさまざまな大きさ、形を持つ銀色の物体。

 部屋の主、リック・クレインはチョコバーをかじりつつ目の前の画面に目を凝らした。

 銀色の物体に張り付き展開された画面(モニター)内では白いワイヤーフレーム、線の塊がただただのたくっているだけである。

 リックはいくつかのキーを使い、フレームの形をあらゆる角度から確認していく。

 その画面のついた銀の箱はブラック・ボックスという名で知られる失われた過去の遺物。

 今、扱われる技術では解析不可能な電子機器。

 しかもそれは完成体ではなく、一つ一つが何かのパーツ。部品だという。

 画面のついたブラック・ボックスは一応、モニターと呼ばれているタイプのもの。

 リックの持っているお気に入りのキーはしたいことを入力していくための道具。多くあるボードタイプではなくつるりと丸いエッグタイプ。

 ブラック・ボックス補助パーツともアクセス・パーツともその道では呼ばれている。

 この部屋の主であるリックの趣味がブラック・ボックス集め。そして解析だ。

 裕福な家に生まれ、体の弱かったリックの望みは常に叶えられてきた。

 そう、自由に動き回ること以外は。

 だから、一般の収集家では考えられないほどのブラック・ボックスがリックの手元に収集されていた。

 リックが今、夢中なのは、触っている画面のついたブラック・ボックス。


 ―-VIEL―-


 そう銘の刻まれたブッラク・ボックス。

 リックはその画面の中で白いフレームが日々、形を変えるさまに見惚れる。

「ヴィエ」

 リックにはそのフレームが声に反応して動いているようにも思えた。

 ただ、動いたと思うと画面からフレームは消え、黒い画面だけが残る。

 そうなるとエッグ・キーを使ってもアクセス不能だ。

 リックは無造作にチョコバーを食べきり、何の反応もしなくなったブラック・ボックスを棚に置いた。


 いくつものブラック・ボックスの並ぶ枕もとの棚に。そっと丁寧に。




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