17望むこと
……お兄ちゃんたちは滅多に帰ってこない。
ママは忙しい。
パパは2年前に死んじゃった。
ジェレアナお姉ちゃんはいっつもご本を読んでいる。
あたしはお外に出れないまま窓の外を見てる。
外に出て遊びたい……。
絵本にかいてあったような青空でなくていい。
あの空の下を自由に駆け回りたい……。
でも本当はそこまで望んでいない。
みんな……家族揃ってごはんが食べたい。
お兄ちゃんたちもいてママもいて、お姉ちゃんもあたしも一緒にごはんが食べたい。
あたしはお外に出れない。
あたしたち姉妹が人と違うから……
あたしとお姉ちゃんは違う形をしてる。
お兄ちゃんたちはあんまりお互いに違わない。
お姉ちゃんとあたしとママはずいぶんと違う形をしてる。
お姉ちゃんとママにはあたしみたいな翼はないし、あたしみたいなふわふわの耳もしてない。
お兄ちゃんが言ってたよ。
あたしは突然変異種なんだって。
見つかったら街の病院でじっけんたいなんだって。
パパも言ってた。
あたしとお姉ちゃんは生まれてくる場所を間違えたんだって。
確かに、きれいな空がひろがってる場所にあたし生まれたかったな……。
…………
でも。
あたし、パパがいないの嫌だし、
お姉ちゃんやお兄ちゃんたちママだっていなきゃやだよ……。
みんな一緒がいいよ。
お兄ちゃん、帰ってこないかなぁ。
「サキ」
あ。
「お姉ちゃん」
あれ?
怖い顔……。
お姉ちゃん、怒って……る?
「あなた……だれ?」
「お姉ちゃん? あたしはあたし。サキだよぉ」
「わかってるわ。サキ。少し黙っていてね」
優しい笑顔。
いつものお姉ちゃん。
「あなたはだれ? 私の妹から出て行って。私達の家から出て行って」
……?
お姉ちゃん……?
怖い顔してあたしを見てる?
あたしじゃないの?
なに? こわいよ。
「ママ!」
心臓が破れそうなほどバクバク言ってる。
あれは……なんだったんだ?
青白い肌に張り付いていたアレ。
アレは……ウロコ……。
青緑の目は冷たかった。耳はまるでヒレのようで……。あんなに青白いのに唇と髪だけは血のように赤い。
彼女たちのことをぼくは知らない。
だれだろう?
ジェレアナと呼ばれてた少女……12歳くらいの……。
知らない名前。
サキという名だって初めて聞くものには違いない。
―――それでも彼女達はあなたとつながりがないわけじゃないのよ―――
ヴィエの囁きが耳そばで聞こえる。
くすぐるようなささやかな感じが心地よい。
―――今日で終わり。残念だわ。リック……―――
ヴィエ?
―――ごめんなさい。あの方の決定は絶対なの―――
白い風が空気を揺らす。
―――私たちはいなくなるわ。私も、ティアも……―――
そんな……。
いやだ!
いやだ。いやだ。
もう、一人はいやなんだ。
おいていかないでよ。
ヴィエ!!




