13鉄の扉
ぼくの家には鉄の扉から続く地下室がある。
地下室の存在はセオドーラだって知らないはずだ。
両親とぼくの秘密。
鉄の扉は重くてぼくには開けられない……。
だけど、ぼくは毎夜その扉をくぐり、地下の秘密へと降りて行く……。
体がきしむ。魂が痛い……。
紅い飾りをつけたヴィエがぼくの腕を取って階段を降りて行く。
つまり今は夢の時間。
=さあ、ついた。=
ヴィエの口がそう動き、微笑を創る。
その瞳に光はない。
だって、今のヴィエはヴィエではないのだから……。
地下室には巨大なBBがある。
なぜ、あるのかいつからあるのかは謎だ。
父さんによると買った当時からあったらしい。
購入理由は実はBBがあったからだという。
『内緒だよ』
そう言って微笑みあっていた両親。
仲がいい2人。
それなのに生まれたぼくはとんでもないできそこないだった。
=何を泣く?=
ヴィエが怪訝そうにぼくに尋ねる。
「どうしてこれがここにあるの?」
ヴィエはゆっくり首を傾げ、微笑んだ。
ぞっとする氷の微笑。
=ここがポイントのひとつであり、リック・クレイン、お前がさだめられしモノであるからだ=
鉄の扉が背後で閉じた。
重々しく暗い音をたてて……。