第1話 浜辺の天使
夢を見た。
キミのことをまた、思い出してしまった。
キミは今、どこにいるのだろうか。僕達と過ごしたあの日々のことを、キミは覚えているだろうか。
たまには思い出してほしい。
それは、暑い暑い夏の日のこと…僕は、キミと出会った。
「海だぁぁぁぁぁぁ!!!」
「うるさい。落ち着け」
夏、セミの声がうるさくなりだしたこの時期。僕は友人2人と海に来ていた。
「だって海だよ!?ここではしゃがないでいつはしゃぐのさ!?ヒャッホォォォォォォォイ!!!」
この騒がしいのは、松本幸成。僕らはマツってよんでる。
「はぁ…。まあ、せっかくの海だしな。たまにはこういうのも良いか。好きにしろ。」
こっちの落ち着いてるのが、武野京華。男っぽいしゃべり方だけど女の子。
「ユーキ~!早くこっち来なよ~!」
「うん!わかった~!って、もう泳いでる!?着替えるの早くない!?」
「まったく…。アイツ、少しは落ち着いたらどうなんだ…」
「あはは…。でも、そこがマツの良いとこでもあるし…ってキョーカももう着替えてるじゃないか」
「こ…これはだな、その…せ、せっかく海に来たんだから、楽しまないと損だろう!?ユーキ!お前も早く着替えて来いっ!!」
「ヒイッ!わ、分かりましたっ!」
…なんで僕が怒鳴られなきゃいけないんだ。少し理不尽な気もしたが、僕は急いで…どこに行けばいいんだ?
「ねえ、キョーカ。どこで着替えたの?」
「あ?いや、私は服の下に水着を着てたからな。お前、着てないのか?」
「うん。僕もそうして来れば良かったな。」
「まったく…。お前はいつものほほんとしてるからな。」
余計なお世話だ。
「それならさ!あっちに人の居ない浜があったから、そこで着替えれば?」
いつの間にそこにいたのか。マツがそう提案した。
「そうだね。そうしようかな。覗かないでよ?キョーカ」
「なるほど。死にたいようだな…」
キョーカが拳を握った。
「じょ、冗談だよ!じょうだ…グハッ!」
キョーカのアッパーが見事に決まり、僕の体は宙を舞った…。
「あー。痛かった…。」
なんてことを呟きながら、僕は人の居ない浜で着替えていた。
ジャリッ…
誰か来る。
靴下以外何も履いていないという、奇抜な格好をしていた僕は咄嗟に近くの岩影に隠れた。
「女の子だ。…綺麗だなぁ。」
来たのは、僕と同じくらいの年の女の子。…ハーフだろうか、綺麗な銀色の髪に蒼い瞳をしている。例えるならば、まさに天使そのものである。
女の子は辺りを見回し、
「誰もいないよね…。」
そう呟くと、歌を歌い始めた。
…僕は、これほど綺麗な歌声をこれまで聴いたことがなかった。恐らく、これからもないだろう。
それほどまでに、その歌声は美しかったのだ。
歌が終わる。
僕は思わず、拍手しながら女の子の前に出てきてしまった。
そう。思わず、だ。
「すごく綺麗な歌だったよ!キミ、名前は…」
そこで僕は女の子が真っ赤になってうつむいている事に気づいた。
そういえば、僕は今、○ディ・ガガもびっくりの恐ろしく奇抜な格好をしていたのだ…。
「着替え、終わっただろ?何してる?」
運の悪いことに、ちょうどその時、キョーカが現れた。
…こうして僕は、今日2度目のアッパーをくらうこととなった。
続く
初投稿です!織田遥希と申します。
この作品は、できれば夏の間に仕上げたいと思っています。なので夏休みの間、暇な時でも読んでくれると嬉しいです。
ご感想や、アドバイスなどもお待ちしています。
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