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はじまり。祝福。
とある町の病院の一室で、元気のいい赤子産声が響き渡った。
この世界に生を受けた新たな命の誕生に、そこにいたすべての人たちは歓喜の渦に包まれた。母は穏やかな顔で泣き叫ぶ我が子を見つめ、父は安堵の涙をこぼしながらその幸せな光景を眺めていた。その周りでは助産婦がせわしなく動き、生まれてきた子供の介助をしている。
そこにあったのは、苦しみを乗り越えて勝ち取った二人の夫婦の幸せ。
「本当に、本当にお疲れ様。千草」
「ううん、私は何にもしてないよ。この子が生まれてきたいって頑張ったから……」
「強いな、この子は……でもこれからいろんな人と出会って、いろんなことを経験して、もっと強くなっていくんだろうね」
「ええ。それを一番近くで見守れるって、すごく幸せなことね……でもごめん、疲れたから少しだけ休ませて?」
「うん。ゆっくりおやすみ。目が覚めたらまた、たくさんの大変なことや楽しいことが待ってるんだから」
赤子は元気な声で叫び続ける。
まるで、この世界に生まれたことの喜びを謳うように。




