世界の終わりを待ち焦がれている(作者:朝永有様)
~研究室にて~
「ついに完成したな」
「はい、博士」
助手と博士は出来上がったロケット見上げながら深く頷き合った。
「これで、地球は救われるんですね」
「そうだとも」
「感慨深いです」
現在、巨大な隕石が地球に向かっていた。
多くの科学者たちがこれを解決しようとあらゆる手を尽くした。それを国も大金を払って支援した。
しかし、その方法は一つも生まれなかった。
そこで世界中では、地球最後の日までの日数を伝え、自由に暮らすことを勧めていたた。
だが、それは『犠牲を出さない』という前提での話だ。
実際には方法があった。だが、それには犠牲が必要だった。
その方法とは、ロケットを使って体当たりをし、宇宙空間で隕石を破壊するのだ。
故にそれは、破壊したときの破片さえ地球に残さないことが必要だということ。
そのために、遠隔操作では隕石とロケットの衝突を完璧に制御できなかった。
完璧を求めるためには、誰かがロケットに乗り込み最後まで調整することが必要となる。
そして、それに気付き、研究室に籠もりっきりでロケットを作り上げたのがこの二人だった。
「それでは乗り込むぞ」
「はい、博士」
二人は宇宙服に身を包み、ロケットに乗り込んだ。
狭い場所の中、それぞれの席に座る。
全てのチェックを終えた後、博士は発射スイッチに人差し指を置いた。
「今、何を考えていますか? 博士」
一呼吸置いて、博士は言った。
「笑顔で溢れる人々さ。これはサプライズだからね」
博士は力強くスイッチを押した。
~地球にて~
「臨時ニュースです! 先ほど、地球に向かっていた隕石が破壊された模様です! その破片も地球には届かない、との報告が観測室から届きました!」
世界中のテレビ、ラジオなどあらゆる情報源ではその話で溢れかえっていた。
だが、それを賞賛する者はいない。
財産を使い果たした者、資材を全て失った者……
街は混乱に包まれている。浮かれた顔をしている者など、どこにも見当たらない。
その中で各国の代表者は、隕石の到来を食い止めたロケットに向けて黙祷を捧げることを決定した。
この決定を聞いた人々は、今後の苦しい生活を思いながら目を瞑る。
――こうして彼らは皮肉にも英雄と崇められるようになった。
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