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おやすみなさい

「ねえ、ママ、眠れないよ。何かお話聞かせて。」

「困った子ねえ。もうママのお話のネタも尽きちゃったわ。絵本も全部読んだしね。同じお話じゃあダメなの?」

「いやだ。一回聞いたお話なんてつまんないよ。」

「困った子。うーん、じゃあある男の子のお話をするね。」

「うん。」

「昔々、あるところに、ママのお話が大好きな男の子がいました。男の子は寝る前に、ママにお話のおねだりをするのです。」

「ボクとおんなじだね。」

「そうよ。甘えん坊さんなのね。男の子は一度聞いた話はもう二度と聞いてくれなくて、それでもママは毎日、男の子のために、お話を作って聞かせました。」

「ママはやさしいんだね。」

「ウフフ。そうよ。ママはみーんな優しいのよ。最初は絵本を読み聞かせていたんだけど、とうとう絵本という絵本を全て読み尽くしてしまったの。いくら毎月新作の絵本を買っても、毎日読み聞かせるのだから、とうてい追いつかなくなってきちゃってね。ママは、とうとう自分でお話を作りはじめたのよ。」

「へえー、すごいんだね、そのママって。」

「毎日、毎日、お話を作って読み聞かせているうちに、ママはお話を作ることに慣れて、それを書き留めていたものを、ある日、本の会社にそれを送ってみることにしたの。そうしたら、それが認められて、ママは作家さんになっちゃったのね。」

「うわぁ、すごおい。」

「作家さんになったママは、どんどん本が売れちゃってそこそこお金を儲けることができるほどになったの。」

「うんうん。それで?」

「男の子はね、大きくなって、高校を卒業しても、大学には行かずに、ママのお金だけで二人で生活していたのね。」

「・・・」

「ところが、ママも年をとって、作家としても、あまりアイディアが浮かばなくなったのね。」

「・・・」

「そこからは、とても貧しい生活が続いたの。」

「・・・」

「それでもなお、男の子は毎日毎日、ママにお話をねだったの。」

「・・・」

「男の子はもう良い歳になったわ。今年でもう42歳になるの。」

「・・・」

「あら、もう寝ちゃったかしら?ママの話も、もうマンネリになっちゃったわね。ゴメンね。明日話すお話はもう無いのよ。」

「・・・」

「おやすみ、坊や。永遠にね。」

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