表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/313

橋の下のぽにょ

ジブリさん、すみません。

近所の橋の下に爺さんが住んでいる。


痩せているのにお腹だけがぽにょっと出ているので


橋の下のぽにょと呼ばれているのだ。


ぽにょはいつも、自転車の荷台に大きな段ボール箱を積んで


いたるところに出現する。


近所のショッピングセンターで灰皿を開けてシケモクを拾ったり


自販機のおつり口の全てに指を突っ込んで確認したり


夜遅くにはその自販機のゴミ箱の中から缶を取り出し、コーヒーの底に残ってる


飲み残しを一缶に集めて飲んだりしているのだ。


暑い日にはたまに、頭から水道水を被って洗ったりしてる。


一応洗濯とか風呂とかたまには入っているのか、あまり酷いにおいはしない。


ぼくは、いつもぽにょ自作の荷台のダンボールが気になって仕方ない。


ダンボールの後ろの部分につまみが付いてて、パタパタと開くようになっているのだ。


いったいあんな大きなダンボールに何を積んでいるんだろう。



ある日、ぼくが一人で公園のベンチでゲームをしていると、公園にぽにょが


自転車でやってきた。


ぼくは、チラっとダンボールを見てすぐゲーム画面に目を戻した。


ゲームに夢中になっててわからなかったけど、いつの間にかぽにょが後ろから


ぼくがゲームするのを見ていた。ちょっとびっくりした。


「ぼうず、ゲーム面白いか?」


声をかけてきた。ぼくはおっかなびっくりで、頭だけでウンとうなずいた。


「ぼうずは、あの箱の中が気になって仕方ないんやろ?見したろか?


ゲームなんかより、おもろいもんが入っとるかもしれんで。」


これはヤバイのだろうか。逃げたほうが良いのか。


でも、箱の中身はめっちゃ気になる。


ぼくは、一間置いて、おずおずと首を縦に振った。


「おっしゃ、ほな見したろ。」


ぼくはぽにょについて行き、自転車の手前まで来た。


「よく見るんやで。」ぽにょはそう言うとダンボールの後ろの取っ手をつまんで


上に上げた。


「うわあぁぁぁぁっ!」


ぼくは中身を見て尻餅をついた。その瞬間おしっこを漏らしてしまった。


ぽにょは腹を抱えて笑った。


「あかんぼうずやなぁ、お漏らししおってから。帰ってはよママに


パンツ洗ってもらわなあかんで。ほんでな、このことは警察に


言うたらあかんで。言うたら殺すからな。ほなな。」


ぽにょは何事も無かったかのように、上機嫌で自転車をこいで行ってしまった。


箱の中には、小さなおかっぱの女の子の生首が入っていたのだ。


マネキンと言うには、あまりに肌質が生生しく、まるで生きている人間のようだった。


肌には弾力があり、目はまっすぐにこちらを向いていた。


ぼくはその日から、しばらく眠れなかった。あれは人形なんだろうか。


警察に言うなってどういうこと?


言ったら殺すって言われた。怖くて言えるわけが無い。



数日後、橋の下でぼくはぽにょの死体を発見した。


橋の下でぽにょは河川敷に倒れていた。


ぼくは恐る恐る近付き、「大丈夫ですか?」と声をかけたが反応が無かった。


これはやばい、そう思い、ぼくは携帯で救急車と警察を呼んだ。


救急の人が来て声かけて意識確認したり脈みたりしてたけど、だめみたいだった。


ぽにょは担架に乗せられ、頭まですっぽり毛布を被せられて運ばれた。


ぼくはぽにょを発見した時の状況や、ぼくの名前や住所を警察の人に聞かれた。


そしてぼくは恐る恐る警察の人に言ってみた。


「あの、自転車の後ろの段ボール箱の中に、女の子の生首が入ってるんです。」


警官は「えっ」と驚いたので、ぼくは説明した。


「以前、あのお爺さんに公園で声をかけられた時に見せられたんです。


ダンボールをめくると、生首が、乗ってたんです。」


警官二人は、自転車に近付くとダンボールをめくった。


そしてぼくに近付いてきて言った。


「ガラクタしか入っていなかったよ。見間違いじゃないの?」


そんなバカな!確かに見たんだ!


ぼくは駆け寄ってダンボールの取っ手を掴んでめくりあげた。


ほんとだ。鍋とかビニール、生活用品っぽいものがゴミみたいに詰め込んである。


とてもじゃないけど、あの日とは違う。あの日は生首一つしか入ってなかった。


あれから入れなおしたんだろうか?あれはやっぱり人形で、ガラクタの一部なのか?


ぼくは警察の人にいろいろ聞かれて、家まで送ってもらい、お母さんに事情を話してくれた。


お母さんは青ざめて、ぼくを心配している。


警察の人が帰っていき、お母さんが「大変だったね。でもよく通報したね、偉いよ。」


そう言ってぼくを慰めた。


ぼくは自分の部屋で考えていた。


あのダンボールの中身が変わっていたことを。


じゃああの生首は?どこにいったの?


その時、ぼくの携帯が鳴った。


ぼくは気が動転していたので、番号もよく確かめずに電話に出た。


「もしもし?」


「ああ、ぼうずか?警察に言うたらあかん言うたやろ?かわいそうやけど、


約束破ったからしゃあないな。言うたこと忘れてないよな?ほなな。」


ぼくは、足ががくがく震えだして太ももを熱いものが伝わってきた。


またお漏らしをした。


もう一歩も外に出られない。



                                                               了

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ