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哂う女

最悪なクズの話

「一緒に女をさらいませんか?」

俺は、今、裏サイトを見て、このメッセージに強く引かれていた。

はっきり言って、俺はモテないし、女の子に声をかけても無視をされる。

この容姿じゃあな。俺は、スリープになっているスマホの黒い画面に映った

自分の顔を見て溜息をつく。それに、今、AVでそういう企画ものを見たばかりで

俺は興奮していた。俺は、迷ったが、その男にコンタクトを取ったのだ。


そして、今日、初めて待ち合わせ場所であの、サイトに書き込んだ人物に会った。

なんとも柄の悪そうな男だ。

「はじめまして。アイダです。」

その男はニヤニヤしながら、俺に挨拶をした。たぶんアイダも偽名だろう。

「タカシです。」

俺も偽名を使う。

「じゃあ、さっそく行きますか。俺、穴場知ってるんスよ。人目があまりなくて、

よく夜遅くに女が一人で歩いてるんス。新興住宅地なんで、結構緑地が多いんスよね。

真っ暗で街灯もないし。」

だいぶ土地勘があるらしい。ノリが軽いし、地元なんだろうか。大丈夫か、こいつ。

俺は半信半疑で、男のワンボックスカーの後部座席に乗った。


しばらく住宅地を走っていると、突然住宅がなくなり、しばらく緑地が続く。

その先には、ショッピングモールがあるのだ。

おそらく、そのショッピングモールで働く女性だろうか。

かなり遅い時間にも関わらず、白いミニのワンピースに高いヒールの靴を履いた女が、バッグを片手に歩いていた。バッグはかなり特徴的なもので、白いエナメルに蝶の模様が入ったバッグだった。物騒だなぁ。俺は、そう思いながら、これから自分が犯す犯罪に緊張でドキドキしたし、それを上回る興奮を覚えた。

俺はちょっとだけ、その女性に違和感を覚えた。

最近の若い女性にしては、何となく雰囲気的に違和感を覚えたのだ。

なんだろう、とずっと考えた時に、はっと思い至った。

スマホ。最近の若い女性はたいてい、歩きスマホしてたり、耳にイヤホンをしてたりと、

割と隙が多いのだ。この女性はスマホを持っていない。

こんな暗い街灯もない道を、一人、何も明かりもともさずに・・・。

「おあつらえ向きのが歩いてますね。チャンスですよ、タカシさん。ゲットしちゃいましょうよ。」

アイダがバックミラー越しにニヤニヤしながら、車のスピードを緩める。

女の姿がだんだんと、近づいてくる。

あと5mくらい。俺はそっと、車のドアを音を立てないように開ける。

俺の手が、女を捉えた。腰の部分を抱きかかえ、思いっきり車内へ引き込んだ。

俺は、女の恐れ慄く顔を一目見ようと、女の顔を見た。


女はごく普通の女だった。美人でもなく、不細工でもなく。

だが、女には全く表情が無かった。さらわれたのだから、さぞびっくりしてるだろうと思ったが、女は無表情だったし、騒ぎ声も立てなかったのだ。アイダも不審に思い、バックミラーで俺たちを確認していた。俺は一応、形だけ脅しの言葉を吐いた。

「大人しくしてろよ。騒いだら殺すからな。」

そう言って女の反応を見たが、やはり無反応だった。これは、極限状態で、女が何も言えない状態だからなのかもしれない。まあ、これはこれで好都合だ。

騒がれなければ、犯行もスムーズに行く。

アイダは、新興住宅地の外れの緑地の一角の草の陰になる路肩に車を停めた。


俺とアイダは、女にかわるがわる覆いかぶさった。

3時間くらい、かわるがわる女をいたぶったあと、俺たちは女の手足をしばり目隠しをして、その草むらに叩き落し、放置したのだ。


久しぶりに女を抱いた充足感に俺は酔いしれていた。こんなに簡単にいくとは思わなかったのだ。

「ラクショーだったっすね。結構あの女、よかったし。」

少し違和感はあった。いたぶられている間も女は抵抗一つしなかったのだ。

騒ぐと殺すという脅し文句が功を奏したか。

あの暗闇だし、俺たちは覆面もしていたから、バレはしないだろう。

そう思っていたのだ。


ところが、俺たちはすぐに捕まることになってしまった。

俺は、前歴が無かったが、アイダと名乗った男は強姦で前歴があり、俺はあっさりと

芋づる式に警察に捕まることになったのだ。

そして、俺は、今理不尽な取調べを受けている。


「何故殺したんだ。」

刑事はそう俺に詰め寄る。

殺してなんかいない!あの時、女は生きていた。

草むらに放置した時に、女は確かに縛られた足で、草むらに立ち、立ち去る俺たちの車の方に顔を向けていたのだ。目隠しをされてはいるが、車の立ち去る方向くらいは耳があるから聞こえるだろう。

ただただ、車で逃げる俺たちを延々と呆然と立ち尽くし、見ていたのだ。

見ていた?目隠しをしているのに?

俺がそんなどうでもいいことをぼんやり考えていると

「正直に言え!」

と、目の前の机がドンと叩かれたのだ。

「殺してません!確かに強姦はしました。でも、殺してないんだ。」

俺は必死に訴えた。

「嘘つけ!このやろう!」

「本当です。1週間前、掲示板を見て、アイダに計画を持ちかけられ、実行しましたが、殺してません!」

俺がそう叫ぶと、刑事は怪訝な顔をした。

「お前は何を言っているんだ?1週間前だと?ふざけるな!死体は白骨化してたんだぞ?」

そう言われて、俺は勝機!と思い反論した。

「それは俺ではありませんよ。俺たちが計画したのは1週間前で実行したのは3日前だ。掲示板のログを見てもらえればわかります。」

すると刑事は鼻でフンと笑った。

「そんな物はなんとでも工作できる。動かぬ証拠があるんだ。」

そう自信たっぷりに言った。

「動かぬ証拠?」

俺がそう言うと、

「その女の体内から、お前らのDNAが検出された。」

とドヤ顔で言った。

「嘘だ!そんなのはでっち上げだ!」

俺が叫ぶと、刑事は俺の目の前にチラチラと検査結果を振りかざした。

「嘘なもんか。自分で確かめろ。」

俺は、机に置かれた検査結果を見る。

こんなものはでっち上げだ。ちくしょう。アイダなんかに関わらなければ。

今更ながら後悔した。

「仏さんだ。見るか?」

刑事は悪趣味な笑いを浮かべながら、俺の目の前に写真をかざした。

そこには、一部腐乱して、白骨化した死体が写っていた。

俺は目を疑った。

白いミニのワンピース。高いヒールの靴。

それに、あの特徴的なバッグ。

白のエナメルの蝶の模様。

俺は、全身が震えた。

嘘だろう?俺たちは、いったい、何を抱いたのだ。


俺は去り際に立ち尽くして、目隠しのまま俺たちの車を見送る女の様子を思い出していた。


女の口元は、笑っていなかっただろうか?

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