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400字小説「プラナリアの死体」
「ねえ、生命の定義って知ってる?」
彼女はそう言った。僕はわからないよと言った。
「一つはエネルギー代謝能力がある、そして、細胞構造を持つ。そして、もう一つは?」
そんな難しいことは僕にはわからない。静かに首を横に振る。
僕らの目の前には、飼育しているメダカの水槽、そしてそれはひどく汚れていた。
彼女はその水槽に手を入れてヌルリとしたそれを取り出した。
「自己複製能力」
そう言うと彼女はそのヌルリとした物の頭をカッターで真っ二つに切り始めたのだ。
そいつはプラナリアというらしい。彼女の残酷な横顔を僕は愛している。
「君もこんな風にゾンビみたいに再生できたらよかったのにね」
彼女は微笑むと僕の体に冷たい土を被せ始めた。