140字小説 3
【おーい】
おーい。私を呼ぶ声がした。
振り向いたが誰もいない。
気のせいだろう。またおーいと呼ばれた。
確実に私を呼んでるのだと気付いたので無視した。
なお呼び声は続きついに耳元で聞こえないのかと言われた。
再生されてないプレイヤーのイヤホンを仕方なく引き抜く。
聞こえてるっちゅうの!
【ボケ】
ご飯食べてないですって?
嫌だわ、お爺ちゃんもう食べたじゃないボケちゃって困るわ。
置いといたお金が無い盗っただろうですって?
文無しのお爺ちゃんを長女の私が引き取ってお金なんか最初から持ってないじゃない。
お箸が持てないですって?当たり前じゃない。
さっき殺したんだから。
【夏なんてなくなればいいのに】
夏なんてなくなればいいのに。
あの夏の日、友人たちと誰が一番遠くまで泳げるか競争したんだ。
泳ぎには自信があった。
結果は負け。
あの日から一番はテツヤになった。
そしてあの日から僕は泳げなくなった。
今年の夏も、みんなが楽しそうに泳いでるのを見ているだけになった。
海の底から。
【貢物】
ほらこれ。素敵だろう?
君にきっと似合うと思うんだ。
僕はこれを得るために汗水垂らして働いたんだ。
なあに君の為だと思うとそんなの苦労でもなんでもないよ。
やっぱり似合う。素敵だ。
僕はこれからも君だけのために君に似合う物を探して貢ぎ続けるよ。
美しい君の顔に合うパーツをね。