表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
175/313

トモダチコレクション

私は、大のゲーム好きで最近、懐ゲーにハマっている。


最新式のゲームは、下手の横好きの私にはハードルが高い。

そこで私は、テクニックの必要のないほのぼの系のゲームを買ってきてはプレーしている。

数年前に流行ったもので、ゲーム内に島や町などのコミュニティーを作り、そこに友達を住まわせる、トモダチコレクションなる中古のゲームを購入した。


さっそく自分のアバターを作って友達はすべて職場の人間にした。

このゲームの内容は現実世界と同じ時間が流れるその町で、アバターが自分の意志を持ち、自由に暮らし始めるという内容だ。実在する人とそっくりなアバターを作り、性格もそっくりそのまま設定してみた。

さて、人間関係がどうなるのか楽しみだ。


プレイヤーのすることは、その住人のお世話(衣食住)とたまに遊んでやったり、相談にのってやったりすること。

ゲームを初めてしばらくすると、人間と同じように、お互いが関心を持ち始め交流し、恋愛感情を持ったり、喧嘩したりしはじめた。地味なゲームだが、意外とはじめてみると楽しい。


性格の情報はこちらからあらかじめ入力してあるので、やはり実際の人間関係と同じように、仲良くなる者とそうでない者が一致してなかなか興味深い。特に、TとAは非常に仲が良かった。

そんなある日、Tから私は相談を受けた。

「ねえ、Yちゃん(私)。相談に乗ってほしいんだけど。」

「どうしたの、Tちゃん。」

Tちゃんは職場の年下の女性。Aは、Tちゃんと付き合ってるという噂があった。

「最近ね、Aが冷たいの。たぶん、ほかに好きな人ができたと思うの。」

「そんなの思い過ごしじゃないの?あなたたち、あんなに仲がいいじゃない。」

「Yちゃんの前ではね。でも、二人っきりになるとAはすごく冷たいの。」

二人っきりになると、って。ゲームの中じゃん。そうか、私がゲームをオフにしてるときも、時間は流れているものね。けっこうよくできたゲームだこと。

「じゃあ私がそれとなく、Aくんに聞いておいてあげるね。」

そう私が言うと、Tちゃんは飛び上がって喜んだ。

「ありがとうYちゃん!大好き!」

私は思わず、ほほ笑んだ。本物のTちゃんそっくりで天真爛漫でかわいい。

私がAを部屋に呼んで、事情を聞くと、なかなか言い出さなかったが、ほかに好きな人ができた、Tちゃんの愛情が重い、とのことだった。うむむ、ゲームとはいえ侮れない生々しさ。さて、どうしたものか。


私はいったん、ゲームを終了して、そのまま寝てしまった。なるようになるだろう。

そう思っていた。


ところが次の日、ゲームをたちあげると、いきなりAから呼び出しをくらった。

「どうしたの?A君。」

暗い表情のAが重い口を開いた。

「俺、ゆうべTを殺してしまった。」

私は、頭の中が?でいっぱいになった。えーっと、これってこんなに生々しいゲームだっけ?

お子様もやるから、こんなのありえないんですけど。混乱する頭の中で答えを探していた。

何か入力しなくては。

「どうしてそんなことを。警察に自首したほうがいいよ。」

「いやだ。そんなことをしたら、俺の人生はおしまいだ。」

Aが頭をかかえた。

「ダメだよ。罪は償わなきゃ。」

そう入力すると、Aが無表情に顔をあげた。

「Yに相談したら解決してくれると思ったのに。知られたからには、Yも・・・。」

いやいや、ありえない、こんな展開。マジか。何かのバグかなあ、と考えたらいきなり後頭部に激痛が走った。

私は思わず後ろを振り向いた。

「A・・・くんっ?」

Aがゴルフクラブを持って立っていた。激痛が走った場所を触ると、おびただしい血が流れていた。

「な、なんで?」

私は薄れる意識の中、やっとのことで言葉を発した。

「知られたから。」

A君は無表情に私にもう一度クラブを振り下ろす。私は倒れこんだ。

ゲームなのに。なんで?

なんで?


***************

「お?トモダチコレクションかあ、懐かしい~。」

***************


※中古のゲームをプレイするときは、後ろに注意しましょう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ