トモダチコレクション
私は、大のゲーム好きで最近、懐ゲーにハマっている。
最新式のゲームは、下手の横好きの私にはハードルが高い。
そこで私は、テクニックの必要のないほのぼの系のゲームを買ってきてはプレーしている。
数年前に流行ったもので、ゲーム内に島や町などのコミュニティーを作り、そこに友達を住まわせる、トモダチコレクションなる中古のゲームを購入した。
さっそく自分のアバターを作って友達はすべて職場の人間にした。
このゲームの内容は現実世界と同じ時間が流れるその町で、アバターが自分の意志を持ち、自由に暮らし始めるという内容だ。実在する人とそっくりなアバターを作り、性格もそっくりそのまま設定してみた。
さて、人間関係がどうなるのか楽しみだ。
プレイヤーのすることは、その住人のお世話(衣食住)とたまに遊んでやったり、相談にのってやったりすること。
ゲームを初めてしばらくすると、人間と同じように、お互いが関心を持ち始め交流し、恋愛感情を持ったり、喧嘩したりしはじめた。地味なゲームだが、意外とはじめてみると楽しい。
性格の情報はこちらからあらかじめ入力してあるので、やはり実際の人間関係と同じように、仲良くなる者とそうでない者が一致してなかなか興味深い。特に、TとAは非常に仲が良かった。
そんなある日、Tから私は相談を受けた。
「ねえ、Yちゃん(私)。相談に乗ってほしいんだけど。」
「どうしたの、Tちゃん。」
Tちゃんは職場の年下の女性。Aは、Tちゃんと付き合ってるという噂があった。
「最近ね、Aが冷たいの。たぶん、ほかに好きな人ができたと思うの。」
「そんなの思い過ごしじゃないの?あなたたち、あんなに仲がいいじゃない。」
「Yちゃんの前ではね。でも、二人っきりになるとAはすごく冷たいの。」
二人っきりになると、って。ゲームの中じゃん。そうか、私がゲームをオフにしてるときも、時間は流れているものね。けっこうよくできたゲームだこと。
「じゃあ私がそれとなく、Aくんに聞いておいてあげるね。」
そう私が言うと、Tちゃんは飛び上がって喜んだ。
「ありがとうYちゃん!大好き!」
私は思わず、ほほ笑んだ。本物のTちゃんそっくりで天真爛漫でかわいい。
私がAを部屋に呼んで、事情を聞くと、なかなか言い出さなかったが、ほかに好きな人ができた、Tちゃんの愛情が重い、とのことだった。うむむ、ゲームとはいえ侮れない生々しさ。さて、どうしたものか。
私はいったん、ゲームを終了して、そのまま寝てしまった。なるようになるだろう。
そう思っていた。
ところが次の日、ゲームをたちあげると、いきなりAから呼び出しをくらった。
「どうしたの?A君。」
暗い表情のAが重い口を開いた。
「俺、ゆうべTを殺してしまった。」
私は、頭の中が?でいっぱいになった。えーっと、これってこんなに生々しいゲームだっけ?
お子様もやるから、こんなのありえないんですけど。混乱する頭の中で答えを探していた。
何か入力しなくては。
「どうしてそんなことを。警察に自首したほうがいいよ。」
「いやだ。そんなことをしたら、俺の人生はおしまいだ。」
Aが頭をかかえた。
「ダメだよ。罪は償わなきゃ。」
そう入力すると、Aが無表情に顔をあげた。
「Yに相談したら解決してくれると思ったのに。知られたからには、Yも・・・。」
いやいや、ありえない、こんな展開。マジか。何かのバグかなあ、と考えたらいきなり後頭部に激痛が走った。
私は思わず後ろを振り向いた。
「A・・・くんっ?」
Aがゴルフクラブを持って立っていた。激痛が走った場所を触ると、おびただしい血が流れていた。
「な、なんで?」
私は薄れる意識の中、やっとのことで言葉を発した。
「知られたから。」
A君は無表情に私にもう一度クラブを振り下ろす。私は倒れこんだ。
ゲームなのに。なんで?
なんで?
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「お?トモダチコレクションかあ、懐かしい~。」
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※中古のゲームをプレイするときは、後ろに注意しましょう。