初めての☆昆虫食
お昼ご飯を食べるだけの話です。
私は蜂の子とか好きですが、無理な方は飛ばしていただいてもストーリー上は差し支えありません。
あ、現実のカブトムシの幼虫は細菌とかが気になるのでさすがに生で食べようとは思いません。
俺とクレア様がこの島に転生して来てから、五日の時が流れた。
今日まで俺たちはパナムスの果実を主食にしてきたが、さすがにいつまでもこればかりという訳にはいかないだろう。
そんなわけで俺たちは本日、本格的に森の中へと食材を探しに入ることにした。
森へと踏み込んでしばらくの間は危険な野生動物と遭遇しないかビクビクしていたものの、当初の予想通り大型の獣の気配は微塵もなかった。
見かけるのは蝶のような昆虫類や、リス程度の大きさの小動物、手乗りサイズの爬虫類や両生類くらいだ。
人間にとって致命的な毒を有するもの等も、クレア様に確認していただいた限りでは見当たらなかった。
大木の立ち並んだ森の中は薄暗いが、頭上を覆う緑葉の、あちらこちらに存在する切れ目から差し込む陽光のおかげで、不気味さも全くと言って良い程感じられない。
それどころか爽やかな木々の香りが、俺の心を清々しく落ち着かせてくれる。
すっかりクレア様の乗馬が板について来た俺は、発見した食材が本当に食用可能かどうかを背中の彼女に判別して貰いながら、そんな森の中を黙々と探索し続けている。
俺の腰に括り付けられたクリースプの蔓製の袋には、既にいくつかのキノコや植物が入っている。
残念ながら未だ火を起こすことには成功していないので、生食できるものに限られているが。
そして俺が再度大樹の根元でキノコを採集していると、
「そこを掘ってみろ」
と、背中のクレア様から指示が飛んできた。
俺の右肩越しに伸ばされた彼女の右腕は、何やら枯葉の積もった地点を指し示している。
彼女の言に従って、何があるのだろう、と俺は枯葉をかき分ける。
露になった香りの良い腐葉土は柔らかく、簡単に掘り進むことが出来る。
だが、そこに現出した白色の物体を目撃した俺は、思わず声に詰まってしまった。
ぶにぶにとしながらも、張りのあるつややかな表皮。
土中の闇から掘り起こされたそれらは、陽光と言う刺激に反応してか、もぞもぞと動きを速める。
小学生の頃、夏休みに飼育していたカブトムシの幼虫にも似た姿。
だがそれは、俺の知るものと比べて余りにも巨大だ。
小さいものでも俺の中指程度、大きいものに至っては握り拳程もある。
……え、もしかしてこれ食べる気ですか?
花畑に囲われた池の水辺へと戻って来た俺たちは、さっそく採集した食材を洗って食してみることにした。
キノコ類や植物類は、やはり火が通っていないこともあってか、素直に美味しいと思えるものは少なかった。
ただ、パナムス程とはいかなくとも、美味しい果実をいくつか発見できたのは幸いだ。
さて、いよいよ問題の幼虫だ。
別に虫が嫌いだと言う訳でも無いが、さすがにこれを食すことには躊躇いがある。
しかし動物の捕獲が難しい現状、カルシウムを初めとしたミネラルはもちろん、とりわけタンパク質の補給の為に、昆虫食が極めて有用であることもまた事実だろう。
しばらくの間あぐらをかいて、目の前で蠢く白い塊とにらめっこしていると、クレア様がその中の一匹をひょいと摘んで立ち上がり、それを俺の顔へと近づけて来た。
「さあ、食え」
うわわわわ!
幼虫さん、ごめんなさい。
やっぱり至近距離で見ると結構気持ち悪いです。
いくつかの節に分かれた、光沢のある乳白色の体。
俺の視界いっぱいに収まり身をくねらせるそれに、僅かに生理的嫌悪感を抱かされる。
……だが、待てよ?
この状況、よく考えてみれば、いわゆる「あーん」って奴じゃないか!
この絶好の機会を逃す手は無い。
勇気を振り絞り、目をいっぱいに開く。
視線は出来るだけクレア様の可愛い顔へと集中しておくのだ。
そして恐る恐る開いた俺の口へと、クレア様は手にした幼虫を放り込んだ。
慌てて開いた口を閉じる俺。
うわ、口の中で蠢いている。
クレア様が無言で、俺の様子を眺めている。
ここまで来た以上、きちんと味わってあげなければ、俺の生命の糧となってくれる幼虫に失礼だろう。
覚悟を決め、噛み締める。
すると俺の口内で幼虫が、ぐにょっとした弾力を感じさせた後、そのままプチッと弾けた。
口の中に広がる、ねっとりとした体液の感覚。
………………。
あれ?
これ、結構イケるぞ。
口内から鼻腔へと広がって行く、白子のようにまったりとした濃厚な風味。
これは当たり食材だ!!
ゲテモノほど美味いとは良く言ったものだ。
俺の反応に対し、クレア様もその無表情な顔にどこか満足げなものを浮かべている。
時間をかけてたっぷりと幼虫の味を堪能した俺はすっかり気をよくし、次は彼女にもこの幸せを味わってもらおうと提案する。
「よし、今度は俺が食べさせてあげますね!」
するとクレア様は素直にもその場にぺたんと座り込み、両腕を左右の地面に着けると、両目を閉じて顔を上げつつ口を開く。
その様子はまるで餌を待つ子犬のようで、俺の心をゾクゾクさせる。
まずは、小さいのからいこう。
そう決めた俺は膝立ちになると、幼虫の山のなかから一番小さそうなものを選び、それをそっとクレア様の口元へと運ぶ。
そしてもぞもぞと動くそれを、ゆっくりとクレア様の口腔内へと挿入して行く。
彼女の小さな可愛らしい口に、白くブヨブヨしたグロテスクなものが徐々に収まって行く。
いかん。
食事をしているだけなはずなのに、ものすごく卑猥な行為に思えて来た。
やがて幼虫の全体が口内へと収まると、クレア様は口を閉じて両目を開き、その深く蒼い瞳で俺の顔を見つめながら、もぐもぐと咀嚼する。
そして幼虫の食感を十分に堪能したのであろう彼女は、再びゆっくりと目を閉じると、しばらくの間その濃厚さを味わうかのように静止した後、それをこくんと飲み込んだ。
彼女の顔は相変わらず無表情のままだが、何だか先ほど以上に満足そうに見える。
「はい、クレア様。
もう一度、あーん」
彼女がこの食材を気に入ってくれたらしきことを喜んだ俺は、彼女により大きな満足感を味わってもらおうと、今度は幼虫の山の中から一番大きいものを掴み上げる。
クレア様が一度目を開き、俺が手にした巨大な幼虫を確認する。
そして彼女は再度瞑目し、ゆっくりとその可愛らしい口を開き始めた。
先ほどの幼虫の白い体液が、未だにその口内で糸を引いている。
だがそれを承諾の意と捉えた俺は、再び手に持つ白い肉塊を、彼女の小花の蕾のような唇へと触れさせると、少しずつ少しずつ奥へと挿入して行く。
この巨大な幼虫は、その太さも先ほどのものとは比較にならない。
いっぱいに開いた彼女の小さな口と、脈動する白い肉塊の間には、ほとんど隙間も出来ていない。
しかしその僅かな隙間から、行き場を無くした彼女の涎が垂れ落ちる。
「う……ん……」
クレア様が、少し苦しそうにうめき声を漏らす。
これ以上、喉奥へは入らないな。
そう判断した俺は、
「噛み切っても構いませんよ」
と、彼女に苦しみから解放される許可を出す。
それを聞いた彼女は口に含んだ白い肉塊を、それに付着した自らの唾液と共に、少し押し戻すようにゆっくりと噛み締める。
肉塊は、そのブヨブヨとした弾力を持って抵抗を試みる。
だが、所詮人の顎力にはかなうはずも無く、やがてプチッと言う小さな音と共に、俺の指と彼女の門歯の間で弾け飛んだ。
幼虫の切断面から勢いよく飛び散った体液が、彼女の身体に付着する。
彼女の可愛らしい顔が、慎ましい胸が、ゼリー状の固形物を含んだ白濁した幼虫の体液で染まっている。
その光景を見て呆然となった俺は、思わず後ろに尻餅をついてしまった。
だが彼女はそんな俺を気にした風も無く、自らの身体を拭うように自身の前腕や手の甲へと白い体液を掠め取ると、それらが付着した両腕をペロペロと舐め始めた。
両腕から幼虫の体液を舐めとるという作業を終えた彼女は、改めて俺の方へと向き直る。
彼女の白くきめ細かい肌が、残された幼虫の体液でテラテラと光っている。
底が見えない程に深く蒼い瞳は、俺の顔をジッと見つめている。
その妖艶な雰囲気にドギマギしている俺の虚をつき、今度は彼女が膝立ちとなって俺へと伸し掛かる。
そして彼女は細く滑らかな両腕で俺の頭を抱え込むと、俺の頬に未だ付着していた幼虫の体液を、その小さな舌でペロリと舐めとった。




