その名はマイクロ葉っぱビキニ
森の探索は明日以降でも構わないだろう。
そう判断した俺は、夕食としてパナムスの果実を寝床に決めた岩山の洞窟へと持ち帰ろうと思い、その為の道具を探すことにした。
そして池と花畑のさらに外縁を囲む森の入り口で、それは簡単に見つかった。
樹木に絡み付くように自生している蔓性植物の山。
クレア様によると、この世界では特に珍しい種類ではなく、クリースプと言う名前の植物らしい。
これで編んだ袋にパナムスの果実を入れて俺の腰の辺りに括り付ければ、クレア様を背負ったままでも楽に移動できるだろう。
それ以外にも、クリースプの蔓にはいろいろと使い道がありそうだ。
俺はそう考えて、それらをどっさりと花畑に持ち出して来た。
それからしばらくの間、柔らかく大量の葉がついたクリースプの蔓を眺めていた俺は、突然のひらめきを得、おもむろにそれを自らの腰にぐるぐると巻き付けた。
「ふっふっふ。
ついに衣服を手に入れましたよ!」
誇らし気に宣言する俺。
そんな俺を見たクレア様は、無言でクリースプの蔓を二本持ち上げる。
そしてその内の一本を自らの胸に、一本を腰に、それぞれ一重にだけ巻いて括り付ける。
さらに何を思ったのか、それらの葉を次々に毟り始めた。
やがて大切な部分を隠しているものだけを残し、全ての葉を毟り終えた彼女は自然体で佇むと、
「どうだ?
貴様はこの方が喜ぶであろう?」
と、あの邪悪な笑みを浮かべて問いかけて来た。
こ、こ、これはエロい!
大事な部分が見えそうで見えないチラリズム。
そこには全裸とはまた異なった淫猥さがある。
起伏に乏しい彼女の肉体から、女性としての色香を引き出すそのデザイン。
名付けるならそう、マイクロ葉っぱビキニ!
腰を屈めた俺は、クレア様の方へと誘われるようにフラフラと近づく。
クレア様の顔が無表情に戻った気がするが、この誘惑を前にしては関係無い。
そして彼女の眼前にたどり着いた俺は、完全にしゃがみ込むと、彼女の膨らみの少ない胸へと、下方から見上げるように自らの顔を近づけて行った。
彼女の薄く浮き出た胸骨に、鼻が触れそうになる。
くんくん。
少女特有の仄かな甘い香り。
ああ、何て良い匂いなんだ。
少し顔の位置を下げ、彼女の透き通るように白く艶かしい肌と、クリースプの緑の葉の隙間を、さらに目線を上げて覗き込む。
神秘のベールに包まれたその暗晦を、俺は食い入るように凝視する。
駄目だ。
この位置からではどうしても影になって見えない。
そう判断した俺は、そのままの体勢でひょこひょこと彼女の左側面へと回り込む。
よし、後、少しで、その、小さな、可愛らしい、奇麗な、桜色の、突起物が……。
そう思った瞬間、彼女は突然こちらを振り向き一言。
「ええい、鬱陶しいわ」
俺たちが岩山の洞窟へと帰って来た頃には、日もかなり傾いて来ていた。
太陽が完全に沈めば、洞窟内部は完全な闇に包まれるだろう。
すぐに夕食を終えた俺たちは、早めの就寝タイムに入っていた。
温暖なこの島だが、この時刻になるとさすがに少し涼しくなっている。
この分だと、夜はもっと冷え込むかも知れない。
やはり、持って来て正解だった。
積みあげたクリースプの山に埋もれて、壁に背を預けながら、薄闇の中で俺はそう考える。
今俺の身を包んでいるこのクリースプの山は、今晩の寝床とするために、道中背中のクレア様にさらに背負って貰う形で、ここまで運んで来たものだ。
それほどの重量では無かったと思うが、彼女の重荷にはならなかっただろうか。
彼女は何も言わなかったが、出来るだけ負担はかけたくない。
それに、本来なら寝床には干し草などを作って利用出来れば良いのだろう。
それから、夜に洞窟内を照らす為や、飲食物の幅を広げる為にも、火を起こす技術を身につけなければ。
石を割れば、ナイフ等の簡単な石器も作れるだろうか。
俺が頭の中で今後の検討課題を整理していると、
「んん……」
という可愛らしい呟きが隣から聞こえて来た。
俺の腕にもたれ掛かりながら、既に静かに寝息を立てているクレア様が、何か寝言を漏らしたようだ。
触れ合った腕から伝わってくる、彼女の生命の温もり。
俺たちの行く先に光は見えない。
……だが、少なくとも俺の確かな光はここにある。
己が命に代えても守り抜いて行かなければならない存在の、天使のような寝顔を確認した俺は、決意を新たにしながらゆっくりと目を閉じる。
俺たちの怒濤の異世界生活一日目はこれで終わりだ。
だが、明日からも二人きりでの孤島の日々は続いて行く。
互いの身体を互いの体温で暖め合いながら、俺たちは寄り添うように眠る。




