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俺とクレアの異世界転生黙示録 〜純情編〜  作者: ゆか
激突!吸血姫対龍皇女!!二大魔人空中決戦編
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皇女

 俺たちを挟んだ龍帝スロヌスとの対角線上、大地に転がった巨大な岩石の上にその少女はいた。


 もちろん実年齢とはかけ離れているのだろうが、外見だけで判断するなら歳の頃はイリスよりも少し上、中学三年から高校初年度程度だろうか。

 胸の方もイリスより僅かに大きい程度で、まあつまり残念なサイズなのだが、それが彼女の美しさを損なうようなことは微塵も無い。

 星を散りばめたように輝くマリンブルーの滑らかな髪は腰に届く程に長く、背後の岩山の隙間から届く風に吹かれて流されるように揺らいでいる。

 その瞳の虹彩は光ディスクの記録面を思わせる、神秘的な文字通りの虹色。

 あどけなさを残しながらも美しく整った顔に観察するかのような表情を浮かべながら、涼やかに俺たちを見下ろしている。

 そして何よりも印象的なのは、真っ白でありながらも内に秘めた満ち溢れる生命力を感じさせる健康的な肌。

 つまるところ例によって、その少女も全裸だった。


 どうして俺の前には美少女が次々と何も身につけずに現れるのだろうか。

 いや、眼福ではあるのだけれど。


 そんなことを考えていると、いつの間にか再び俺の隣に立っていたクレア様が言葉を発した。


「あれが龍帝の子か」


 俺はそれを聞きビクリと飛び退くと、反射的に弁解してしまう。


「い、今あの子を眺めてたのは見蕩れてただとか浮気だとかじゃありませんよ!」


 だが、クレア様にはそんな俺を気にした様子も無い。

 俺はホッと一息つき、同時に浮かんだ疑問を彼女に尋ねる。


「……龍族って確か元は聖獣や魔獣が、長く物質界に留まりすぎて魔物になっちゃった存在ですよね。

 ピーちゃんなんかは身体がほとんど霊素(エーテル)で出来てるから人型にも姿を変えれますけど、物質的な肉体を持ってしまった龍族だとそうはいかないのでは?」


 その疑問には、これまたいつのまにか俺の逆隣に並び立ったイリスが、先ほどよりは少し語調を弱めて答えてくれる。


「どうやら先祖帰りみたいね。

 高い霊格を持った魂が物質的な肉体と結びつく前に、周囲の霊素を掻き集めて自分の身体を構成したって所かしら。

 けれど胎児の状態ならともかく、今のその子を形作る高密度の霊素を母龍一匹で賄えるとも、環境から取り出せるとも思えないわ。

 それを補う為にスロヌスが力を分け与えたと言う訳ね」


 そんなやりとりをする俺たちを終始無言で見つめていた青髪の少女が、イリスへと視線を集中し、ここにきてようやく口を開く。


其方(そなた)、もしかするとイリス=ブラッドベリーか?」


 淀みない清流を思わせる、良く通る澄んだ声だ。

 少女の呼びかけに対し、イリスが声音に少し楽し気なものを乗せて答える。


「あら、妾のこと知ってたの?」


 少女は頷きもせず、顔の位置を固定したまま答える。


「其方の事は父上から幾度も聞かされていた。

 なんでも妾へと力を渡す前の父上と、互角に渡り合ったとのことだが」


 おーっと!

 この子も妾系女子か。

 妾、全裸、貧乳は三点セットにでもなっているのだろうか。


 第三の少女を脳内で分類する俺をよそに、イリスがその少女へと返した言葉には、少し不穏なものが混じっていた。


「そういう貴方自身も強さなら負けないって顔ね。

 両親から引き継いだ力から来る自信かしら」


 ことあるごとに強者と戦うことが好きだと述べているイリス。

 そろそろ妾と戦おうとか言い出すんじゃないだろうか。

 俺の頭に少し嫌な予感が過る。

 しかしその提案は、意外にも龍の少女の側からもたらされた。


「妾は龍族の皇帝スロヌスが娘、アルディナ。

 吸血鬼の真祖イリス=ブラッドベリーよ、妾と一度手合わせを願えないだろうか」


 もしかしてこの子も交戦好きなのか。

 だが、それを受けてイリスが発した言葉は、俺の予想を完全に裏切るものだった。


「いやよ面倒くさい。

 貴方、戦っても面白そうじゃないもの」






 つまらなさそうに、若干嘲るように戦闘の誘いを拒否したイリス。

 俺たちを見下ろす龍帝の娘、アルディナの態度に変化は無い。

 だがその時、俺たちの背後から重々しくも穏やかな声が響く。

 これまで完全に沈黙を貫いていたスロヌスだ。


 ——済まぬイリスよ

 ——娘は先日人間に敗北を喫してな

 ——少々焦っておるのだよ


 横目でイリスの顔を見やっても、スロヌスの言葉に対し彼女が何を思ったのかはいまいち分からない。

 アルディナが、表情を変えず言葉を重ねる。


「母上を殺め、父上を貶め生まれたこの身。

 妾は何者よりも強くあらねばならないのだ。

 だが今の父上も含め、ここに妾の相手が務まるものはおらぬ。

 其方程の強者と(まみ)える機会は貴重なのだ」


 龍族の精神構造など本来俺の想像の及ぶ所ではないが、偉大な親が自分を通して見られることに対するプレッシャーのようなものだろうか。

 そんな風に俺が思考を巡らせていると、イリスが一度ため息をついた上でアルディナに疑問を投げかけた。


「当然妾には及ばないでしょうけど、戦って面白く無いと言うのは貴方が弱いって意味じゃないわ。

 見る限り人間如きに遅れを取るなんてとても信じられないのだけれど、貴方が負けた相手って誰?」


 アルディナは一度だけ瞬きを挟み、落ち着いた声で答える。


「名は知らぬ。

 だが、アークフリューゲン王国の勇者を自称していたな」


 それを聞いたイリスの顔が一転、どこか嬉しそうに怪しく歪んだ。

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