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俺とクレアの異世界転生黙示録 〜純情編〜  作者: ゆか
俺とクレアのイチャラブ全裸サバイバル、或いは島編
13/43

誕生

 毎度おなじみのクリースプの蔓で編んだ袋に食料を詰め、瓜のような植物の実をくり抜いて加工した容器に飲料水を入れ、俺は今、岩山の頂へとそれらを運んでいる。


 俺の背中には今、クレア様がいない。

 ここ半年程、昼夜を問わず彼女とぴったりくっついていた俺としては、非常に落ち着かない。


 先日飛来した巨鳥。

 あの聖獣は今更ながら、ここが本当に異世界なんだと言うことを俺に痛感させてくれた。

 そして聖獣が残した卵は今も、山頂に置かれたままだ。

 なぜなら、最初は俺たちが居住する洞窟へと運ぼうとしたものの、つるつるとしたその外殻が非常に滑りやすい事が判明したからだ。

 もし途中で落としでもしたら目も当てられない。


 その為、卵の保護と保温の為に干し草を山頂の窪みに積み上げ、俺たちは簡単な巣を作りあげた。

 クレア様が言うには、霊獣の卵は幸いにも数日もあれば孵るらしい。

 そういう訳で彼女は今も、その卵を見守りながら暖め続けている。


 そうこう考えているうちに、干し草の巣が大分近づいて来た。

 そんな俺の気配に気付いたのか、クレア様がひょっこりと巣の中から頭を出す。

 聖獣の卵を暖めていた彼女は、それが当然だと言わんばかりに何も身につけていない。


 無表情なのに、何故か非常に期待したものを感じさせる、彼女の小さく可愛らしい姿。

 それはまるで、彼女こそが餌を待つ小鳥であるかのように思わせる。


 すぐに、食べさせてあげますからね。


 俺は急いで彼女の前へと潜り込む。

 大きな白い卵を滑らかな四肢で腹に抱え込みながら、その花のつぼみのように可憐な口を無言で広げるクレア様。

 俺の顔をじっと見つめる蒼く深い瞳が、何故かその餌を早くよこせと言っているように感じられる。


 俺は食料袋から紅いさくらんぼのような果実を取り出し、ヘタを取ると彼女の口へとそっと押し入れる。


 すると彼女は俺の指ごと果実を咥え、俺の指をゆっくりとしゃぶるように押し出すと、もぐもぐと果実を咀嚼し始める。

 俺は自身の指に付着した、彼女の唾液を舐めとった。


 しばらくの間は果実の味を堪能するように口を動かしていた彼女だったが、ふいにその動きを止めると、再び口を開いて小さな舌を突き出して来た。

 その生まれたての子猫のような舌の上には、見事に果肉を削ぎ落とされた果実の種子がちょこんと乗っている。


 その種子を丁寧に摘み、そっと彼女の舌の上から取り除く。

 ぺろり。

 うん、甘い。


 その後も聖獣の卵から手を離せない彼女の口へと飲食物を運んだりしながら、俺たち二人は島の景色を眺めつつ食事を楽しんだ。


 そして、十分に満足したらしき彼女は、卵を抱いたままゆっくり横になると、全身を使って大切そうに、それを包み込むように丸まる。


 ええい、ずるいぞ卵さん!

 そこは本来俺の場所のはずだ!


 安らぐようにそっとその双眸を閉じるクレア様を見ながら、俺は卵相手に軽い嫉妬心を募らせていた。






 胸部に接触していたクレア様の背中がピクピクと動くのを感じ、俺はそっと目を開く。

 まだ日は明るいが、卵を抱えたまま眠りに落ちてしまったクレア様を、俺はさらに包み込むように抱きしめていた。


「そろそろ孵りそうだ」


 いつの間にか目を覚ましていたクレア様がそう呟く。

 動いていたのは彼女ではなく、卵の方だったらしい。


 俺たち二人は起き上がり並び座ると、食い入るようにその瞬間をじっと待った。


 間隔を空けながらピクピクと震えていた卵は、やがてその動きを止める。


 ピシリ。


 割れるような音と共に、卵の殻にヒビが入った。

 そしてそのヒビが自然に広がると共に、支えを失った殻が卵の内側へと陥落して行く。

 その穿孔からは、淡い白色の光りが漏れ出している。


 そしてとうとうその中から、全身を白い産毛に包まれた、大きな雛鳥が姿を見せた。

 親鳥の銀色とは違い、まるでクレア様の髪のように真っ白な体毛だ。

 それに孵ったばかりだというのに、身体が濡れている様子も無い。


 とっても可愛い上に、凄く奇麗だ!


 俺がそんな感想を抱いていると、雛鳥はゆっくりとその目を開く。

 その瞳もまたクレア様の如く、相手の心を見透かすような蒼。


「なんだか、クレア様に似てますね」


 俺は思わず素直な感想を漏らす。


「霊獣はその名が示す通り、極めて霊的な生物だからな。

 側にいた妾の霊格に影響されたのかも知れん」


 さすがは神様。

 目に見える力は失っても、その本質的な影響力は依然高いままなのだろう。


「お、俺の影響はどうです!?」


 クレア様ほどじゃなかろうと、俺もずっと側にいたのだ。


「ゴマつぶ程ならあるかもな」


 おお。

 と、言うことは。


「じゃあ、この子はあの親鳥の子供と言うだけじゃなくて、俺とクレア様の子供とも言えますね!」


 まさか直接クレア様との間に命を授かる前に、こんなイベントが発生するとは。

 聖獣さん、あなたの子は俺が絶対立派に育て上げてみせます!


 そう強く決意する俺の耳に、クレア様の曖昧な返事が返ってくる。


「ああ。

 ……うん?

 まあ……そう言えなくも……ないか」


 そんなやりとりをする俺たちに対し雛鳥は、俺とクレア様の顔を見比べるように交互に見回すと、自身の存在を主張するかのように小さな翼を広げ、上を向き小さな産声をあげた。


「ぴー!」


 思わずこちらの笑みがこぼれそうになる可愛らしい声。

 それを聞いた俺に、天啓が降って来た。


「よし、お前の名前はピヨスケだ!」


 その愛嬌ふるまく可愛らしい姿に相応しい、実に良い名前だ。

 だが、会心の名付けに満足している俺に対し、クレア様の態度は何故かとても冷たかった。


「酷いネーミングセンスだな」

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