表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VRMMO『SoulOver』  作者: 夜風
序章「僕はアリス」
3/3

3.修行開始

あ、危ない……。投稿を忘れていた。

 

 

顔が燃える様に熱かった。男の……ファングの顔もまともに見れない。

 

あのあと、失禁してしまった僕は恥ずかしさを堪えながらファングとフレンド登録して、隠れ家の位置を教えて隠れ家の中に入った。

 

そしてファングが戻って来て、上下三着ずつ買ってきた中から適当に一つ選んで着込んで、今に至る。

 

「ふむ……。中々隠れ家は快適な空間だな」

 

ファングの一言に、話をずらしてくれたのかな?と考えつつ、横目に部屋の内装を見る。

 

土と根だけだったあの穴蔵は、見事に綺麗になっていた。

 

天井と壁は土丸出しだが、平らに均してあり、床には木の板が並べられてフローリングになっていた。

 

更に木の根を使って造られたベッド、テーブル、椅子。木製の箪笥とキッチンまであった。

 

……トイレはなかった。

 

「さて、それじゃあアリス。お前の事情について聞かせてくれ」

 

僕はファングに洗いざらい吐き出す様に伝えて行く。キャラクター作成のバグ、開始地点が空中だったこと、赤い女性、Aiスキル、ステータスの低さ。……ただ、嫌われるのが嫌で、自分が男だということだけは話せなかったが。

 

そして、気が付いたらファングに抱きしめられていた。

 

「……よく耐えたな。アリス」

 

「………うん」

 

僕は、ファングとなら、きっとやっていける。心からそう思った。

 

 

 

……………………………

<アリスによる世界改変について>

アリスはこの仮想世界にジャックして、この『SoulOver』の支配者となった。その時、世界の設定を改変している。

まだ詳しい事はわかっていない。だが、ハッキリわかっている事は三つ。

・サーバー中のプレイヤーが始まりの街に戻され、アリスの演説を聞いた事。それによると、一応アリスを倒せば解放してくれるらしい。

・LVやスキルLV等が全て初期化された事。

・死んだら蘇生出来ない。つまり、そのまま死んでしまう事。

……………………………

 

 

「そんな……ッ!?死んだら、蘇生出来ない!?」

 

「そうだ。ゲーム内の死が現実に直結する、『デスゲーム』なんだ。だから一人で森を探索するなんてかなり危険な行為だったんだ。見た感じ初期装備だったしな」

 

因みに初期装備とは、さっきダメにしてしまった白いワンピースである。

 

「それと、さっき一つ新たに犯人アリスの改変した事がわかった。どうやら、かなり現実に近く設定されたらしい。最初は痛覚のリミッターが外れたのかと思ったが、それだけじゃない」

 

ファングが指差す。見ると、僕の右膝に怪我があった。

 

「あ……いつの間にか怪我してたんだ」

 

「ダメージは受けても怪我はしなかった。更に、この世界では尿や便の必要はなかったはずだし、汗まで掻く。つまり、現実の法則がこの世界に取り入れられたようだ。……ジャックしたアリスは、この仮想世界を現実にしたいらしい」

 

思わず僕は感心した。そこまでプログラミングするなんて。

 

「そういえば、気持ち悪くなって吐いちゃったんだけど、現実そのままだったよ」

 

「そんな所まで造られているのか……。なら、性交も子作りも出来るかも知れないな」

 

ゾゾゾ!と背中に冷たいモノが走る。ファングから反射的に距離を取った。

 

「…………」

 

ファングはうなだれた。

 

 

 

「さて、アリスのステータスの事なんだが……」

 

「あ、うん」

 

 

 

……………………………

アリス 女性 LV1→5

・アビリティー

AiスキルL1

なし

・ステータス

HP1→5

SP1→5

攻撃力1→5

防御力1→5

知力1→5

守護力1→5

敏捷力1→5

『(自己紹介)』

……………………………

 

因みに、忘れてはいけないが、既に4ダメージ受けて残りHPは1である。

 

「酷いな……。少なくとも、LV1のステータスはこんな感じだ」

 

 

 

……………………………

モブ 男性 LV1

・アビリティー

なし

なし

・ステータス

HP20

SP18

攻撃力9

防御力11

知力8

守護力9

敏捷力10

『(自己紹介)』

……………………………

 

「一応設定したキャラクターの体型や様々な要素が合わさって大体こんなステータスになるはずなんだ」

 

「一体どんな要素が合わさってるのこのキャラクター……」

 

明らかに残念なステータスである。

 

「ラッキーなのは謎のスキルを何故か初期から取得している事と、全ステータスが必ず上がるくらいか。普通はランダム上昇で3つから5つ位しか上がらない」

 

「それでもHPはLV20必要なんですよね……」

 

「いや、そうでもないぞ。特定のアイテムの使用や装備の効果、あと、元々の仕様でステータスが上がりにくい代わりに修行によってステータスを伸ばす事が出来る」

 

そう。『SoulOver』において、LVは『修行』で覆す事が出来るようになっている。

 

修行の方法は様々だ。HPなら隠しステータスの『スタミナ』が失くならないように走り続ける事、攻撃力はひたすら筋トレや重い剣を装備し続けたり等、様々な方法でステータスを強化出来る。

 

ただし、かなり頑張って1しか上がらないので、常日頃からやり続けないと効果は出ない。

 

「つまり、コレは元々だが、結局現実に近い設定なわけだな」

 

(ああ、そっか。紅い女性の人はだからランニングしていたんだ)

 

始まりの街外れの広場で赤い女性が走り込んでいた理由がようやくわかったアリスだった。

 

 

 

「という訳で、『修行』とLV上げを同時に行う事によるステータスの強化を行う!」

 

「おす!」

 

秋風の森にて、ファングの宣言に続いてアリスが気合いを入れた声を上げる。

 

「……女の子がそんな声を出しちゃいけません」

 

「う……」

 

中身は男だとは言えないアリス。渋々「はい……」と答えた。

 

「まずはパーティーを組んでもらう」

 

……………………………

キャラクターカード

アイテム

アビリティー

パーティー←

フレンド

設定

……………………………

パーティー申請←

パーティー解散

パーティー確認

……………………………

『ファング』様にパーティーを申請します。

……………………………

『ファング』様がパーティーに入りました!

……………………………

パーティーメンバー

アリスLV5

ファングLVEpアメk○ジ@

……………………………

 

「あ、あれ?」

 

なんだろう?ファングのLVがバグってる?

 

「そこは気にするな。問題は無いから」

 

「そ、そうなの?」

 

「ああ。……それより修行とLV上げを同時にやっていくぞ」

 

「あ、うんわかった」

 

ファングが大丈夫だと言うならとアリスはその事を忘れる事にする。

 

「修行ではHPを伸ばそうと思う。不安だからな。そしてその方法が、『持久走』だ」

 

つまり、隠しステータスの『スタミナ』を無くならないように走り続ける修行である。

 

「『スタミナ』はHPが高ければ高いほど多い。アリスは少ないが。スタミナを回復する方法が立ち止まって休むか、ドリンクタイプのアイテムを飲む事だ」

 

ファングに小さな赤い瓶を渡された。

 

……………………………

HPポーション(小)

小さな赤いポーション。HPを10回復する。

……………………………

 

「飲め。HPが1のままだ」

 

「ありがとう」

 

HPポーションを飲み干す。苦い……。

 

「10個渡しておく。コレを飲みながら走り続けろ。モンスターと遭遇したら俺が倒す。パーティーだから経験値は分配される」

 

そっか。これで僕は効率よくステータスを上げられるんだ。

 

「よし、じゃあ修行を始める」

 

 

 

「まだまだ疲れるには早いぞ!まだポーションは飲むな!勿体ない!」

 

三十後、ファングは鬼教官と化していた。

 

アリスはゼェ、ゼェ、と荒い息を吐き出しながらふらふらと走る。

 

「もう、いやぁ……やすませてぇ〜……」

 

「ダメだ!HPは順調に伸びている!」

 

確かにHPは5から8に増えていた。しかし、途中で止めればまた上げる為には決められた時間走らなければいけない。つまり、損なのだ。

 

 

 

「ゼェ、ゼェ、ゼェ、ゼェ……」

 

「よし、終わりにするか」

 

ファングのその言葉と共にバタリと倒れるアリス。

 

ポーションは使い切り、HP最大値は10にまで上がった。

 

「も、もうやりたくない……」

 

思わずそうこぼすアリスだった。

 

 

 

次の日

 

「今日は戦闘訓練を行う!」

 

再び朝から秋風の森にて、ファングが今度は訓練を宣言した。

 

「戦闘訓練?」

 

「そうだ。いくらLVが高くても戦い方が下手だと実力を出し切れない。その為の戦闘訓練だ」

 

例えば剣術スキルを取るとする。当然、剣を武器に戦う訳だが、スキルはSPを必要とする。つまり、ある程度剣を使いこなせなければならないのだ。

 

「だが、アリスの『Aiスキル』は中距離タイプの支援や阻害系のスキルだろう。戦闘向きでは無いから新たにスキルを習得し、それを鍛える」

 

そう言うとファングは弓を取り出した。

 

「『弓術スキル』なら遠距離からの攻撃が可能で、ダメージは弓の性能が大きく反映される。後は使用者の技量次第だ」

 

弓を渡され、構えてみる。

 

「こんなかんじ?」

 

「俺が弓の扱いなんか知るか」

 

「あ、そう」

 

仕方ないのでファングから矢を受け取り、装備。適当な木の……果実を狙う。

 

ーーヒュッーータッーー

 

「…………」

 

矢は狙い通り果実のへたに命中し、実には傷一つ無く地面へと落ちた。

 

「ヨシ!成功!」

 

落ちた果実を拾い上げてみる。

 

色は真っ赤。形はバナナそのまんまで、へたは青色である。

 

……………………………

カナナの実

秋風の森に実る激辛の果実。果汁が凄まじい量で、激辛料理に使われる。

……………………………

 

「うへぇ、辛いのは好きじゃないなぁ。一応貰っておこう」

 

「………ってアリス!?なんでそんなに上手いんだ!?」

 

「へ?ゲームだからじゃないの?」

 

ファング、溜息。このゲームは現実に近く設定されている。つまり、風や重力だって影響してくるのに、『木の凄く高い所に実るカナナの実を離れた場所から射抜くなんてことは熟練者でも難しい』のである。

 

今、アリスは遊ぶように矢を射て(たまに投げて)全てカナナの実のへたに命中させて落としている。どうやら偶然ではなく、無意識な才能らしい。とりあえずアリスを弓使いとして鍛える事を決めたファングだった。

 

 

 

……………………………

弓術スキルL1

<フレイムアロー>

矢に炎を纏わせる事が出来る。使用者にはダメージは無い。

使用条件『矢を所持・名称読上』

消費SP6

……………………………

 

「SP足りてないよ……」

 

SPは最大値5である。

 

「大丈夫だ。それだけ矢を命中させられるならスキルなんかいらん」

 

ファングはそう言っているが、不安だった。

 

何故なら、これから戦闘訓練が始まる。少し離れた所にいる『ビックベア』を倒さなければいけないのだ。

 

そうだ!Aiスキルの痛覚刺激で……!

 

「あ、Aiスキルは使用禁止だからな」

 

ガクッとうなだれたアリスは、仕方なく弓をビックベアへ向けた。

 

何処を狙おう?目?なんか怖いよ……首?苦しませちゃいそう……

 

思惟して、矢を放った。……ビックベアの耳に。

 

「グガアアアアッ!?」

 

激痛。しかしダメージは少ない。激怒するビックベア。

 

「わ、わ、わ!?こっちきた!?」

 

思わず痛覚刺激を使いそうになって、しかし禁止されていて思い止まる。しかし次の矢を落としてしまった。

 

「グガアアッ!!」

 

「ヒッ!?」

 

ズドォォン!

 

ビックベアの拳を間一髪避けるアリス。

 

「た、たすっ!ファング!?」

 

辺りを見回してファングを探す。しかし、ファングの姿は見当たらない……。

 

「グガアアアアッ!!」

 

「うわあああああ!?」

 

襲い掛かるビックベア。またもや間一髪避けるアリス。

 

(……く、これ以上は無理か)

 

木の上でアリスの戦いを見ていたファング。アリスを助ける為、木の枝から飛び降りる。

 

………前に、ビックベアが突然苦しみだした。

 

(なんだ……?痛覚刺激ではなさそうだが?)

 

アリスを見た。何かを……カナナの実を投げていた。ビックベアの口へ正確に。

 

「キアアアアアアッッッ!!!!」

 

アリスが奇声を上げてビックベアを押し倒す。その手には、矢。

 

「グガガガッ!?!?」

 

ーードスッドスッドスッドスッドスッドスッドスッドスッドスッドスッドスッドスッドスッドスッドスッドスッドスッドスッドスッドスッグチュッグチュッグチュッグチュッグチュッグチュッグチュッグチュッグチュッグチュッグチュッ………………。

 

 

 

………アリスのLVが上がった。

 

 

 


さて、一応コレで序章は終わりです。次から1章に進みますが、全然完成していません(笑←ココ笑う所?

もしかしたらしばらく先になるかも知れませんが、気長にお待ちください。あくまでマイペースに作者は書きますので。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ