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the loop world  作者: 灰雲
17/18

ホラー映画

「おめでとう」


何が?何がどうなって「おめでとう」、なんて言葉が出てくる?

いや、そんな事に理由を知る必要はない。

それよりも、何なんだ?この状況は。


「どうして黙っているんだ、勇気?」


……帰れよ。誰だよお前は……。

俺はずっと俯いていた。顔を上げる事など無理だ。


「こっちを見ろ」


その声は……大樹か……。じゃぁ、後ろに魅喜が居るんだな。

一体何の用事だよ……。

早く帰れよ……。


「せっかく来てやったのに。ずっと黙っているのか?……それより」

「ねぇ勇気。このチェーンを外してくれないかしら?」


外せるわけないだろう。外したら、俺が無事でいられるなんて保証、どこにあるってんだ……。

こいつらの今までの異常な行動見てれば、誰だって外さないだろう。

ドアノブを執拗にまわし続けたり、人の家の周りに張り付いたり。


俺は二人を前にして、必死に冷静さを装った。

だが、どんどん頭に酸素が回らなくなってきている……。


「何で黙っているんだ?」


大樹の声が急に低くなった。途端に俺の心臓が跳ね上がる。息苦しい……!!

逃げ出そうとして、足を後ろに無理やり引っ張る。が、玄関の段差に躓き、その場にぺたんと座り込んでしまった。

そして同時に視線がドアへと向かう。



「開けろ」

「開けて」


やはり予想していた通り。二人はもう正常な状態じゃない……!!

虚ろな目。ただ空気を吸って吐いているだけの、ぽっかりと開いた口。血の気の無い、青白い肌。

こんな事、ホラー映画の中でしかないと思っていた。所詮、人間が異常な状態になるなんて、無いと思っていた。

じゃあこの、目の前に広がる状況は何だ!?ホラー映画そのものじゃないか!

だが感じる恐怖はそれ以上だ。二人はもう人間じゃない何かに成り果てた。

……逃げなきゃ……!!


「開けろ」

「開けて」


二人はもっと低い声で脅すように話しかけてくる。

体を持ち上げ、這いずり回るように玄関から離れようとした。


ガンガンガンガンガンガン!!!


金属質な音がけたたましく響く。ドアの方からだ。


「何をしてるんだよ、二人とも……」


後ろを振り向くべきだ……。映画のように、振り向いてエンディングなんて、あるわけが無い……。

俺は、恐る恐る後ろを振り向く。


そこには……


「やめろぉおお!!開けるなあぁぁ!!」


はっきりと目に焼きついた、その光景。俺の恐怖心が爆弾となって爆ぜる。

大樹が、チェーンを引っ張っては戻し、引っ張っては戻し、力任せに振り回している。それがあのやかましい音の正体だった。

だが、それだけでは終わらない。

いつまでも執拗にチェーンを振り回す大樹の後ろに、魅喜が手を掲げて立っているのを見た。

魅喜がゆっくりと大樹に近づく。魅喜の目線は、大樹の手元――いや、チェーンに向いている。

そして勢いよく、その手を振り下ろした。


ガツンッッ……


金属がぶつかり合う、硬い音。その音に、思わず体をまげて、耳をふさいだ。

……それきり、何の音もしない。ゆっくりと頭を持ち上げ、その瞬間にまた金属音が鳴り響いた。


「……血……?」


チェーンから血が滴り落ちている。否、大樹の手に何かが食い込み、血が滴り落ちているのだ。

魅喜が振り下ろしたもの。それは……どこから持ってきたのであろうか。……巨大な鋸……。



幾つもの刃が、大樹の手に食い込んでいる。もう、皮はほとんどが破れている状態だった。

魅喜が鋸を振り下ろすたび、大樹の手の甲がザクザクと切られ、血が吹き出てくる。あんなに強く振り下ろせば、肉どころか骨にまで傷が届いているはずだろう。

また鋸を持ち上げる。すると、の甲に食らいついた刃は、抜けまいと言わんばかりに肉にしがみ付く。それでも持ち上げようと勢いよく振り上げる。空気を切る音と一緒に、肉がバリバリと裂ける音が……!!


それでも大樹は、顔色一つ変えず、ずっとチェーンを揺らし続けていた。それどころか、さっきよりも揺らす力が強くなってきている……!!


「……帰れぇぇぇええぇぇ!!帰れ帰れ帰れ帰れよぉぉおおお!!!」





気が付けば俺は、ドアに思いっきり体当たりをぶちかましていた。二人ともその衝撃で、ドアの向こうへ吹き飛ばされる。

瞬間、ドアを閉め、鍵をかける。


「はぁ……はぁ……はぁ……!」


ドアをじっと睨みつける。チェーンは真っ赤に染まり、俺の足元には血だまりができていた。

落ち着こうと深く息を吸い込む。体中の酸素が失われ、もう今にも倒れそうだった。

吸った息を、外に吐き出して……


ガツンッ!!


ドアが揺れて、大きな音が玄関にこだまする。俺は驚き、吸った息を外に吐き出せなくなってしまった。さっきよりも苦しい……。

「何なんだよ!さっきから!」

誰も居ない玄関の中で、一人喚く。

だが、その後もずっとドアに何かをぶつけるような音が続いた。

何も考えず、玄関から逃げ出す。もう嫌だ。怖い怖い怖い怖い!!


廊下を走り抜け、寝室に逃げ込む。不幸な事に、テレビはついておらず、明かりも無かった。

「……もう寝よう。……怖い……」

敷きっぱなしにしてある布団へと潜り込もうとする。毛布に手をかけたその時、見計らったかのように雨が降り出してきた。

勢いよく雨粒が屋根を叩きつける。バタバタを音が聞こえる。雷も鳴る。風も鳴る。どうしてこんな時に……?

「窓開けっ放しか……。閉めないと……」



毛布を離し、窓へ近づく。そこで俺はふと立ち止まった。頭の中で警告が聞こえてくる。

この窓に近づくべきではない、と。

俺はその声に従い、布団へと急いで飛び込んだ。あからさま過ぎる。狂った友人が訪れ、異常な行動をして、雨が降り、窓が開いていて……。

何が何でも出来過ぎている。まるで、映画か何かのような完璧な、作られた演出……。そう、誰かに作られたような……。




布団を頭まで被って寝ようとした。だが、あんな事がさっきあったばかりなのだ。眠れるわけが無い。

それでもどうするわけにも行かず、ただ朝が早く来るように祈っていた。

「窓……閉めてないから、明日はどうなってるだろう……」

そう思った瞬間、窓から誰がこっちを覗いているような感覚に襲われた。一度こんな状態になったら、もう振りほどけない。

気のせいだ、と何度も言い聞かせる。意味が無いのに……。


すると今度は窓を見たくなってきてしまう。自制心と、好奇心と、恐怖心が入り混じったこの気持ち。

誰か助けてくれ……。俺が俺でいられなくなりそうだ……。


「やめろ」「見ろ」「怖い」


いつまでも自問自答を続けていれば時間が過ぎるだろう。そう思っていた。

しかし、いつまでたっても時間は過ぎてはくれない。時計の針も、この時ばかりは全然進んではくれない……。


「見ろ」「怖い」「見ろ」「やめろ」「見ろ」


どんどん好奇心が強くなってくる。見れば当然、最悪の結果を招く事になるのは分かっているのに。


……ちょっとだけだぞ?ほんの少しだけだぞ?

「やめろ」

誰も覗いているわけがない。こんな雨の中なんだから。見たってどうって事は無い……。

「怖い」

俺はそんなに臆病じゃ「やめろ」ないんだからな……「怖い」別に何があったって……「見ろ」


…………俺は見る。


「見てやる……」


そう決心がつくや否や、俺ははじき出されるように布団から飛び起き、窓へと目をやった――。






……ちょっとくどいかもしれないですね、今回の話w

ああ、もっとスッキリ簡潔に、なおかつしっかり伝えられる文章力があったらなぁ……。

精進あるのみ (((´・ω・`)

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