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『縺阪→縺帙s』病

掲載日:2026/04/15

眼覚める

ベッドは元通り白く、躰の傷も失くなって居る


身を起こす

カーテンが外からの光に、白くたなびいて居る


きっと外には出られないのだろう、という確信が在った



絶望が心を埋め尽くして居る

僕は確実に、この部屋で、憶えて居る限り90回以上自殺を繰り返して居る


合理的には説明が付かないが、時間が繰り返されて居るのかも知れなかった


ベッドの直ぐ横にあるテーブルには、木材はおろか石材ですら切断してしまえそうな、大きなナイフが置いて在る

これは、恐らく昨日であると思われる時間に、自分で用意したものだ



ベッドの端に腰掛けて、ナイフを両手で握る

切っ先を自分へと向け、近付ける



───やめた


────もう沢山だ


僕はナイフを投げ捨てると、再びベッドに横たわり、白い白い天井を視た


最初は「何かしらの法則を満たせば死ぬ事が出来る」のかとも思ったが、そういう事でも無さそうだった


ナイフは、きっと何の障害も無いかのようにすんなりと僕に突き刺さり、躰を切り裂く事だろう

しかし、それはただ痛いだけだ


この繰り返しの中で、気付いた事がある

それは「どのような状態になろうとも、僕の精神は絶対に狂気に陥らなくなってしまって居る」、という事だ


実験の為に敢えて、苦痛の多い死に方を行った時が数回有る

自分の神経線維を引き摺り出して、そこに苦痛や打撃を与える事を繰り返したのだ


しかし僕は痛みで気が触れる事も無く、それに伴ってか、痛みが麻痺する気配も一向に存在しなかった



「また、煙草でも食べて死ぬかな……」


これだけの時間が孤独なまま経過して居るのに、僕は言葉を忘れて居ない

『やはり』『同じ一日が、繰り返されて居るのだろうか』と、ぼんやり思った



「煙草……」


「そうか、煙草か……」


立ち上がると、部屋の棚を漁る

あんなに在った筈の煙草が、今では残り数本になって居て、僕は棚を開けたままの姿勢で動きが止まってしまった



───何故、巻き戻される筈のこの部屋で、煙草の量が減って居るのだろう


何か、思い違いをして居るのかも知れない

僕は情報になりそうな物を探して、視線を部屋中に巡らせた


日めくりのカレンダーが、今日が4月の15日である事を知らせて居る

僕は咥えようとした煙草を取り落とし、それを拾う事もなく今度は机へと向かった


引き出しから日記を出して、机の上に広げる

頁をめくる


一番最後に書かれた日記には、「今日ですべて終わらせる 2025年12月29日」と記されて居た



再び棚の前に戻る


煙草に火を付ける



この事について考える時間は、まだまだ沢山在りそうだった

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