『縺阪→縺帙s』病
眼覚める
ベッドは元通り白く、躰の傷も失くなって居る
身を起こす
カーテンが外からの光に、白くたなびいて居る
きっと外には出られないのだろう、という確信が在った
絶望が心を埋め尽くして居る
僕は確実に、この部屋で、憶えて居る限り90回以上自殺を繰り返して居る
合理的には説明が付かないが、時間が繰り返されて居るのかも知れなかった
ベッドの直ぐ横にあるテーブルには、木材はおろか石材ですら切断してしまえそうな、大きなナイフが置いて在る
これは、恐らく昨日であると思われる時間に、自分で用意したものだ
ベッドの端に腰掛けて、ナイフを両手で握る
切っ先を自分へと向け、近付ける
───やめた
────もう沢山だ
僕はナイフを投げ捨てると、再びベッドに横たわり、白い白い天井を視た
最初は「何かしらの法則を満たせば死ぬ事が出来る」のかとも思ったが、そういう事でも無さそうだった
ナイフは、きっと何の障害も無いかのようにすんなりと僕に突き刺さり、躰を切り裂く事だろう
しかし、それはただ痛いだけだ
この繰り返しの中で、気付いた事がある
それは「どのような状態になろうとも、僕の精神は絶対に狂気に陥らなくなってしまって居る」、という事だ
実験の為に敢えて、苦痛の多い死に方を行った時が数回有る
自分の神経線維を引き摺り出して、そこに苦痛や打撃を与える事を繰り返したのだ
しかし僕は痛みで気が触れる事も無く、それに伴ってか、痛みが麻痺する気配も一向に存在しなかった
「また、煙草でも食べて死ぬかな……」
これだけの時間が孤独なまま経過して居るのに、僕は言葉を忘れて居ない
『やはり』『同じ一日が、繰り返されて居るのだろうか』と、ぼんやり思った
「煙草……」
「そうか、煙草か……」
立ち上がると、部屋の棚を漁る
あんなに在った筈の煙草が、今では残り数本になって居て、僕は棚を開けたままの姿勢で動きが止まってしまった
───何故、巻き戻される筈のこの部屋で、煙草の量が減って居るのだろう
何か、思い違いをして居るのかも知れない
僕は情報になりそうな物を探して、視線を部屋中に巡らせた
日めくりのカレンダーが、今日が4月の15日である事を知らせて居る
僕は咥えようとした煙草を取り落とし、それを拾う事もなく今度は机へと向かった
引き出しから日記を出して、机の上に広げる
頁をめくる
一番最後に書かれた日記には、「今日ですべて終わらせる 2025年12月29日」と記されて居た
再び棚の前に戻る
煙草に火を付ける
この事について考える時間は、まだまだ沢山在りそうだった




