第8話:ゴール地点
1132年132日14時間22分。
何かと言われたら、ゼノ・グラウンドによる調査が開始から、ゴール地点であるエネルギーの集約地点まで掘り進めるのに掛かった時間だ。
正確には、セブンスとラプラスが調査を始めたからになるので、それ以前からの調査を含めると、期間は更に伸びることになる。
それでもセブンスにとっては、長すぎる期間と言っていいだろう。
あまりにも長い期間の上に、マスターが消失したことによって、セブンスにとってゴール地点に何があるかというよりも、辿り着くことだけが目的となっていた。
だからこそ、ゴール地点にあった存在に戸惑うこととなった。
「エネルギーの結晶、いやクリスタルっていったほうがいいのかな。それで終わりかと思ったけど……」
「まさか、人間の男性……? クリスタル内部をスキャンできないので、本当に人間かどうか判定は不能ですが」
いつも明瞭な答えを告げるラプラスでさえ言葉を濁す。しかも、ラプラスの持つ高性能な探知機能をも弾くとなると、クリスタルも単なるエネルギーの塊ではないのだろう。
セブンスの予想であったエネルギーの結晶ではない。いや、エネルギーの結晶は間違いとは言えないが、それで自分の予想が合っていたと言い張ることはできない。
むしろ、何かいるという意味ではファーストの方が近く、人間の男性の形という意味では――
(運命の人……ね。まあ、もうマスターはいないし。そもそも、生きている訳ないだろうし……………………いや)
膨大なエネルギーの集約地点。
クリスタルだけなら、単なるエネルギーの塊ではないにしろ、結局は何か特別な力を宿している鉱石系という枠組みからは外れない。だが、そのクリスタルに生物が閉じ込めれているのなら、その生物のためにエネルギーが集約している可能性もある。
(もちろん、巻き込まれただけの可能性もあるけど……どちらにしても、中身を回収するべきか)
どうでもいいという気持ちもあるセブンスだが、流石に1000年以上も費やした時間の成果物を見つけただけで済まそうとも思えなかった。いくらでも時間を無駄にしてきたのだ。もう少しだけ時間を使ってもいいだろう。
「ハァ」
思わずため息を吐きながら、ラプラスに目を向ける。
「とりあえず研究所に運ぼうか、ラプラス」
「エネルギーの集約地点である、安易にこの場所から移動させるのは、リスクが高いといえます。明らかに自然に発生するはずのない空間の歪みに、エネルギーの集約。直接的な調査をこの場ですることを推奨します」
「そっちの方がリスク高くないかな!?」
「私たちのリスクではなく、このクリスタルと内部いる存在に対してです。移動させたことで砕け散ってもいいとも?」
「…………」
「セブンス、いえ、マスターが求めた物です。見つけて終わりにするべきではないです。無駄な時間にするのか、それとも意味あるものにするかは、あなた次第です」
何があるかなんている興味はどんどん摩耗していった。ゴールに辿り着いたら全て終わりにできると思っていた。
どんなに貴重な物があっても、一人で見つけても、誰かと喜びを分かち合えないなら意味などない。そして、マスターどころか、他の姉妹も既にいない。
正直にいえば――
「セブンス?」
「私は、別にどうでも」
不意にマスターの言葉を思い出す。
(運命の人か)
改めて、クリスタルの内部いる男性をマジマジと見つめる。