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第50話:子供達を助けるお仕事

 正直に言えば、人間がいることにあまり期待していなかった。


 灯りを見つけた時は、テンションも上がったが、セブンスとラプラスの獣人あたりの魔物ではないかというツッコミに納得してしまっていたからだ。


 普通に考えれば、こんな場所で人が住んでいる建物がポツンとある分けないだろう。


 だが、日が昇り、家に近づくと、他の廃墟と違い、窓ガラスは壊れておらず、ドアも設置されていた。


 もちろん偶々の可能性もある。


 「生体反応があるね。人が魔物かは分からないけど」


 何かがいるのは確定した。


 他とは少し違う感覚を感じながらも、魔物であることを考えると、ノックをしたり、呼びかけるのも何だか変な気がする。かといって、仮に人が住んでいる可能性があるなら、勝手にドアを開けるのも不味いだろう。


「どうしましたか?」


 ドアを前に何もせずに立っている時雨悠人を不思議に感じたのか、ラプラスが声をかけてくる。


「いや、勝手に開けるか、ノックとかするべきか悩んでいて」


「とりあえず、開ければいいのに」


「とりあえずって……」


 セブンスも、ラプラスも時雨悠人ほどに、人間がいようが、いなかろうがどっちでもいいのか雑な感じだ。おそらく、人間が居たとしても勝手にドアを開けていいと思っている節がある。


「と、とりあえず……インターフォン……なんてのもないし、ノックを――」


 ガチャリ


 「へ?」


 突然ドアノブが動き、思わず変な声が出る。


 それと同時にドアが開き――


 「シル先生!?」


 一人の女の子が出てくる。


 「子供?」


 「魔物ではなかったですね」


 セブンスとラプラスが自分の背中ら覗き込むように、家から出てきた女のを確認する。


 「人間が居た!? えっと、こんにちは?」


 自分たちを見て、目をぱちくりとさせている女の子に思わず、挨拶と共にお辞儀をする。


(シル先生? その人が来たと思ったのかな?)


 おそらく、目の前の女の子は、その人と間違えてドアを開けてしまったのだろう。


(子供とはいえ、せっかく会えたんだし、何とか事情を……え!?)


 思わず体が動く。


 ゆっくりとこちらに向かって倒れてくる目の前の女が、地面に倒れる前に抱き止める。


 「だ、大丈夫?」


 「……」


 返事はなく、気を失ってしまったようだ。


 「え、俺何かした? ん?」


 気を失っているが、息は荒く、汗の量も尋常ではない。


 「あまり芳しくない状態のようですね……」


 「何かの病気かな? 私達のことを先生? と間違えていたし、医者と間違えていた……とか?」


 「とりあえず、家の中に……あれ、生体反応って1人だっけ?」


 「複数……彼女を含めて5人だね」


 セブンスが改めて家の中を見通しているかのようにジット見つめる。


(なら、他に4人いるんだよな? なんで誰も来ないんだ?)


 不気味と物音も何もしない。


 家の中に他にも人がいるのに、玄関でこれだけ騒いでも、誰も駆けつけてこない。


 それが、どうにも不気味だ。


 「誰かいませんか!」


 家の中に向かって大声で叫ぶ――が、返答もなければ誰かが来ることもない。


「私とラプラスが先に確認してくるよ。マスターは待っていて」


「そうですね」


「……お願いしていい? 俺は、この子を見ているから。あと……荒事はできる限り抑えてね」


「向こうが何もしてこなかったら……でいい?」


「こっちが勝手に入るんだから最低限ね」


「む、わかったよ」


「それでは行ってきます」


 そう言うと、二人は家に入っていく。


 (まあ、あの二人なら何かあっても大丈夫だろう。それよりも……)


 問題なのは、気を失ってしまった女の子だ。


 汗が酷く、息荒く、顔色も真っ青となっている。服なども汚れが目立っており、よく見ると服から怪我の手当の後もあるが……包帯やガーゼが取り替えられていないのか、変色してしまっている。


(すぐに治療しないと不味いかも)


 そう思っていると、家の中らセブンスの声が届く。


「マスター入ってきて大丈夫だよ」


 顔を上げると、玄関にセブンスとラプラスが戻ってきていた。家の住人を連れてきている様子はない。


「えっと、大丈夫ってのは? 他の住人は」


「……見てもらった方がいいかな」


「ですね」


 淡々と報告してくる二人に嫌な予感を感じながら女の子を抱き抱えながら、時雨悠人は家に入る。


「…………? どうしたの、セブンス?」


「む! べ、別になんでもない!?」


 セブンスの横を通ろうとすると、ジト目でこちら――正確には抱えている女の子にを見てくる。


「セブンス、今は不謹慎ですよ」


「わ、分かってるよ!」


「?」


 イマイチ、会話の意図が伝わらないが、ひとまず女の子を休ませようと、どこか適当な部屋に入ると――


 抱えている女の子と同年代くらいの子供だちが、布団の上だったり、ソファの上などに寝かされているのだった。


 「これは?」


 「確認しましたが、全員眠っているようです――生体反応も弱まっているので、長くはないかもしれませんね」


 「っツ!? なんで?」


 「なんでを知りたくても、事情を知っている目の前の子達は皆気を失っているから聞けないかな。可能性があるとしたら、その女の子が言っていたシル先生って人が来るまで待つかだけど」


「……」


 時雨悠人は部屋を見回すが、他に空いている布団やソファなどは見つからない。もしかしたら、この子は自分の体調が悪い中でも他の子の面倒を見ていたのかもしれない。


「……セブンス、この子を寝かせたいから布団を出してもらっていい?」


「うん」


 セブンスが取り出してくれた、布団に女の子を寝かせる。


「よしっと」


 真新しい白いシーツの布団は、部屋に置かれているボロボロの家具や色褪せた他の布団や毛布と比べると異質感が出てくる。終わりを迎え用としている場所に、新しいものが侵入したかのように。


「マスター、どうする?」


「どうするって、そりゃあ出来ることをするよ。助けられるなら助けたい」


「うん……それじゃあ、助けようか」


 セブンスが頷きながら、静かに微笑む。おそらく、自分なら、時雨悠人なら、マスターなら、そう言うだろうと思っていたのだろう。

 

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