第48話:夜の光
のんびりと何処かも分からない平野を歩き続ける。
時折、動物でも、ましてや人間でもない異形な存在である魔物ともエンカウントするのだか――
「えい!」
可愛い掛け声とパチンという指を弾く音と共に、人の子供サイズの鬼っぽい姿形をした集団が言葉通り炎上する。
「ゼノ・グラウンドにいた魔物と比べると何というか――メチャクチャ弱いよな。いや、あのレベルが当たり前じゃなくてよかったけど」
今倒した獣人のようなやつから、カマキリのデカブツ、なんだか魔力を迸らせた猪のような奴など、ゼノ・グラウンドよりも動物に近いものが多く、ほぼワンパンで倒せている。
試しに簡易の光の矢をぶつけるだけでも、大抵の魔物をは倒せる。
「そうだね〜 ゼノグラウンドのように濃密な魔力で生まれたわけでもないだろうし……そもそも普通に生物として生まれているかもね」
「どういうこと?」
「ゼノグラウンドのように魔力から生まれることもあれば、通常の繁殖で生まれている感じかな。私も本としての知識でしか知らないけど」
「言葉としては理解できるけど、魔物としては別種なような……?」
「とは言っても、魔力から生まれた存在も繁殖できるらしいです」
「あまり気にしなくてもいいんじゃない? 魔物は、魔物だし」
「まあ……ここで考えても仕方ないか」
自分達は、学者ではないし、魔物の生態に興味がない……とまでいかないが、ここで詳しく調べようとも思わない。
(詳しい誰かにいつか聞けたらいいかな)
黒焦げとなった魔物の集団を尻目にしながら、風化によって既に道路としての機能を失ってしまった道を歩いていく。
ところどころ建物だったものはあるが、廃墟と化して崩れてしまっていたり、半分地面に埋まってしまっているような状態だ。
問題なのは、最近の地震や土砂崩れの影響とかではないことだ。既に草木が生え、自然の一部となっていることから、数日前訪れた無人都市と同様に大分時が流れていることが伺えた。
「マジで、人類が滅んでいたらどうしようか……」
「アリアの件を考えるとないと思いますが……ここまで人が住んでいた建造物が風化していると気にはなりますね。偶々私たちがいる場所が悪いという可能性も十分ありますが」
「私は、どっちでもいいけどね〜 マスターとラプラスがいるなら。それに、ゼノ・グラウンドと違って空気も美味しいし、見たことない動植物が目白押しで、それだけで私は楽しいよ」
ラプラスのいう通り、ルカが転移させた場所が、偶々人がいない、もしくは目立たせないために狙った可能性も十分あるだろう。
実際に時雨悠人が勇者として生きていた時代でも、世界という単位で見れば、人が住んでいない土地は十分あっただろう。人が住みにくい土地に放り込まれたとしたら、数日歩いた程度では人里にたどり着けない可能性もある。
問題は、人が多数住んでいた形跡の場所である点だろうが。
そしてセブンスの発言は、相変わらずだし、気持ちも分かる。本音を言えば、時雨悠人も人類が滅んでいたら、「仕方がないか」で済ませることができるだろう。
「ルカが目立たせないように気を使って、人がいない場所に転移させた可能性もあるか……それに、仮に滅んでいても、俺もセブンスとラプラスが居てくれるならそれでいいかな」
「エヘヘ〜」
「それもそうですね」
歯に噛むような笑顔をしながら頬を染めるセブンスと、そっけなく同意するラプラス。
*
光が見える。
星の光ではない。蛍のような微かな光でもない。
そして光は、人が住んでいるような建造物から発生している。
小さな点のような光で、日中なら見逃していたかもしれない。
だが、星と月しか光源がない夜の闇で、ポツリと地上のどこかに光があれば、嫌でも目立つというものだ。
丁度夕食を食べて、なんとなく星空を眺め、周囲を見ていた時雨悠人が、気づくことができた。
「どう思う?」
「建物に光源だから誰かがいる可能性もあるけど……獣人系の魔物が根城にしている可能性もあるんじゃないかな?」
「夢も希望もない推測だな……一番あり得る可能性だけど」
「こんな場所でポツリと光源がある場所に、人が住んでいる可能性低いのでは? セブンスの言う通り、獣人とかの魔物の可能性が一番高いかと」
「とは言っても、行かない理由にはならないだろう。場所だけ覚えておいて、明日の朝にでも行ってみないか?」
「もちろんです」
「マスターの意見に従うよ。もしかしたらの可能性もあるしね」
不自然な光を発見して、テンションが上がった時雨悠人だったが、二人の現実的な意見である獣人タイプの魔物の根城ではという意見に一気に萎えてしまう。
だが、それでも可能性は0ではない。
仮に違っても、急いでどこかに向かっているわけでもないのだ。
獣人だったとしても道中での対処を考えれば、危険なこともないはずだ。
「とりあえず、今日は俺が夜の番するから、二人は先に眠っていて」
「それじゃあ、私も一緒に」
「寝なさい」
無理やり、セブンスをテントに押し込むのであった。




